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【専門家監修】働き方改革のためDXを活用!導入で失敗しないコツまで紹介

働き方改革とDXは相性が良い施策です。リソースがかかっていた業務負担を削減でき、業務の効率化によって会社の利益にも繋がります。本記事では働き方改革の基本やDX導入のコツを解説。あわせて導入手順や成功に繋げるポイントについてもご紹介します。


\この記事は、専門家監修のもと制作しています/

本記事の監修者
Seven Rich会計事務所/日野 陽一(ひの よういち)

2011年に青色申告会に入社。2015年に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ東京事務所に入所。金融機関の法定監査などに携わる。2018年からはSeven Rich会計事務所に勤務し、ベンチャーやスタートアップ企業を中心に資金調達やIPOの支援、税務申告のサポート等を行っている。


働き方改革が進められている中で、DXの導入を検討しているケースも増えています。ITを活用して新しい仕組みを作る試みは、働き方改革と相性が良い施策です。

例えばDX活用の1つとして、多くのリソースがかかっている業務を自動化するツールを使えば、従業員の負担が減るだけでなく、業務が効率化されて会社の利益にも繋がります。

本記事では、働き方改革の基本から本改革にDXを導入するコツまで詳しく解説します。あわせてDX導入の手順や成功に繋げるポイントについてもご紹介するので、これから改革を進める方は必見です。


働き方改革で解決するべき3つの課題

働き方改革は、あらゆる人が健やかに働けることや、社会的な生産性を高めることが目的です。それらを進めるためには以下の解決すべき3つの課題があります。

  • 長時間労働や休日の少なさの改善

  • 雇用形態による格差の解消

  • 多様な働き方が可能な制度の整備

これからの社会では、これらの解決・改善が急務となるでしょう。以下でそれぞれの課題について詳しく解説します。


長時間労働や休日の少なさの改善

現在の日本では長時間労働や休日の少なさが問題となっており、それらを改善することも働き方改革の課題です。OECD(経済協力開発機構)によれば、日本の平均労働時間は加盟国38か国中で最も長いという調査結果が出されています。

また、国連から是正勧告も受けており、社会的にかなり大きな問題といえるのです。そこで働き方改革では、時間外労働の上限制限や年次有給休暇の取得義務化などで、労働者が健康を損ねずに働けるような社会作りが求められています


OECD(経済協力開発機構)とは?

個々の国の生産性を高めることや、国際社会全体での経済・貿易・社会福祉などを向上させることを目的とする国際的な機構。全世界38か国が加盟している。


雇用形態による格差の解消

働き方改革では、雇用形態による格差をなくすこと、いわゆる同一労働同一賃金も課題です。現在では、正規雇用と非正規雇用で待遇に大きく差があり、非正規のほうが不利な労働条件であることが多いとされています。非正規には派遣、業務委託、パートタイム(アルバイト)などがありますが、いずれも消費的な人材としての見方が多い傾向がありました。

ただ雇用形態が違うだけで能力や業務に差がないこともあり、不平等な状況で働いている労働者も多いのが事実です。これらの非正規の待遇改善をするためには、基本給や賞与、手当、福利厚生などで待遇差が生まれないようにする必要があります。


多様な働き方が可能な制度の整備

現代に合わせて、多様な働き方ができるように制度の整備を行うことも課題です。私たちの社会を作るのは、いわゆるサラリーマンのような労働者だけではありません。子どもがいる人や要介護者の家族がいる人、何らかの理由で兼業したい人などが、一方的に不利な状況に置かれることは避けなければなりません。

そのためにも、さまざまな働く形と働く人の事情に合わせて、柔軟に対応できる労働環境を導入していく必要があります。また、これらの多様な人々が働きやすくなることで、社会全体の生産性を高める目的も内包しています。


働き方改革でDXが有用な理由

では、働き方改革でDXが有用な理由はなんでしょうか?

