現在、固定概念にとらわれない働き方の多様化が進行中です。また働き方改革の施行や新型コロナウイルスなども影響し、選択肢があるべきという考えが強くなっています。そこで本記事では、働き方の多様化の背景とメリット・デメリットを解説していきます。
年々さまざまな職種が増え、働き方の多様化が求められています。さらに2019年4月に働き方改革が施行されたことや2020年の新型コロナウイルスの流行で、より一層社会的にも変化が進められています。オフィスで働くことや定時出勤、さらに正社員と非正規社員の扱いの差といった固定概念は、今後はさらになくなっていく可能性が高いです。
しかしこの働き方の多様化は、さまざまな従業員が働きやすくなるメリットがある一方で、デメリットもあります。本記事ではそんな働き方の多様化についての解説と、メリット・デメリットを分かりやすく解説していきます。
働き方の多様化が進められる背景とは
そもそも働き方の多様化が進められている背景には、どのような事情があるのかご存じでしょうか。まずは改革が進められている背景にある「働く人」についてご説明します。
働き方改革の影響によって始まった多様化
働き方の多様化が大きく進められるようになったのは、2019年4月に厚生労働省の主導で施行された「働き方改革関連法案」が大きく影響しています。日本では従来の働き方が長年固定化しており、職種が増えていても、諸外国に比べて働き方の選択肢が狭められていました。
しかし固定化した働き方では、現状数多くの職種が増えた中で不利益を被る就労者が増えてしまいます。そこで雇用形態の違いや個々の事情があっても、人々が働きやすく生産性の高い社会作りを実現するために、政府主導で改革が急速に進められているのです。
ダイバーシティの必要性
さまざまな職種に合わせた働き方の選択肢を増やすという点に加え、個人の事情にかかわらず健全に働ける構造の必要性も求められています。これは経営において、ダイバーシティ推進と呼ばれているものです。
このダイバーシティに含まれているのは、一般的な労働者はもちろん女性や高齢者・障がい者・外国人など、さまざまな立場の人材です。これらの人材が立場に関係なく快適に働ける環境や、不利にならない構造で労働者を増やしていくという目的があります。
ダイバーシティとは?
そもそもダイバーシティは、直訳すると「多様性」という意味です。経営においては、ダイバーシティ&インクルージョン=「多様性を受容する」とも呼ばれており、多様性がある人材を活用することを指します。企業として多様な人材を活かす機会を作り、社会的な責任を負うと同時に、人材を有益に使うためには必要不可欠な考えです。
多様化していく働き方の例
働き方改革の推進の背景が理解できたところで、具体的な働き方の形はどのようなものがあるのか見ていきましょう。さまざまな人が働く各企業では、実用的な多様化が進んでいます。
ここからは、実際にある多様化していく働き方の例をご紹介します。
テレワーク
オフィスに出社しないテレワークは、働き方改革の筆頭として取り入れられている新しい働き方の形です。ICT=情報通信技術を使い、オンラインを通して場所や時間にとらわれずに働くことができます。また、テレワークの中にも以下の種類があります。
在宅勤務:自宅でオンラインを通して働く方法。通勤などの時間・体力コストがかからない。
モバイルワーク:電車、新幹線、飛行機、喫茶店などで働く方法。オフィスでも自宅でもない環境で効率的に働ける。
コワーキング:貸しオフィスやワークスペースなどを使って働く方法。企業指定もしくは個人選択ができる。
ワーケーション(プレジャー):旅行先で休暇を兼ねて楽しみながら働く方法。出張を兼ねる場合もある。
このように、企業のオフィスに縛られない働き方を総じて「テレワーク」と呼んでいます。特に2020年4月以降は、新型コロナウイルスの流行があったことにより、各企業で強く導入が進められています。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は1日の労働を固定時間に定めず、1ヶ月の総労働時間に沿って働く方法です。従来の労働方法では、9時始業から18時終業(うち昼休み1時間~)といったように、勤務する時間が固定されています。
しかしフレックスタイム制では、1ヶ月の総労働時間を守っていれば問題ありません。例えば「午前中・午後の〇時間だけ働く」といった方法を取ることができるのです。
また、従業員には必須の勤務時間であるコアタイムと、自由に出勤退勤を決められるフレキシブルタイムを定めています。従業員同士での業務はコアタイムで行うため、業務に支障をきたすことなく、従業員の自由に業務時間を取ることができるのが特徴です。
