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開業届の書き方は?必要書類やもらえる場所・職業欄も解説

フリーランスの仕事や副業を始めて個人事業主になるには、開業届の提出が必要です。本記事は開業届の書き方を順を追って解説します。ダウンロード方法や必要書類、事業の概要欄など各項目の書き方まで、基礎から解説します。職業欄については、ウーバーイーツなどの配達員やせどり、軽貨物運搬など、具体的な仕事を例に挙げて解説します。

フリーランスの仕事や副業を始めて個人事業主になるには、開業届の提出が必要です。しかし、開業届は記入欄が多く、税に関係する書類なので「書き方がわからない」「これで合っている?」など、不安を感じる人も多いのではないでしょうか?

本記事は、開業届の書き方を順を追ってわかりやすく解説します。ダウンロードの方法や提出時の必要書類、各記入項目の書き方など、基礎から解説するので初めての人でも安心です。

気になる職業欄については、ウーバーイーツなどの配達員や軽貨物運搬、具体的な仕事を例に挙げて解説します。

さらに、開業届提出のメリット・デメリットも解説するので、開業届の記入・提出にぜひ役立ててください。


開業届とは?|入手方法やダウンロード先

開業届は、個人が事業を開始したことを通知する書類のことをいい、税務署に提出します。開業届は通称で、正式名称は個人事業の開業・廃業等届出書です。その名のとおり、廃業も同じ書類で提出します。

開業届は、事業を始めてから1ヵ月以内の提出が推奨されています。税制上のメリットも大きいので、事業を始めたら開業届の提出を検討してみてください。

開業届の提出は書面やオンラインでできます。届出書は税務署でもらうこともできますが、国税庁公式サイトでダウンロードしたほうが手間がかかりません。


こちらからPDFをダウンロードして印刷できます。​
国税庁個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)


開業届の書き方

さっそく開業届の書き方をみてみましょう。以下の開業届の見本を見ながら読み進めてください。


開業届は、次の手順で記入していきましょう。

  1. 必要書類を用意する

  2. 提出日と納税する税務署の記入

  3. 納税地の記入

  4. 個人情報・職業・屋号を記入

  5. 届出の区分で「開業」を選択

  6. 所得の種類と開業日を記入

  7. その他の提出書類の有無にチェック

  8. 「事業の概要」に事業内容を記入

  9. 従業員がいるなら給与等の支払い状況を記入


各ステップごとに、詳しい書き方を解説します。

1.必要書類を用意

まず、開業届の記入に必要な書類を解説します。提出方法は窓口・郵送・e-Taxの3つがありますが必要書類は変わりありません。

ただし、個人番号の記入が必要なので、マイナンバーカードを持っているかによって必要書類が異なります。なお、e-Taxでの提出にはマイナンバーカードが必要です。

マイナンバーカードを
持っている人

マイナンバーカードを
持っていない人

  • 個人事業の開業・廃業等届出書

  • マイナンバーカード

  • 個人事業の開業・廃業等届出書

  • 個人番号がわかる書類(個人番号通知カード、個人番号記載の住民票の写しなど)

  • 本人確認書類(運転免許証、保険証、パスポートなど)


マイナンバーカードを持っていると、開業届とあわせて2種類の書類だけで簡単に提出できます。郵送で提出する場合は、マイナンバーカードは両面をコピーしたものを提出しましょう。


2.提出日と納税する税務署の記入

では、開業届に必要事項を記入していきましょう。

まず、用紙の左上に提出日と納税する税務署名を記入します。窓口に提出する日やポストへ投函する日などを記入しましょう。

○○税務署長の欄には、納税する税務署の名称を記入します。一般的には住民票に登録された住所の管轄の税務署が納税先です。国税庁公式サイトの「税務署の所在地などを知りたい方」で調べられます。


3.納税地の記入

次に、用紙上部の四角枠内の記入に進みます。まず納税地の記入です。

住所地・居所地・事業所地の3つから当てはまるものを選択し、詳しい住所と電話番号(携帯電話も可)を記入しましょう。納税地とは納税が発生する住所のことで、一般的には生活の本拠である住所地を記入します。