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、企業の改革においてITを活用し、新しい概念にアップデートをして収益に繋げる仕組みを作ることです。企業が、ビッグデータとAIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していくだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも改革し、競争上の優位性を確立することを目的としています。

つまり、働き方改革でDXを導入することで、ITを駆使した効率化とスムーズな改革システムの導入が叶うといえます。特にDXを活用できるポイントとしては以下の3つが挙げられます。

  • 業務の効率化で労働時間の削減

  • 2025年の崖への対策

  • テレワークの推進が容易

以下でこれらについて詳しくご紹介します。


業務の効率化で労働時間の削減

まずDXが活用できるのは、労働時間の削減です。RPA(ロボティックプロセスオートメーション)というソフトウェアを活用し、業務効率化を図ることで労働時間を削減して、さらには人材不足も解消します。

RPAは、人が手動でやっていた単純なパソコン作業などを自動化し、業務を効率化するソフトです。例えばデータを複製したりデータをアップロードしたりすることが可能です。このようなソフトの導入で今まで人力だったリソースが不要になり、結果的に労働時間を削減することができます。

2025年の崖への対策

2025年の崖への対策としてもDXは有用です。「2025年の崖」とは、今まで使用されてきた古いITシステムを改善していかなければ、2025年には日本企業全体で最大12兆円の経済損失が生じるといわれているものです。

ITシステムが時代遅れになってしまうことで、人材、経営、技術においてリソースが不足するか、不利な状況になることに繋がります。しかし、この2025年の崖への対策としてDXを導入することで、効率化による人員削減や技術進化による個人への負担軽減が実現でき、それに伴い経営改善などが狙えます。


テレワークの推進が容易

DXを導入しておくことで、労働環境への対応も柔軟にできるため、テレワークの推進も容易になります。例えばDXを進めたことで、今までオフィスでやらなければならない業務がオンラインだけでやることが可能になります。するとテレワークの際も、完全オンラインでやり取りが完了できるようになるのです。

テレワークが推進されているのにもかかわらず、中途半端に出社する必要がある企業も多いですが、そういった非効率的な部分もなくすことができます。完全にテレワークになれば新型コロナウイルス感染症対策にもなり、影響を受けにくい環境で業務ができるようになるでしょう。

働き方改革をDXで実現できた3つの事例

働き方改革でDXを活用していくことは、結果的に改革で掲げている課題解決に繋がることが見えてきたのではないでしょうか。そこで次は、実際に働き方改革をDXで実現できた3つの事例についてご紹介します。事例を見ることで、より自社での活用イメージが具体化されるはずです。


ソフトバンクのデータ入力自動化

通信会社大手のソフトバンク株式会社ではDXを導入し、データ入力の自動化によって労働時間と人員コストの削減に成功しています。具体的には、コールセンターで最も業務量が多かった、契約者が落としてしまった携帯・スマホの「落し物通知依頼書」の転記作業を自動化しました。

この落し物通知依頼書は1日に約6,000件も届いており、コールセンターの10人で処理しなければならず、他の業務を圧迫していたのです。さらに、週明けに週末分をまとめて処理しなければならないこともあり、次の日に持ち越しになるほど、業務としての負担が大きい作業でした。

しかしこの作業をDX化して、独自のシステムとRPAを活用することで、転記作業を自動化することに成功しています。結果として、この作業にかかっていた人員が10分の1に減り、他の業務への影響を軽減することができたのです。


下関農業協同組合の自動処理

下関農業協同組合では、注文データなどを自動集計するシステムを導入することで、業務を効率化することが叶いました。下関農業協同組合は農業向けの肥料や資材を販売している会社で、全国約3万人から日々注文書が届きます。そのため入力作業も膨大でした。

そこでDX化に注目し、RPAのソフトを導入することで商品集計・購買記録の作成などを全て自動処理化することに。その結果、処理にかかる人員を削減することができたうえに、処理するまでのスピードも上がったため、よりスピーディーな発送もできるようになりました。


日本通運の事務系提携業務の改善

日本通運株式会社は、さまざまな事務系提携業務の改善を行い、人員や労働時間の削減などを成功させています。具体的には以下の点でDXを導入しています。

  • 通運業務:コンテナ発送貨物の業務の発注と支払業務の自動化

  • メール業務:添付ファイルを特定のフォルダに自動保存/自動印刷化

  • 作業計画関連:統合業務支援の作業計画や完了報告のデータ入力を自動化

  • 経理業務:納品書清算業務の自動化

  • トレース業務:輸送経歴の確認を自動化/輸送状況を取得して自動通知

  • 請求書処理:登録を一部自動にして省力化

このような定型的な作業を積極的にRPAなどでDX化しています。これにより2019年の段階で、年間26万時間以上の労働時間削減に成功しており、働き方改革でも大きな役割を担ったのです。日本通運株式会社では、これからも年間100万時間削減を目指すことを掲げています。


働き方改革でDXを導入する流れ

DXの導入は、大手企業だけでなく一般的な中小企業でも取り入れられており、いずれも人員削減や労働時間削減という働き方改革の課題解消に繋がっています。では実際にDXを導入したいとなった場合は、どのような手順で行うべきでしょうか?

