初めて起業する人は具体的な方法がよくわからず、資金も十分に用意できないといった問題に直面することがあります。そこで、この記事では起業する方法や資金調達の方法をわかりやすく解説し、リスクをコントロールしながら成功に導く秘訣をお伝えします。
「企業から独立したいが、起業方法がよくわからない」「よさそうなアイデアがあるけれど、手持ちの資金が乏しい」などと悩んでいませんか。初めて起業する人は経験や知識がないため、せっかくのチャンスを不意にすることもあるでしょう。しかし、個人事業主を選択したり、出資やクラウドファンディングで資金を集めたりすることで、起業を実現できます。
この記事では、一般人が起業する方法や資金調達の方法をわかりやすく解説します。最後まで読み進めれば、起業の方法や何に注意しながらどうすればよいのかがわかるようになるでしょう。
起業を成功させるために必要なこと
起業を成功させるためには以下の4点を押さえることが大切です。
起業の目的を明確にする
ターゲットを明確にする
適した起業の方法を見極める
能力の高い人材を集める
ここでは、これらについて詳しく解説していきます。
起業の目的を明確にする
はじめになぜ起業が必要なのかをよく考え、そのうえで明確な目的を持ちましょう。
目的があやふやなままで安易に起業したり、利益を得ることのみを考えたりしてしまうと、企業としての軸が定まりません。すると経営のかじ取りが上手くいかなくなります。そこで起業する前に、社会の抱える問題点や課題から目的を検討してみましょう。
例えば「問題を抱えた現状に対して適切なサービスを提供できれば、より便利な社会になるのではないか。そのサービスを実現するためには起業する必要がある。」このように検討を進めていきましょう。そうすれば、起業して今後の事業をどのようにしていけばよいのか、おおよその道筋がつくはずです。
起業することは自身だけの問題ではなく、社員や社会に対する責任を負うことになるため、しっかりとした目的ができてから実行しましょう。
ターゲットを明確にする
収益を確保するためにも事業のターゲットは明確にしてください。ビジネスの基本として、層をしっかり見極めたうえで商品やサービスを提供することで成功につながります。一方で選定したターゲットが曖昧であったり、対象を見誤ったりしてしまうと望む収益が得られません。
そのため、どれぐらいの購買層が存在しており、どのような需要を持っているのか正しく理解する必要があります。具体的には同業者の購買層を研究したり、アンケートなどを実施したりするなど、事業に則したマーケティングをしたうえでビジネスプランを立てましょう。
適した起業の方法を見極める
扱う事業の種類や規模によって、適した起業の方法が異なります。例えば、少人数での起業であれば個人事業主、社員をある程度雇う場合は法人の設立などを選択するのが有効です。これらは税制や社会的な信用度が異なるため、起業後を見据えてどれを選ぶのが正解なのかをよく見極めなくてはなりません。
また、起業には専門の資格や公的な認可が必要な場合もあるので、手続きするうえで何が必要になるのか把握しておきましょう。
能力の高い人材を集める
起業する際は優れた人材を集め、重要なポジションに配置しましょう。特に取締役といった企業のかじ取りを担うポストは、能力が高い人に任せるほど成功しやすくなるので、積極的に最適な人材を探してください。
また、飲食店であれば料理人、IT企業であればプログラマーなど、事業に必要な人材の確保もかかせません。どのような能力を持った人材を、どれくらいの人数集める必要があるのかよく検討してください。
ただし、昨今ではどの業界も人材不足であるため、すぐに能力のある人を雇うことは難しいです。そこで、企業として求める人物像を明確にしたうえで募集を行い、ケースによって在宅でのリモートワークを認めるなど、柔軟な働き方に対応しながら有能な人材を集めましょう。
起業は以下の手順に従い進めていきましょう。
事業計画書を作る
会社の基本情報を決定する
資金調達を始める
定款を作る
資本金振込
登記申請を行う
ここでは、それぞれの項目で必要な書類や内容について詳しくお伝えします。
事業計画書を作る
最初のステップとして事業計画書の作成を始めましょう。事業計画書には以下のような内容が記載されています。
事業内容
企業戦略
収益見込み
事業計画書とは、どのような事業をどういった戦略で経営していき、どれくらいの収益が期待できるのかを客観的に説明するものです。起業において絶対に必要なものではありませんが、自身のビジネスプランを具体化して確認できます。