短時間正社員制度
短時間正社員制度は、短時間の勤務でフルタイム勤務と変わらない基本給・賞与・退職金を従業員がもらえる制度です。よく似たものに短時間勤務制度がありますが、こちらは企業で義務化されたものではなく、任意で取り入れる制度です。
一般的に育児、介護、疾病など、特別な事情がある従業員に適用される制度としても認知されていますが、そのような事情がなくても使われることがあります。その場合には1週間の総労働時間を固定し、それに沿って働くことが一般的です。
また、企業は雇用する短時間正社員の役割を入念に定め、従業員側は確かな実績と能力を求められる関係性となります。
業務委託化
業務委託は、企業の業務を社外の人材に委託する方法で、以下の2つの種類があります。
請負契約:依頼した成果物と引き換えに報酬を支払う/受領する
委任・準委任契約:あらかじめ定めた期間や業務に対して報酬を支払う/受領する
企業側は、社外の個人事業主に業務を依頼することで、業務の負担を分散することが可能です。依頼を受ける個人事業主は、時間や場所にとらわれない働き方ができます。
副業・兼業
副業・兼業は、本業とは別に行う仕事を指します。働き方改革以前から一般的であった働き方の1つで、近年では副業・兼業を行う人の割合も多くなっているといわれています。
ただし注意が必要なのは、本業の雇用契約上で副業・兼業を禁止している場合は、兼業することができない点です。副業・兼業を制限する法律はありませんが、契約違反となれば懲戒免職処分の対象となります。
企業側は本業業務に支障が出ることを懸念して、副業や兼業を禁止しているケースが多いです。しかし、副業・兼業は企業にとって損だけとはいえません。従業員のスキルアップなどを狙えるため、企業と従業員の双方にメリットがある働き方といえます。
働き方を多様化させるメリット
多様化する働き方の事例も多くあり、企業・雇用側でさまざまな効果を生むことがわかります。次はそれを踏まえ、企業側が働き方を多様化させることで得られる総体的なメリットをご紹介します。
主要なメリットは以下の4つです。
人材確保
生産性向上
コスト削減
新たな発見につながる
人材確保
企業が働き方を多様化させるということは、今まで逃していた人材を確保できるというメリットがあります。そもそも従来の働き方で職を諦めざるを得なかった人は、決して他の従業員より能力が劣っているわけではありません。
育児、介護、病気など、致し方ない理由から、固定された働き方が難しいだけです。自由な就労体制・時間を設定できれば、高い能力を持った人材であることも少なくありません。企業が多様な働き方を用意することができれば、このような人材を確保できるようになることは大きなメリットといえます。
生産性向上
働き方の多様化は、従業員の時間や体力というコストを削減できるため、結果的に企業全体の生産性向上につながるというメリットもあります。
例えば従来のオフィスに通勤する働き方は、起床から会社へ通勤して始業するまで、2時間~2.5時間ほどを見越して行動することも多いです。もしオフィスが近いとしても、始業までに1時間強は換算して生活していることでしょう。
このように、勤務外で仕事のために多くの時間のロスがあることは、従業員の負担であるといえます。しかしテレワークやフレックスタイム制などの働き方を取り入れれば、これらのロスがなくなります。仕事とプライベートのバランスも取りやすくなるため、従業員の意欲が高まり生産性も向上することにつながるでしょう。
コスト削減
テレワークや短時間勤務制度といった働き方の改革は、コスト削減においてもメリットがあります。なぜなら、従業員がオフィスを使うための電気代や経費が、節約できたり不要になったりするためです。基本的に会社を動かすうえでは、業務に必要なものだけでなく、快適なオフィス作りのための経費もかかってしまいます。
しかしテレワークなどを行えば、その負担を企業で負う部分が少なく済む可能性が高いです。ただし従業員が、業務にかかるコストを一方的に負うのは不利益となってしまいます。よって、テレワークなどに伴う電気代の一部や、機器購入のコストを企業で負担することが必要です。
新たな発見につながる
働き方を自由に選択できるようになることは、従業員一人ひとりに余裕ができることにつながります。つまり仕事以外に取り組む時間が増え、新たなインプットの機会も生まれやすくなるのです。
新たな発見や学びの時間が取れるようになれば、仕事に活かせるスキルを身につけたり、業務で活かせる画期的なアイデアが生まれやすくなったりします。これらの従業員の余裕は、企業の発展につながる可能性を秘めているといえるでしょう。
