副業で個人事業主になる方法は?メリットやデメリットも解説

会社員として企業で働きながら、副業で個人事業主になることは可能です。この記事では、副業として個人事業主になる方法や基礎知識を解説しています。メリット・デメリットのほか、確定申告やよくある質問についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

働き方が多様化している現代では、個人事業主として開業し収入を得ている人が増えています。会社員として働きながら、副業で個人事業主になる人も珍しくありません。では、会社員をしながら副業で個人事業主になるためには、どのような準備や手続きが必要なのでしょうか。

この記事では、本業で会社員をしながら副業で個人事業主になるための基礎知識を解説しています。メリットやデメリットのほかに、個人事業主になった場合の確定申告や、よくある疑問についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。


会社員が副業で個人事業主になるための基礎知識

そもそも個人事業主とはどんな職業なのでしょうか。ここでは、個人事業の定義や会社員におすすめの個人事業、個人事業主になる方法やタイミングなどの基礎知識を解説していきます。


個人事業主とは

個人事業主は、株式会社や合同会社などの法人として起業することなく、個人自ら事業を立ち上げて収入を得ている人のことを指します。個人事業の定義は独立・継続・反復の3つです。たとえば小売業なら仕入れから販売までの事業を、1度だけでなく何度も繰り返し継続してくことが個人事業です。

個人事業主の中には独立して生計を立てている人もいますが、企業に勤めながら兼業している人もいます。どんな立場の人でも、やる気さえあれば個人事業主になることが可能です。


会社員におすすめの個人事業は

会社員が副業で個人事業主になる場合は、本業に支障のない仕事を選びましょう。会社員におすすめの個人事業は、次の通りです。

  • 株・FX

  • せどり

  • クラウドソーシング

  • フランチャイズ

  • 動画配信

  • アフィリエイト

自宅でできる仕事や、スマホやパソコンがあればできる仕事であれば、会社員でも始めやすいのではないでしょうか。スキルや経験は、仕事をこなしていけば身につけることができるので、まずは自分が興味を持てる仕事に挑戦してみましょう。


個人事業主になる方法

個人事業主として開業するためには、税務署に書類を提出する必要があります。個人事業主になるまでの手順は、次の通りです。

  1. 開業届を提出する

  2. 青色申告承認申請書を提出する

  3. 事業開始等届出書を提出する

開業届は国税庁のホームページからダウンロードすることができますが、無料ソフトで作成することも可能です。開業届を提出する際に費用は必要ありません。

開業届と青色申告承認申請書は、最寄りの税務署に提出します。なお青色申告承認申請書は、青色申告を希望する人だけでOKです。事業開始等届出書は市町村役場などの自治体に提出します。居住地域によって書類の名称が異なるので、担当者に確認してください。


副業で個人事業主になるタイミング

個人事業主の開業届は、事業を開始してから1ヶ月以内に提出する義務があります。ただし、提出が遅れても特に罰則はありません。税務署に開業届を出していなくても、個人で事業を営んでいる場合は個人事業主と名乗ることができます。

しかし、継続的な収入を得たり、独立を視野に入れたりしている場合は、なるべく早く税務署に開業届を提出し、個人事業主として開業することを考えましょう。出さないまま事業を継続してしまうと、個人事業主のメリットが得られず損をしてしまいます。


副業で個人事業主になるメリット

会社員が開業届を提出して個人事業主になると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。会社員として働いている人が、副業で個人事業主になるメリットは次の通りです。

  • 経費として計上できる範囲が広がる

  • 損益通算ができるようになる

  • 損失を繰り越せるようになる

  • 青色申告による節税ができる

  • 銀行口座が屋号で開設できる

メリットの内容を詳しく見ていきましょう。


経費として計上できる範囲が広がる

会社員が個人事業主の開業届を提出すると、経費として認められる費用の範囲が広がり、親族や配偶者に支払う給料も経費として計上できるようになります。経費の範囲が広がれば、節税効果をアップさせることが可能です。

また、個人事業主の経費に上限は設定されていません。事業のために使用した費用は、基本的に経費として認められます。ただし、中には経費にできない費用もあるので、経費になるものとならないものは正確に把握しておきましょう。


損益通算ができるようになる

個人事業の副業が赤字になった場合は、本業の所得と相殺して税金が計算できる損益通算ができるようになります。損益通算を行えば所得税を抑えることが可能です。損益通算が可能な所得は、次の通りです。

