個人事業主は自宅兼事務所にできる?メリット・デメリットや注意点も

個人事業主で、自宅兼事務所にすることは可能なのか、不都合がないのかと気になっている人も多いのではないでしょうか。本記事ではメリット・デメリットや事務所として利用する際の注意点の他、他の選択肢としてサービスオフィスも紹介します。

個人事業主の人が事務所を持つことは、事業規模に対し費用がかかり過ぎることも多いので悩みの種です。そこで自宅兼事務所という選択肢を聞いた人も多いのではないでしょうか。

自宅を事務所として利用することができれば、支払う家賃や経費などを大幅に減らせます。そこで本記事では、個人事業主で自宅兼事務所を検討したい人に向けて、導入の可否や起こりうるメリット・デメリットを解説。

加えて導入の際の注意点や、自宅兼事務所が向いている・向いてない人の特徴もわかりやすく紹介します。本記事を見れば、自宅兼事務所の向き不向きを判断することができるでしょう。個人事業主の人はぜひご覧ください。


個人事業主にとって自宅兼事務所は可能?

個人事業主の人にとって、レンタルオフィスなどの場所を貸し切って事務所を構えることは、大きな負担になります。そんななかで、手軽にビジネスを開始できる方法として考えられるのが自宅兼事務所です。

しかし法律上、自宅兼事務所を持つことは可能なのでしょうか。実際に自宅を事務所にすると、どのような影響があるのかも不安が多いはずです。

そのため、まずは自宅兼事務所についてあらためて確認し、現実的な可否を解説します。


自宅兼事務所とは

自宅兼事務所とは、その名のとおり自宅を事務所として使用することです。​​個人事業主や法人成りした直後の会社では、自宅兼事務所とするケースは珍しくありません。


自宅兼事務所は「SOHO」とも

最近では、自宅兼事務所は別名「SOHO(ソーホー)」とも呼ばれています。SOHOとは「Small Office Home Office」の頭文字をとった言葉で、個人事業主が小さなオフィスや自宅で仕事をすることです。

SOHOの定義は一つではなく、総務省によって定義づけられている概念もあります。総務省ではテレワークの主な形態の一つとして考えられており、自営型の働き方かつ「おもに専業性が高い仕事をおこない、独立自営の度合いが高いもの」を指しています。


一方、別の自営型の働き方である「内職副業型勤務」では「主に他のものが代わっておこなうことが容易な仕事をおこない、独立自営の度合いが薄いもの」と定義。両者を比較すると、SOHOのほうが専門性が高い業種に結び付けられると考えられています。

他にも、自宅兼事務所で勤務している人のことを指す場合などもありますが、そうしたワークスタイルや勤務環境を総合して表す単語として、使用されていると考えてよいでしょう。


今住んでいる自宅を事務所にすることは可能?

結論から言うと、個人事業主が自宅兼事務所として運営していくことは可能です。事務所を他に借りるための契約を交わす必要がないため、支出を必要最低限に抑えながら慣れた空間で業務ができます。

ただし、メリット・デメリットや契約上注意すべき点があるため、理解したうえで導入が必要です。


自宅兼事務所のメリット・デメリット

個人事業主が自宅兼事務所を持つうえでメリットもありますが、同時に留意すべきデメリットも無視できません。ここからは、自宅を事務所とする場合に考えられるメリットとデメリットについて解説します。


メリット

個人事業主が自宅兼事務所を持つメリットは大きく分けて4つです。

  • コスト削減が可能

  • 時間の節約

  • 柔軟なワークスタイル

  • 家族との時間


以下で各メリットを詳しく解説します。


コスト削減が可能

まず、メリットの一つ目として挙げられるのが、コストを削減できる点です。他の場所を契約する必要がないため、初期費用やランニングコストを抑えられます。

また、自宅を仕事に利用しているため、確定申告の際に家賃など事業にかかった経費も、家事按分して申告することができます。家事按分とは、生活費の全額から事業にかかった経費のみを基準に則って分けることです。

適切な計算方法で算出した額を申請することで、経費を削減できます。新しくビジネスを開始する人などは、開業資金を節約できるためメリットが大きいです。


時間の節約

自宅兼事務所は離れた事務所に通勤する必要がないため、業務以外の時間を家事や育児など、プライベートのタスクに有効活用することができます。

また、事務所を新たに借りた場合は、オフィスの内見や契約に向けての書類準備など、さまざまな準備が必要ですが、自宅兼事務所だと煩わしい手続きも必要ありません。その点においても、開業準備の時間を短縮できるといえるでしょう。


柔軟なワークスタイル

業務内容や取引先との都合によりますが、特定の機関に出社する場合と異なり、自分のペースで仕事を進められる場合が多いのが特徴です。

また、レンタルオフィスやカフェで勤務する場合には、営業時間などに縛られます。しかし自宅なら制約がないため、いつでも好きな時間に働くことができます。また、自身の所有する環境なため、業務空間も自由にカスタマイズすることが可能です。