また、第三者に事業について説明したり、アドバイスをもらったりする際に用意しておくと、円滑にことが進むでしょう。
なお、見積もりが甘ければ事業を軌道にのせることが難しくなります。より成功に近づけるかどうかは、いかにリアルな事業計画書を作成できるかにかかっています。大切なポイントなので、できるだけ時間を割いて慎重に検討してください。
会社の基本情報を決定する
起業する際は以下の基本情報を決める必要があります。
商号となる会社名
本社所在地
事業目的
資本金
発起人
これらの情報について会議するなどして決定しましょう。また、決定後は会社の印鑑を作っておくと、これ以後の手続きをスムーズに進められます。
資金調達を始める
起業は1円からでもできますが、基本的には事業規模に応じた資金が必要です。そこで、「融資」もしくは「出資」という2種類の資金調達方法から、適切なものを選びましょう。
融資とは貯金などの取引を行っている銀行や、日本政策金融公庫などから資金を借り入れる方法です。一方で出資は、個人投資家やベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタルなどから、資金を提供してもらいます。
両者については単純に資金を借りるものと、経営にも影響してくるものという違いがあります。詳しくは後述の「資金調達のやり方」で、さらに詳細な資金調達の方法を解説するので、そちらをご覧ください。
定款を作る
起業の際は法律に則って定款を作成する必要があります。こちらは会社のルールを作成する作業で、会社法に則った形式で正しく作成されなくてはなりません。
定款は公開会社であるのかや取締役の人数の多さなど、企業の形態によって内容が異なります。そのため、どのような定款を作成すればよいのかは、自身で調べるか公証役場で確認してみるとよいでしょう。
なお定款は公告の方法や決算の発表などを、どのように行うのか記載する必要があります。官報にのせるか、公式サイト上で公告する、もしくは電子公告の2種類を選択できます。それぞれ手続きやかかるコストが違うので、あらかじめ確認したうえでどちらを選ぶのがよいのか検討してください。
株式会社は定款の認証を受けよう
株式会社の場合は公証役場で定款の認証を受ける必要があります。認証は、起業する住所(本社所在地)と同じ都道府県内にある公証役場で手続きを行いましょう。その際は作成した定款だけでなく、発起人全員の印鑑証明や実印などが必要になります。あらかじめ準備を済ませておき、当日はスムーズに手続きを行えるように努めてください。
基本的には、公証人とのアポイントや事前の準備が問題なく行えていれば、数時間で手続き自体は完了します。
資本金振込
定款の作成と認証が完了したら、指定の口座に資本金を振り込みましょう。ただし、この時点ではまだ会社は設立されていないため、発起人の誰かの個人口座に、定款に記載された金額を振り込めばよいです。あわせて、振り込みが完了した事実を確認できる書類を用意してください。登記を申請する際に、以下の3つのコピーが必要になります。
通帳の表紙
通帳の1ページ目
資本金の振込内容が記載されているページ
なお口座については、起業後に代表取締役になる人のものを利用するのが一般的です。ここでは、最後に出資金の払込証明書を代表取締役の人が作成することで、資本金の振込手続きは完了します。
登記申請を行う
最終的なステップとして法務局で登記申請を行ってください。その際は以下の書類を用意する必要があります。
設立登記申請書:登記の際の申請書、法務局「商業・法人登記の申請書様式」よりダウンロード可能
定款
登録免許税納付用台紙:登録の際に必要な収入印紙を貼り付ける台紙
発起人決定書または発起人会議事録:発起人の情報などを詳細に記載した資料、代表取締役を選定する場合はこちらに記載する必要がある
代表取締役等の就任承諾書:取締役が複数いる場合に必要
取締役の印鑑証明書:定款の認証を受けた際の取締役全員の印鑑証明書、取締役会がある場合は代表取締役の印鑑証明書
印鑑届書:法人実印の届け出に必要
出資金の払込証明書:通帳の表紙、通帳の1ページ目、資本金の振込内容が記載されているページのコピーなど
法人での起業では登記はやらなくてはならないため、以上の書類を正しい形式で作成して提出する必要があります。基本的に、可能な作業は並行的に進めながら準備していくと、問題なく登記申請ができるでしょう。これが完了すれば会社が設立されるため、登記事項証明書を発行してもらえば法人口座の開設などが行えます。
登記関係の書類以外に用意したほうがよいもの
起業すると広告活動が必要となるので、登記関係の書類以外に以下のものを準備しておくとよいです。