納税地の欄下の「上記以外の住所地・事業所等」は、事業のためのお店や事務所を持っている場合に記入します。自宅と事務所を兼ねている場合は空欄で構いません。

納税地を事務所やお店に指定したい場合は、納税地の欄に事務所やお店の住所を書き、下の欄には住んでいる住所地を記入しましょう。


4.個人情報・職業・屋号を記入

続いて個人情報を順に記入していきます。氏名・生年月日・個人番号(マイナンバー)・職業・屋号を記入します。

職業の欄の書き方に迷う人も多いでしょう。職業欄の書き方には明確な決まりがないので、事業とする職種を記入します。例えばウーバーイーツなどの宅配の仕事は配送業、せどりは物品販売業と記入しましょう。

どのような仕事をしているかわかればいいので、ハンドメイド作家や写真家といったように「○○業」の形にこだわらなくても構いません。個人事業主やフリーランスと記入しがちですが、これらは労働形態の名称なので職業欄には適さないので気を付けましょう。

屋号は、法人でいう会社名のようなものです。屋号がない場合は空欄でも構いませんが、決めておくと屋号名義の銀行口座が作れるなどのメリットもあります。あとから屋号を付けて再提出も可能です。


5.届出の区分で「開業」を選択

次に、用紙下部の四角枠の記入に進みます。下部は主に開業する事業について記入する欄です。

まずは届出の区分を選択します。開業届の用紙は事業の廃業届としても利用されるので、区分の選択は正しく忘れずにおこないましょう。

新規事業を始める場合は、「開業」を選択します。下の住所と氏名の欄は、事業の引継ぎを受けた場合に記入するので、新規で始める場合は空欄で構いません。

6.所得の種類と開業日を記入

続いて所得の種類・開業日を順に記入します。

所得の種類は、不動産所得・山林所得・事業(農業)所得の3種類です。個人事業主の場合は事業所得を選択します。

開業日は提出日の1ヵ月以内になっていることが望ましいですが、さかのぼって出してもペナルティはありません。ただし1年以上さかのぼって提出する場合には、確定申告をしていないと無申告や脱税で罰せられることもあります。


7.その他の提出書類の有無にチェック

開業日の枠下の「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」や「廃業の自由が法人の設立に伴うものである場合」の欄は記入の必要がないので、空欄にして次に進みましょう。

次に記入が必要なのは「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」の欄です。開業届と同時に青色申告承認申請書や課税事業者選択届出書を提出する場合は、それぞれの項目で「有」を選択します。

青色申告承認申請書とは、個人が青色申告で確定申告をおこなうために提出する書類です。青色申告者として認められると、控除が受けられるなどのメリットがあります。

課税事業者選択届出書は、消費税申告義務のない課税売上高1,000万円未満の免税事業者が、課税事業者として認められるために提出する書類です。2023年のインボイス制度導入によって提出が必要になるケースもあります。


8.「事業の概要」に事業内容を記入

続いて、「事業の概要」欄を記入します。事業の内容を具体的に記入する必要があり、「どのように書けばいいかわからない」という声も多く聞かれます。

この欄も「職業」の欄と同様に、明確な書き方が決まっているわけではありません。どのような事業をおこなうかが伝わればよいので、箇条書きなどにして仕事の内容を簡潔にまとめましょう。


ここでいくつかの記入例を紹介します。

「職業」の記入例

「事業の概要」の記入例

ウーバーイーツ

宅配業・配送業など

料理などの注文の受託・配達

カフェの店長

喫茶店・飲食業など

カフェでの飲料や軽食の提供や店舗運営

ピアノ教室の先生

音楽教室講師

幼児・児童向けのピアノ指導、教室運営

手作りアクセサリーの販売

ハンドメイド作家、小売業など

手作りアクセサリーの作成・販売、サイト運営

アーティスト

音楽家、画家など

歌唱活動、バンドでのLIVE活動、CDの製作・販売

カメラマン

写真家、撮影業など

人物・商品などの撮影・データ化・印刷、サイト運営

システム設計

システムエンジニア

アプリケーション・ソフトウェア開発にかかわるシステム設計、支援

ブロガー

文筆業、Webサイト運営など

ブログの作成・運営

ライバー・Youtuber

インターネット事業、広告業、映像制作業など

動画配信サービスでのライブ配信、動画撮影・投稿

チャットレディ

インターネット事業

インターネットによる接客


第三者が読んでどのような仕事をしているかわかるよう具体的に記入するようにしましょう。

9.従業員がいるなら給与等の支払い状況を記入

従業員を雇わず1人で事業をおこなっている場合は、記入は終了です。窓口に持っていくか、封筒に入れて郵送しましょう。

従業員がいる場合、「給与等の支払の状況」と「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」「給与支払いを開始する年月日」の欄も記入が必要です。