家族との時間

仕事場とプライベートの空間を楽に行き来できることから、家族との時間を確保しやすくなります。万が一、家族に急用が発生してもすぐに対応できるため、オフィスで働くより家族を気遣いつつ仕事を両立することもできます。


デメリット

個人事業主が自宅兼事務所を開設することによって、懸念されるデメリットは以下のとおりです。

  • 仕事とプライベートのバランスが取りづらい

  • 集中力の低下

  • セキュリティの問題

  • 信用を得づらい

  • 他者との交流が減少する


デメリットについても詳しくみていきましょう。


仕事とプライベートのバランスが取りづらい

自宅兼事務所で最も考えられるデメリットは、仕事とプライベートのバランスが取りづらくなる点です。家と職場が同じ場所にあるため、仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、仕事の時間の区切りが付けづらく、休息も取りづらくなってしまいます。


集中力の低下

自宅に同居する人がいる場合は、自分以外の人の声や物音などで集中力が途切れやすくなることもデメリットです。集中力が継続できないために休憩が増え、生産性が低下することがあります。


セキュリティの問題

顧客情報を扱う場合や業務資料を管理するにあたって、自宅兼事務所であるとセキュリティの確保が難しくなります。また、社員や顧客などの出入りが発生する業種・業務内容の場合は、自宅でのプライバシーを確保することも困難になる可能性があるでしょう。

また、取引で事業所の住所を記載しなければならないときに、自宅兼事務所だと自宅住所を記すことになるため、個人情報の漏洩につながる危険性がある点にも注意が必要です。


信用を得づらい

個人事業主の人や起業したばかりの会社は、自宅兼事務所のスタイルを取ることが多いです。しかし自宅兼事務所は事業規模が小さいことも意味するため、社会的信頼が劣る側面があることも事実です。

そのため、開業して長かったり売上を確保できていたりしても、信用できるのか、取引をきちんとおこなえるのかなど、取引先に不安を持たれる懸念があります。


他者との交流

自宅兼事務所のスタイルを取る場合、外部の施設や機関に出勤することがなくなるため、他者との交流は減少してしまうでしょう。社交的な機会を得られず、業界の最新情報を入手したり、ビジネス上のつながりを作ったりする機会が乏しくなることがあります。


自宅兼事務所にする際の注意点とは?

自宅兼事務所の導入を検討しているなら、開設する際に気を付けるべき注意点について学んでおくことをおすすめします。


注意点を把握し、加味して準備を進めていきましょう。


賃貸物件かどうか

自宅が賃貸物件の場合は、事務所として使用できるか確認しましょう。

個人事業主の場合は、事業内容によって商号登記という手続きを踏む必要があります。その際に、事務所の住所も設定することになりますが、賃貸物件である場合は登記できるかは契約次第です。

なお、判断するには賃貸契約書の使用目的の欄を確認しましょう。ここに「居住のみを目的とする」といった文言があれば、その物件は自宅兼事務所として使用することはできません。

また、万が一規約を無視して登記したり、実際に事務所としての利用を続けたりしていた場合は、家主から違約金の支払いや退去を命じられることがあります。契約内容には十分に注意しましょう。


家主と要相談

自宅兼事務所にする場合、賃貸契約書を確認するだけでなく、その物件の家主にも確認を取る必要があります。法人契約になると、家主側に課される税金が高くなることがあるためです。ただし、これは法人契約の場合に限り、住居契約のままで商号登記をするのであれば、家主が負担する税金は変わりません。

近年、SOHOの勤務スタイルは増えてきており、不動産業界でも浸透してきています。そのため、「住居契約のままSOHOとして使いたい」と説明すれば、家主からも理解を得られることが多いです。事前にその点を相談してみましょう。


自宅兼事務所にしても良い?判断のためのポイント

自宅兼事務所という勤務環境は、メリット・デメリットを見ても、誰にでも推奨されるものではないことがわかります。

そこでここからは、自宅兼事務所が向いている人・向いていない人について解説します。自身がどちらにあてはまるのか参考にしてください。


自宅兼事務所に向いている人

自宅兼事務所に向いているのは、下記のような人です。

  • パソコンやインターネット環境があれば業務が完結する人

  • 仕事とプライベートのメリハリをつけられる人

  • 不特定多数の出入りがなく表札にも記載しない人

  • 新聞や雑誌、テレビのニュースなどで情報収集できる人


自宅兼事務所は自宅という狭い環境下のため、限られた業務のみを持ち込むことにしか向いていません。そのため、必然的にパソコンやインターネットを使った仕事を生業にしている人のほうが向いているといえます。