ここからは働き方改革でDXを導入する流れを解説します。主な手順は以下の通りです。

  1. 企業全体でDXの必要性を認識

  2. 抱える問題を解決できるツールを選定

  3. ツールを活用できる体制の構築

  4. 運用状況を定期的に改善

続いて各手順ごとにご紹介します。


企業全体でDXの必要性を認識

DXを活用しながら働き方改革を進めるためには、まずは企業全体でDXの必要性を認識する必要があります。なぜならRPAなどの自動化システムなどを導入するには、従業員と上層部の双方で必要性を感じなければ導入が難しいためです。

そもそも予算がかかるため、望んでも簡単に導入できるとは限りません。そのため、企業全体で「必要性がある!」という同一の認識を持ったうえで、意見交換や上層部への提案などを重ねる必要があるでしょう。

抱える問題を解決できるツールを選定

DXといってもさまざまなものがあります。そのため、自社で抱える問題を解決できるツールを選定していくことが必要でしょう。例えばツールには以下のようなものがあります。

ツール例

内容

効果

具体例

RPA(自動化ツール)

定型業務を自動化するもの

  • 人員削減

  • 労働時間削減

  • 業務効率化

WinActor、UiPath、BizRobo!など

情報共有ツール

社内の情報を共有・管理する

  • 情報共有のスピードを高める

  • 情報をすぐ検索できる

Stock、Dropbox、Google Driveなど

企画管理ツール

企画進行を可視化する

  • 複雑なフローが明確化

  • 円滑な進行が可能

Redmine、Trelloなど

電子決済システム

外部との決済を電子化する

  • 業務効率化

  • 情報を回覧しやすい

クラウドサイン、GMOグローバルサイン、Shachihata Cloudなど

オンライン会議ツール

オンラインを通して会議が行える

  • 場所を選ばず会議が可能

  • テレワークに対応できる

Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなど

これ以外にもさまざまなツールがあります。自社での導入に適切なものを選ぶだけでなく社員が使いこなせるツールであることも重要です。労働環境を改善するためのものなので、その導入が足枷になってしまわないように注意しましょう


ツールを活用できる体制の構築

DXを導入すると今までとは業務フローが変わるため、それに合わせた体制の構築も行いましょう。従業員へのDX導入のメリットの周知や体制変化後の説明など、密なコミュニケーションと説明を重ねていってください。

いくら効率化できるといっても、新しいフローを理解してもらえなければ、改革の出だしでつまづいてしまいます。


運用状況を定期的に改善

働き方改革のためにDXを導入したら、それで終わりではありません。運用していくにあたって、定期的により良い活用法を模索していくことが大切です。その際にはPDCAサイクルを活用し、成果を確認したり問題点などを精査したりしましょう。必要に応じて改善を重ね、現時点で効率的な状態にしていくことが理想です。


PDCAサイクル

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)から成る概念で、仮説と検証のプロセスを循環させて企画の品質を高めるフレームワーク。これにより、会社の計画を効果的かつ品質を保ちながら達成することができます。


DXで働き方改革を成功させるコツ

DXの有用さはわかっても、実際に導入するにあたって成果が出るのか不安な方もいるかもしれません。そこで次は、DXで働き方改革を成功させるためのコツをご紹介します。ポイントは以下の4点です。

  • 社内のシステムは全体を把握して再構築

  • ツールを使いこなせる人材を確保

  • 自社の事業拡大を検討

  • 専門家に導入を相談

DXを導入する際は受け身ではなく、効果的に運用できるようにポイントをしっかりと押さえて臨みましょう。


社内のシステムは全体を把握して再構築

DXの導入は、社内全体のニーズや状況を把握して再構築したうえで行いましょう。働き方改革のためにDXを導入するのが良いと思っても、自社に合っていなかったり社内ニーズにそぐわなかったり、中途半端に導入したりすると無駄になってしまいます。また別の場所で支障が出ることも考えられるため、雑に計画を進めてしまうのは危険です。