「給与等の支払の状況」の欄は、従業員数と給与形態(日給、月給、賞与など)、税額の有無を記入します。税額の有無とは、給与から源泉所得税を天引きする必要の有無のことです。月の支払いが88,000円以上の場合は「有」になります。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、源泉所得税の納期を年2回に減らす特例手続きです。従業員10人未満の場合は特例を使用できるので提出するとよいでしょう。


開業届の3つの提出方法

開業届の提出方法は、税務署窓口への提出・郵送での提出・e-Taxでの提出の3通りあります。それぞれの提出方法について詳しく解説します。


税務署に開業届を直接持参する場合

税務署窓口に開業届を持参する提出方法は、不備があればその場で修正できるというメリットがあります。提出書類に押印は必要ありませんが、修正の際に訂正印を求められる場合があるので印鑑を持参すると安心です。

窓口での提出は、国税庁ホームページから開業届をダウンロード・印刷して記入したものを持っていくか、税務署で用紙をもらってその場で記入する2通りに分けられます。事前に記入していったほうが待ち時間が短くなるのでおすすめです。

ただし、窓口で提出するには開庁時間内に税務署を訪れる必要があります。また、提出は納税する税務署でおこなわなければならず、どの税務署でも提出できるわけではありません。

税務署に開業届を郵送する場合

時間が合わず開庁時間内に税務署に行けない人は、郵送での提出がおすすめです。必要書類を封筒に入れて投函または郵便局に配達を依頼するだけでいいので、時間を気にせず提出できます。

ただし、郵送する場合は封筒代と切手代が別途で必要です。さらに、不備があって受理できなかった場合、再提出に時間がかかってしまうデメリットがあります。

また、郵送で提出する場合は開業届の控えと返送用封筒を忘れずに同封するようにしましょう。受理されると、税務署から収受印付きの控えが返送されてきます。


e-Taxで提出する場合

e-Taxを利用して提出する場合、開業届をダウンロードしたり印刷したりする必要はありません。ただし、マイナンバーカードとICカードリーダーの用意が必要です。


e-Taxで開業届を提出する際、次の事前準備をおこないましょう。

  1. マイナンバーカードの作成

  2. ICカードリーダーの用意

  3. JPKI利用者ソフトをインストール

  4. 利用者識別番号の発行

  5. e-Taxソフトのダウンロード

少々手間はかかりますが、開業後の確定申告にもe-Taxの利用は便利です。この機会に用意してみるのもよいでしょう。


開業届を提出するメリット・デメリット

提出の手間や開業のハードルが高く感じられて、開業届を提出するか迷っている人もいるかもしれません。開業届の提出には、次のようなメリット・デメリットがあります。


開業届を出すメリット

開業届を出すデメリット

  • 青色申告による控除が大きい

  • 赤字が3年間繰り越しできる

  • 事業用口座が作れる

  • 法人向けクレジットカードが作れる

  • 複式簿記の作成を求められる

  • 扶養や失業給付に問題が生じる可能性がある

それぞれ詳しくみてみましょう。


開業届のメリット

開業届を出すメリットは次のとおりです。

  • 青色申告による控除が大きい

  • 赤字が3年間繰り越しできる

  • 事業用口座が作れる

  • 法人向けクレジットカードが作れる

メリットとして大きいのが節税効果の高さです。開業届を出して青色申告者になると、最大65万円の控除が得られます。また、事業の赤字についても3年間繰り越しができるので、長期的に節税が可能です。

また、開業届を出すことで事業用の銀行口座やクレジットカードが作れるメリットがあります。経費管理がしやすくなるので、開業したらぜひ作成しましょう。


個人事業主になるメリットは次の記事でさらに詳しく解説しています。

個人事業主になるメリットは?デメリットや法人化との違いも解説

開業届のデメリット

対して、開業届を提出すると次のようなデメリットがあります。

  • 複式簿記の作成を求められる

  • 扶養や失業給付に問題が生じる可能性がある

まず、開業届を提出して正式に個人事業主になると、複式簿記形式での帳簿作成が義務付けられます。白色申告者であっても複式簿記の作成が求められるので、経理に関わったことのない人にはややハードルが高く感じられるかもしれません。