営業関連の資料:いわゆるパンフレットのようなもの。顧客に売り込む際に使用する
会社のロゴマーク:企業についてイメージしやすくしたり、覚えてもらえるきっかけづくりになったりする
挨拶状:チラシやお客へのメールなど、顧客獲得に役立つ
名刺:ビジネスでは必須。できれば業者に依頼して作成してもらうとよい
ホームページなど:会社について知ってもらうだけでなく、ビジネスが生まれる場所でもあるので開設するとよい。スキルがなければ、相場を調べたうえで作成を代行してもらう
これらについてはビジネスに必要なものだけでなく、信頼度を高められるツールもあるので、できればすべて用意しておきましょう。すぐに準備できないものもあるので、登記の申請と並行して進めてください。
資金調達のやり方
資金調達が必要な場合は以下の方法を検討してみましょう。
融資を受ける
出資を受ける
創業補助金などを使う
クラウドファンディングを活用する
ここでは、それぞれの方法についてわかりやすく解説します。
融資を受ける
融資は個人的に付きあいのある金融機関だけでなく、日本政策金融公庫の公庫融資や信用保証協会なども利用可能です。
日本政策金融公庫とは、中小企業の起業援助のために政府が行っている公的な金融機関です。無担保無保証や連帯保証人不要など、融資のハードルを低くしていることが特徴。また、一言に貸し付けといってもさまざまなケースが想定できますが、日本政策金融公庫では新規や女性、シニアの人などに向けた幅広い融資を行っています。
一方で、信用保証協会とは金融機関から融資を受ける際に、保証人になってくれる公的機関です。利用には金利が1%ほどかかりますが、新規での起業で融資が難しいといった問題を解決できる可能性があります。詳しくは全国信用保証協会連合会のサイトより、各市町村の窓口を検索して相談してみましょう。
出資を受ける
自らのビジネスプランに賛同してくれる人や企業がいる場合は、自己資本に加えてそれらから出資を受けるのも有効です。第三者の人や企業から出資を受ける見返りに株式を譲渡し、利益が生まれたらリターンとして配当金を与えます。
なお自身の持っている現金や、会社を立ち上げるメンバーから集めたお金を資本金として起業することも、形式としては出資にあたります。
また出資を行う第三者は、株式を持つことで経営にも関与できます。この点は被出資者にとって、事業に関するアドバイスをもらいたい場合などにプラスに働くでしょう。ただし、譲渡した株式割合が過半数を超えた場合は経営権を奪われ、最悪乗っ取られる危険性もあります。したがって、得られるメリットと出資のリスクを確認したうえで検討していきましょう。
創業補助金などを使う
起業の状況が条件にあてはまっている場合は、創業補助金や小規模事業者持続化補助金などを活用できないか検討しましょう。
創業補助金「創業・第二創業促進補助金」は、中小企業庁が行っている補助金事業で、条件を満たせば200万円の補助金を起業後に受け取れるというものです。この補助金は初めて起業した人だけでなく、すでに創業している人が他に起業する場合も対象となっています。
小規模事業者持続化補助金は日本商工会議所の補助金で、従業員数が5〜20人の小規模事業者を対象としています。通常枠や賃金引上げ枠などの枠があり、最大で50万〜200万円までが助成される仕組みです。
令和に入ってから7回公募されており、現在は8回目の募集が始まっています。(2022年3月29日より)これらについては応募期限があるため、活用が可能な場合はとにかく相談を行い、迅速に手続きを行ってください。
なお公式サイト以外では、中小企業庁のトップページで補助金情報を確認できるので、注目しておきましょう。
クラウドファンディングを活用する
昨今では出資の形態として広く資金を集められる、クラウドファンディングを活用する方法もあります。ネット上でビジネスプランを公開し、これに賛同してくれる人から出資を受けることで起業する方法です。大衆的なビジネスモデルではなく、独自性の強いものや一部の人から支持されるような場合に向いています。
また、クラウドファンディングは資金を提供する見返りに、額に応じたリターンやなんらかのサービスを体験できたり、商品をもらったりすることが可能です。これは購入型のクラウドファンディングと呼ばれるもので、現在では多くの人がこちらをイメージするでしょう。
なおクラウドファンディングには、このほかにも寄付を目的とする寄付型や投資目的の投資型が存在しています。もし、興味があればCAMPFIREやREADYFORなど、国内のクラウドファンディングサービスを利用した起業を検討してみましょう。
個人事業主と法人設立はどう違う?