  • 不動産所得

  • 事業所得

  • 譲渡所得

  • 山林所得

なお、開業届を提出していないと、これらの所得は選択することができません。開業届を出さないまま雑所得として申告してしまうと、損益通算ができなくなってしまうので注意してください。


損失を繰り越せるようになる

個人事業主として開業したあとに確定申告で青色申告を行う場合は、損失や赤字を最長で3年間繰り越すことができるようになります。翌年以降黒字になった場合も損失分を差し引くことができるので、損失申告により税金を抑えることが可能です。

なお、白色申告の場合は損失の一部しか繰り越すことができません。青色申告で繰り越せるのは損益通算と同様の所得のみです。不動産所得や譲渡所得は、条件によって繰り越し不可になる場合もあるので注意しましょう。


青色申告による節税ができる

個人事業主として開業すると、確定申告で税制上のメリットが大きい青色申告ができるようになります。青色申告と白色申告の大きな違いは、所得に応じて最大65万円の特別控除を適用できることです。所得から控除分の金額を差し引くことができるので、税金を安く抑えることができます。

青色申告を行うためには、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出しなければなりません。複式簿記での記帳など手間はかかりますが、特別控除の他にも税金で有利になる特典があります。個人事業主であれば青色申告をすることをおすすめします。


銀行口座が屋号で開設できる

個人事業主になると、ブランド名や店舗名などの屋号が使用できるようになります。まずは屋号を使って名刺を作成するのがおすすめです。事業内容がわかりやすくなったり印象に残りやすくなったりするので、ビジネスチャンスも広がるでしょう。

また、屋号を使って銀行口座を開設することも可能です。仕事用と私用の口座を分けることができるので、お金の管理がしやすくなります。開業届を提出して屋号を持つことで、取引先からの信頼が得やすくなるでしょう。


副業で個人事業主になるデメリット

メリットの多い個人事業主ですが、もちろん欠点もあります。副業で個人事業主になるデメリットは、次の通りです。

  • 失業手当がもらえなくなる

  • 青色申告の手間がかかる

  • 自分の時間が減る

  • 副業禁止の場合は懲戒処分を受ける

個人事業主のデメリットを詳しく見ていきましょう。


失業手当がもらえなくなる

個人事業主として開業すると、会社を辞めたあとに受給できる失業手当が受け取れなくなります。個人事業を営んでいて、失業状態ではないと判断されてしまうからです。個人事業主として独立する予定の人は注意してください。

会社を辞めることが決まっている場合は、失業手当を受給したあとのタイミングで開業届を提出したほうがよいでしょう。損をしないためには、自分にとってベストな開業のタイミングを見極めることが大切です


青色申告の手間がかかる

個人事業主は確定申告の際に青色申告を選択できますが、青色申告は白色申告よりも必要書類が多く、手続きが複雑なので手間がかかります。節税効果が高く税制上のメリットは大きいのですが、帳簿の付け方が複式簿記に限定されているなど、手続きが面倒なのがネックです。

また青色申告を行うためには、税務署に青色申告承認申請書の提出が必要となります。忘れてしまうと青色申告ができなくなってしまうので注意しましょう。


自分の時間が減る

会社員と個人事業主を両立させるためには、今まで自由に使えていた時間を個人事業に費やす必要があります。事業が軌道に乗るまでは、休日返上で働かなくてはならない人もいるでしょう。

個人事業は自分の好きな時間に働けることはメリットですが、会社のように就業時間が決まっていないので、働き過ぎてしまう可能性があります。個人事業に限らず、副業を始めてしまうとプライベートな時間の確保が難しくなることを覚えておきましょう。


副業禁止の場合は懲戒処分を受ける

就業規則で副業禁止を定めている会社に勤めている場合は、ルールを破って開業届を出してしまうと懲戒処分になる可能性があります。副業がバレていきなり解雇になるケースは少ないですが、副業は続けられなくなってしまうでしょう。

副業を認めている企業も徐々に増えてきていますが、本業への支障や会社の信用を理由に、禁止している企業も多いです。副業で個人事業主になりたい場合は、事前に就業規則をチェックして、必要であれば申請してください。