次に、社会保険の扶養や失業手当の受給に問題が発生するリスクがあります。

健康保険組合の扶養条件によっては、開業届を出した時点で扶養から外れてしまうことがあります。扶養に入っている場合は事前に規約を確認しましょう。

また、失業手当の受給中または受給予定がある人は、開業届を提出することで受給資格がなくなるので提出のタイミングに注意しましょう。


次の決算報告書の作成についての記事は、初めての複式簿記の作成にも役立ちます。

初めての決算報告書の作成でも迷わない!基本から書き方まで解説


開業届に関するよくある疑問

記事の終わりに、開業届の提出に関してよくある疑問に答えました。


開業届を未提出でも事業はできる?

開業届を出していなくても、事業の開始・継続は可能です。事業を初めてすぐは収入があまりないことも多いので、収入が安定してから開業届を提出する人も多くいます。

ただし、開業届を出していない場合も一定以上の収入があるなら確定申告が必要です。確定申告が必要となるラインは、年間の所得が副業の場合は20万円以上、個人事業主やフリーランスの場合は48万円以上です。


誰が提出してもよい?委任は可能?

開業届の提出は基本的に事業主本人がおこないます。代理人による委任提出も可能ですが、その場合は代理人の身分証明書と本人のマイナンバーカードや通知カードが必要です。

郵送なら、本人が記入した書類を代理人が郵便局やポストに書類を出しに行っても問題はありません。外出が難しい場合は郵送での提出や、e-Taxを利用した提出がおすすめです。

開業届の作成は代行可能?

開業届の代行作成を税理士などに依頼することもできます。ただし費用がかかるので、自分で作成したほうが経済的でしょう。

開業届の作成や提出はさほど難しくありません。本記事で解説した開業届の書き方を参考に、自分で作成してみてください。


開業届に費用はかかる?

開業届の作成・提出には費用はかかりません。提出書類のダウンロードも無料です。

ただし、ダウンロードした書類の印刷費用、郵便での提出にかかる切手代や封筒代、税務署に行くための交通費といった費用はかかります。e-Taxで提出する場合は、ICカードリーダーの購入代金などに費用がかかりやすいです。


開業届の内容の変更方法は?

開業届の内容は変更の届出が可能です。ただし、屋号を新たに登録したい場合や住所変更の場合以外は、変更があっても届出は必要ありません。

住所の変更があった場合は、納税地が変わる可能性があるためできるだけ早く変更手続きが必要です。手続きの方法は以下のとおりです。

  1. 「所得税・消費税の納税地異動に関する届出書」を提出

  2. 「個人事業の開業・廃業等届出書」に事務所・事業所の移転内容を記載して提出

  3. 必要に応じて振替納税の手続きをおこなう

1の届出書は国税庁ホームページ「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」からダウンロードできます。


税務署に郵送する封筒の書き方は?

開業届を郵送で提出する際、封筒には納税する税務署の住所と入っている書類の名称を書くと丁寧です。

例えば東京都の芝税務署に送付するなら、縦長の封筒の場合は表面右側に芝税務署の住所(港区芝5丁目8番1号)を、中央には「芝税務署 御中(担当者様なども可)」と宛名を記入します。これらだけでも税務署には届きますが、表の左下に赤いペンで「開業届在中」と記載しておくと手続きがスムーズになるのでおすすめです。裏面には自分の住所と名前を記入しましょう。


まとめ

開業書は、記入欄が多く記入見本がないので書き方に迷ってしまう人も多いでしょう。開業届は個人がどのような事業を始めたかを知らせる届出です。第三者から見てどのような仕事をしているのかわかりやすいよう、簡潔に書くことを意識しましょう。

本記事では、開業届の書き方を各項目別に順を追って解説しました。実際に開業届を印刷して、記入しながら読み返すこともおすすめします。

開業届を提出すると、高い節税効果が得られたり事業用の口座やクレジットカードが作れたりといったメリットがあります。開業届を出して、個人事業主としてあらためて事業に向き合いましょう。



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