個人事業主と法人設立の2パターンの起業方法で悩んだ場合は、どちらを選べばよいのでしょうか。ここでは、それぞれの手続きの内容や税金、信用度の違いについて解説します。
手続きの内容が違う
起業手続きに関しては、手間と費用の面で個人事業主のほうが簡単でお金がかかりません。個人事業主は開業届を税務署に提出するだけですが、法人設立では法人登記を行わなくてはならず、手間と費用がかかります。具体的には必要な書類などを集める必要があり、登記費用として株式会社で約25万円、合同会社で約10万円ほど必要になります。
さらに、株式会社の場合は出資金なども用意しなければならないので、結果として両者を比較すると手続き的には法人設立は大変です。
課せられる税金が違う
個人と法人では、起業する際に支払う税金にも違いがあり、個人事業主では所得税など、法人では法人税などを支払います。詳しくは以下をみてください。
個人事業主:所得税・個人住民税・消費税・個人事業税
法人:法人税・法人住民税・消費税・法人事業税
上記のうち最も税率に開きがあるのが所得税と法人税です。所得税が所得の5〜40%であるのに対し、法人税は所得の15〜23.4%となっています。つまり、稼いだ額が増えるほど、個人事業主のほうが納める税金がより増えていきます。
したがって、事業の収益が高収入になる可能性があれば、法人化したほうが節税に繋がる可能性が高いです。一方で業績が赤字の場合に、法人は法人住民税などを支払う必要がありますが、個人事業主は所得税などの支払いがなくなる利点があります。
信用度が違う
社会的な信用度については、登記手続きなどを行わなくてはならない法人起業のほうが高いです。こちらについては会社法に則って必要な書類を作成し、税務署や法務局での登記を行うことで初めて起業でき、たくさんの従業員を雇っている事実などにより信用されます。
一方で、個人事業主でも開業届を出しているか否かによって、信用度は変わってきます。開業届を出している個人事業主のほうが、しっかりと手続きを行っていることで、客観的にみて信用度が高いと判断されるからです。
例えば、事業を行っている証明が必要な場合に開業届を出していれば、控えを提出することで個人事業主だと説明できます。なお、原則として開業届は出さなくてはならないので、手続きは忘れずにやっておきましょう。
起業する際に注意すべきこととは?
起業する際は以下の3点に注意しましょう。
十分な資金を準備しておこう
優秀な協力者を集めておこう
将来を見据えて計画を立てる
これらをしっかりと理解することで成功へと繋がります。将来を見据えたうえで実行に移してください。
十分な資金を準備しておこう
事業には起業時のコストだけでなく、運用していくための資金が必要です。特に始めたばかりの時期は収益が安定しないので、起業前から十分な資金を準備できるかどうかが成功への分岐点になりえます。
実際に、資金が枯渇したことで事業継続が困難になる事例も存在しています。そのため起業の時期までに、ある程度の期間は事業を続けられる金額の資金を用意してください。
具体的には、助成金や補助金を活用したり融資を受けたりするなど、選択可能な手段についてはすべて検討しましょう。
優秀な協力者を集めておこう
複数人で起業するのであれば、優秀な人材のスカウトは欠かせません。個人で起業するケースを除き、多くの場合は規模にあった人材を確保しなければ、事業はうまく進みません。また、スキルや資格を持った人でなければ対応できないこともあります。
したがって、自分以外の協力者が何人必要か、確保すべき人材はどのような人物なのか、これらをよく検討したうえで事業計画を練りましょう。
将来を見据えて計画を立てる
事業は長期的な視野を持って計画しなければ、資金が尽きてきたり、モチベーションの減少といった問題でつまづいたりする可能性があります。
一般的に、起業後の3年目は試練の年といわれており、この時期になると準備した資金がなくなってくることで、事業の動向によっては閉業を迫られます。また、長期的な展望を持たない場合には、日々のあたり前になれてしまうことで業務に対するモチベーションが下がり、企業を成長させる機会を失ってしまうことも。
事業はスタートダッシュが大切ですが、以上のような問題を回避するためにも、1年や5年、10年後に事業がどうなっているのか、どうしたいのかなどをよく検討して計画を練りましょう。
まとめ
起業を成功させるためには目的を明確にしたり、能力の高い人材を集めたりすることなどが必要です。起業を決めたら事業計画書の作成から始め、資金調達や登記申請などを行いましょう。なお、資金調達が必要な場合は、融資や出資などが受けられないか検討し、事業に合ったものを活用してください。
個人事業主は手続きが簡単ですが、収入が高いケースでは法人よりも税金を多く支払うデメリットがあります。法人は手続きに手間と費用がかかりますが、節税できたり社会的な信用を得られたりするメリットがあります。
起業する際は、リスクを減らすために十分な資金を準備し、優秀な協力者を集めて長期的な視点で計画を立ててください。
サービスオフィスを複数棟、比較検討できます。
気になる物件を選び、条件や設備などの違いを確認してみましょう。一覧表で比較ができる便利な機能です。比較資料としてご利用ください。