導入する際は必ず社内のシステムとニーズを確認し、それをしっかりとDXで再構築していきましょう。


ツールを使いこなせる人材を確保

効率化のツールも、業務で実際に使いこなせなければ意味がありません。そのため、ツールを理解して使用できる人材を確保することも大切です。DXの導入は、精通した人材とそれを扱えそうな人員を配置することで、円滑に回せるようになります。まずは効果的な編成を考えていきましょう。

同時に、現時点でツールを使いこなせない従業員へのカバーも行ってください。理解度に格差が生まれてしまうと、改革に置いていかれる人材が出てきてしまうためです。専門性の高いツールなどは適材適所に配置するのが効率的ですが、一般的な業務でのツールも使用できるように、育成もしっかりと行いましょう。


自社の事業拡大を検討

DXの導入は働き方改革だけではなく、自社の事業拡大にも繋げることを検討しましょう。ITを使った業務の効率化は、これからはどの企業も導入していくことが普通になります。早い企業はすでに行っていますが、あくまでも単純な業務サイクルを改善するものという部分が大きいです。

ビジネスを拡大してライバル企業に勝つためには、さらに一歩先でDXを事業に活用していくことが有効になってくるでしょう。例えば顧客管理のツールからニーズの分析に繋げたりなど、新しいビジネスのきっかけを探っていってください。


専門家に導入を相談

DXは専門的な知識を要するため、もし社内にノウハウがない場合はコンサルタントなどの専門家に相談することもおすすめします。全く知識がない人材で検討しても、うまく導入することは難しいでしょう。

そのため自社の状況と悩み、DXで改善したい点をまとめて、ぜひ専門家へ相談してみてください。


DXで働き方改革をする注意点

最後にDXで働き方改革を進める際の注意点についてもご紹介します。以下を踏まえたうえで慎重に導入を進めてください。

  • DXを導入しても負担は減らない可能性

  • 社員の年収が下がると離職のリスク


DXを導入しても負担は減らない可能性

DXを導入しても、部署や従業員の負担が減るとは限らないことはあらかじめ留意しておきましょう。業務を効率化して負担が減っても、その分新たに仕事が増えることは必然です。以前の業務の負担はなくなっても、新たな業務のせいで、従業員の労働負担が多くなってしまわないように注意が必要です。

また、テレワークの導入においてはそれぞれの業務となるため、時間外労働が増える懸念もあります。業務負担や進行の遅れによるしわ寄せが起きないように、進行管理にも気を使っていきましょう。

社員の残業代が下がると離職のリスク

DXを導入したとしても業務量が変わらず、さらに残業時間を削減してしまうと、実質的に時間あたりの業務負担が増えることになりかねません。実際の業務に対して、会社の都合で労働時間を短縮しただけでは、いわゆるステルス残業などを招いてしまう懸念もあります。そのような状況が続いては離職率が上がってしまうでしょう。

離職する人が多くなると、会社も成り立たなくなってしまいます。働き方改革をうわべだけで進めるのではなく、従業員ごと・業務ごとの負担にも十分気を使ってください。


まとめ

働き方改革でDXを導入することは、労働時間の削減や多様な働き方への実現につながり、企業力の強化などにも有用です。IT技術を活用することで、今まで大人数で時間がかかっていた業務も全て自動になり、効率化が叶うでしょう。さらに近年一般的になってきているテレワークも導入しやすくなるはずです。

DXの導入にあたっては、社内の状況と問題点を把握したうえで、理解度が高い人員と共に適切なDXツールの選定を行ってください。表面的な改革になってしまうと、従業員の負担が増えたり会社への損失にも繋がったりするため、従業員の立場を忘れないように働き方改革を進めましょう。


本記事の監修者
Seven Rich会計事務所/日野 陽一(ひの よういち)

2011年に青色申告会に入社。2015年に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ東京事務所に入所。金融機関の法定監査などに携わる。2018年からはSeven Rich会計事務所に勤務し、ベンチャーやスタートアップ企業を中心に資金調達やIPOの支援、税務申告のサポート等を行っている。


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