副業で個人事業主になった場合の確定申告について

会社員が副業として個人事業主になった場合は、収入によって確定申告が必要なケースと不要なケースがあります。確定申告の手順とあわせて確認していきましょう。


確定申告が必要なケース

基本的に、個人事業の副業による年間所得が20万円以上になった場合は、確定申告が必要となります。所得とは収入から経費を引いた金額のことです。たとえば副業収入が30万円あって経費が10万円かかった場合は、所得が20万円となります。

個人事業の開業届を出していないと確定申告を行うことはできません。1月1日〜12月31日までに得た年間所得を計算し、翌年の2月中旬〜3月中旬の期間中に確定申告を行います。会社員の場合は勤務先が年末調整を行ってくれますが、個人事業の確定申告は自分で行うことが前提です。


確定申告が不要なケース

確定申告が不要なのは、個人事業で損失や赤字が発生した場合です。所得が20万円以下だった場合も同様に確定申告は不要です。ただし、医療費控除やふるさと納税の控除を受けたい場合は、所得が20万円以下でも確定申告が必要になります。所得が20万円以下の場合でも、住民税の申告は必要になるので注意してください。  

20万円以下の場合は基本的に確定申告は不要ですが、確定申告を行うことにより税金の還付を受けられるケースもあります。医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合も、申告したほうが得をするので確認しておきましょう。

確定申告の手順

青色申告を選んでも白色申告を選んでも、確定申告の流れはほとんど一緒です。確定申告の手順を確認していきましょう。

  1. 必要書類を用意する

  2. 確定申告書を作成する

  3. 提出書類を確認する

  4. 確定申告書を提出する

確定申告書は税務署に直接持参するか郵送で提出できます。e-TAXを利用すればオンラインで電子申告することも可能です。確定申告書を提出したあとは、納税するか還付を受けることができます。


副業で個人自業主になった場合のQ&A

最後に、副業で個人事業主になった場合のよくある以下の疑問について回答していきます。

  • 会社にバレることはある?

  • 社会保険や税金の扱いはどうなる?

  • 会社を辞める必要はある?

不安を感じることは早めに解消しておきましょう。


会社にバレることはある?

言わなければ、副業していることがバレないと考える人も多いですが、伝えなくても会社に知られてしまう可能性は高いといえます。理由は副業の所得によって住民税の金額が変わるからです。同僚にうっかり副業のことを話して会社にバレてしまうパターンもあります。

ただし会社にバレることを防ぐために、確定申告をしないという判断は間違っています。確定申告をしなかった場合は、税務署から調査が入って申告漏れを指摘される可能性が高いです。副業していることがバレても、会社が副業禁止でなければ問題ありません。


社会保険や税金の扱いはどうなる?

会社員であれば加入義務があるため、以下のような社会保険に加入しているのが一般的です。

  • 健康保険

  • 介護保険

  • 厚生年金保険

  • 雇用保険労働者災害補償保険

社会保険は、会社か個人のどちらか一方にしか加入することができないので、副業で個人事業主になっても、加入している社会保険を変更する必要はありません。個人事業主として独立した場合のみ、別の社会保険への加入義務が発生します。

税金は本業の所得に副業の所得を加算して計算するので、副業が黒字であれば税金が高くなることを覚えておきましょう。逆に副業が赤字になった場合は、本業の給料から天引きされた税金が還付される可能性があります。


会社を辞める必要はある?

税務署に開業届を提出して個人事業主になったからといって、今すぐ本業を辞める必要はありません。就業規則に副業禁止というルールがなければ、終業後は個人事業主として自由に働くことができます。

会社員を辞めて個人事業主として独立したいなら、さまざまな準備や手続きが必要になります。クレジットカードやローンの審査は、信用がある会社員のうちに受けておくべきです。個人事業の収入が安定してきたら、独立へ向けたスケジュールを作成しましょう。


まとめ

会社員として働いている人でも、副業で個人事業主になることは可能です。税務署に開業届を提出するだけで個人事業主になれるので、やる気さえあれば誰でも簡単にチャレンジすることができます。

会社員として働きながら、副業として個人事業主の仕事を行うメリットはたくさんあります。経費の範囲が広がったり、赤字になっても損益通算ができるようになったりするので、特に税制上のメリットは大きいです。しかし、少なからずデメリットもあるので、事前に理解しておけば損をすることはないでしょう。

副業で得た所得の金額によっては確定申告も必要になります。個人事業主の場合は、自分で確定申告の手続きを行う必要があるので、忘れないように注意が必要です。確定申告の手順や必要書類をあらかじめ確認しておきましょう。


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