例えばIT関連の仕事など、オンラインでの作業のみで完結するなら、自宅兼事務所としても不便さは感じないはずです。

また、自身で勤務スケジュールや生活リズムを管理できる人や、外との交流を積極的に作ることができる人なども当てはまります。自己管理と情報取得・外との交流など、自身で積極的におこなえる人は業務にも支障は出ないでしょう。


自宅兼事務所に向いていない人

自宅兼事務所の勤務環境がおすすめできないのは、下記のような人です。

  • 仕事とプライベートが混同してしまいがちな人

  • 長時間働くことができない人

  • 取引先の来訪がよくある人

  • 事業規模が自宅スペースに収まらない人


仕事とプライベートが交差する空間で、業務タスクを管理する自信がないのなら自宅兼事務所はおすすめできません。予定通りにタスクを進められなければ、結局は残業が増えたり休みの日も仕事を抱えたりしてしまいます。

もし管理できたとしても、自宅兼事務所は定時などがないため長時間労働になりがちです。その点、気にせず働ける人であるかどうかも、向き不向きを左右します。

また、取引先の来訪がある人にも向いていません。取引先を招き入れるには、自宅はプライベートな空間が多すぎるため、やり取りがしづらいです。同居人がいる場合は機密保持の観点からも難しいでしょう。

自宅空間という制約でいえば、事業規模が自宅に収まらない人にもおすすめできません。あくまでも自宅内で無理なくできる事業でなければ難しいです。


自宅兼事務所が向いていないなら?

自宅兼事務所に向いていないとしても、事務所を新たに借りる余裕がない個人事業主の人も多いでしょう。その場合は、事業が安定するまでの期間だけ自宅兼事務所とするのがおすすめです。事業規模が大きくなってから、あらためて事務所を賃貸すれば無理なく事業を進められるでしょう。


サービスオフィスという選択肢も!

自宅兼事務所が向いていないと考えられる人や、将来事業が大きくなることを見据えている人は、サービスオフィスの選択肢もおすすめです。


サービスオフィスとは?

サービスオフィスとは、専有の個室を借りることができ、受付や秘書などのサービスを含むオフィスのことです。借りるスペースの広さは運営会社によりさまざまですが、2~3人といった小規模のスタートアップ企業から、30〜50人規模の中小企業などでも利用できます。

似た形式のオフィスとしてレンタルオフィスがありますが、無人運営の場所も多くビジネス環境としては必要最低限です。一方、サービスオフィスは受けられるサービスも多様で、受付スタッフが常駐していたり来客対応を代行してくれたりする他、人材交流会といったネットワーキングのサービスが備わっている場合もあります。


自宅兼事務所にない、サービスオフィスのメリット

サービスオフィスは完全個室の作業スペースを借りられます。加えて受付業務や秘書的な業務も完備しているため、利用者は雑念なく業務に集中しやすいメリットがあります。他の人と空間を共有しないため利用料はやや割高ですが、その分、設備やセキュリティ環境が揃った状態で利用することが可能です。

さらに、サービスオフィスは利用中のスペースの拡大・縮小にも対応。人員の増減にあわせて、フレキシブルにオフィススペースを調節できるのは、サービスオフィスを利用する大きな利点です。

コストをなるべく抑えつつ、オフィスクオリティも保ちたい人や、長期的なビジネスの拡大が見込まれる人は、サービスオフィスの検討がおすすめです。


「サービスオフィス.JP」で

サービスオフィスを使ってみたい人は、ぜひ運営会社の公式ページなどから探してみてください。ただし、どのような会社がよいのかまだわからない場合は、「サービスオフィス.JP」の利用がおすすめです。

「サービスオフィス.JP」は、仲介手数料無料で複数物件内覧OK・一括比較でサービスオフィスを比較・仲介をしてくれるサイトです。初めてサービスオフィスを利用する人も、簡単に比較検討が可能です。

また、扱われている物件は、全て受付スタッフが2名以上常駐しているものに限定されています。紹介ページでは、運営企業のスタッフが現地で撮影した写真が使用されていたりと、実際の状況が詳しく掲載されています。すべての物件で賃料や初期費用の目安も掲載されているため、サービスオフィスの比較検討にも大いに役立てることができるでしょう。

サービスオフィスの空室情報は常に変動しているため、本格的に検討したい人は早めに問合せを進めてください。もしビジネススタイルや利用内容に不安がある場合は、相談することも可能です。


まとめ

個人事業主が自宅兼事務所を持つことは法的にも問題がなく、多くの事業者が取っている手法でもあるため安心して開設を進めてください。

事務所を他所で持つよりコストが圧倒的に削減でき、最小限の時間で準備できます。柔軟に働けるので、プライベートも重視したい人には最適です。

一方で仕事とプライベートのバランスを取ることが困難で、集中しづらい環境という内的問題も抱えます。事務所を持てないために信用度が劣るなどのデメリットもあるので、対策を講じてから自宅兼事務所を持ちましょう。



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