働き方を多様化させるデメリット
働き方の多様化は企業にとって多くのメリットをもたらします。とはいえ、これらの方法を取り入れていくにあたっては、デメリットがあることも無視できません。ここからは働き方の多様化に伴うデメリットについて見ていきましょう。
挙げられる点は以下の2つです。
管理職の負担が増える可能性がある
成果主義では個人の実力が求められる
管理職の負担が増える可能性がある
働き方に選択肢が増えたおかげで従業員の残業などが減り、生産性が高まることを望めます。一方で、社内の管理職の負担が増える可能性があることは、デメリットとして認識しておく必要があるでしょう。
例えば働き方改革によって業務時間が限られた場合は、時間内に仕事を終わらせられなければ、その分を管理職の人が肩代わりするケースがあるためです。そのため、改革と同時に起きうるしわ寄せやトラブルへの対処法を、あらかじめ考えておくとよいでしょう。
成果主義では個人の実力が求められる
働き方を多様化させることは、働く場所・時間・方法を個人に任せ、成果主義になるということです。自由さに利点がありますが、同時に個人の実力に求められる部分が大きくなるのがデメリットといえます。
例えばテレワークなどは、さぼろうと思えばできてしまい気まぐれにさぼりを繰り返すと業務に支障が出る恐れがあるのです。そのため、従業員は仕事の進行をコントロールするセルフマネジメント能力が試されます。
このセルフマネジメントは、自身で業務進行を守ることに慣れていないと難色を示すことも多いです。企業はセルフマネジメントのノウハウやTodoリスト、マネジメントアプリの使い方といったもので、業務を管理する方法を示すことが必要になるでしょう。
働き方の多様化に向けて企業がやるべきこととは?
働き方の多様化に向けて、企業はまずどのようなことをやるべきでしょうか。導入にあたり、着手すべきポイントは以下の4つです。
労働環境の整備
ビジネスツールの積極的な導入
ワークスペース改善
従業員のスキルアップ
労働環境の整備
まずは基本的な箇所として、労働環境を見直すことから始めましょう。古典的な就労環境と条件は、現代の多様な働き方を希望する従業員にとって、不利なことも多いです。
例えば就労時間などで労働法の適用がないことや、福利厚生などの保障がないこと、報酬額も理不尽に少額であることなどです。こういったことは、多様な働き方を選択する従業員にとって、不利な可能性があります。そのような状況では、働き続けるのが困難になってしまうでしょう。
以下のようなポイントを中心に、多面的に労働環境を整備していきましょう。
無理のない就労環境や依頼スケジュールを考案する
育児・介護など個人の状況と両立できる環境・条件を考える
生活を見据えた正当な報酬額
正規・非正規にかかわらず福利厚生などの充実
従業員にとって、働きやすい環境や条件に整備していくことで、生産性アップなど企業側のメリットにつながります。
ビジネスツールの積極的な導入
働き方の多様化は、その方法を単純に取り入れるだけでは非効率的です。そのため従業員同士がより円滑にコミュニケーションを取り、業務がスムーズに進むようにするために、ビジネスツールも積極的に導入していきましょう。
具体的には、テレワークに欠かせないオンライン会議用のソフトウェアや、オンラインのスケジュールシステム、Todoアプリなど、効率的な業務進行を可能にするツールを取り入れることがおすすめです。その他にも、効率化のために自動計算が可能な経理ソフトを活用したり、時短やテレワーク推進につながるビジネスツールを積極的に導入したりするとよいでしょう。
ワークスペース改善
働き方改革の中では、ワークスペースを改善していくことも重要とされています。本社とは別の場所で働く方法を導入するなら、それぞれの働く環境も考えていくことも必須です。例えば以下のような改善例が挙げられます。
コミュニケーションを優先したいなら?→フリーアドレスを導入する
テレワーク通勤する従業員が減るなら?→オフィスの縮小/サテライトオフィスの導入
サテライトオフィスとは、従業員がより通いやすいように、本社から離れた場所に作られた小規模のオフィスを指します。従業員の数人が働ける最低限の設備を置くもので、テレワークの1つです。ただし、企業としては賃貸借契約を結ぶ必要があるため、そのコストがかかることは念頭に置いておかなければなりません。
もしくは場所を限らないなら、似たものでシェアオフィスもあります。複数の契約者(企業・個人)が共有するオフィスのため、コストは少し安上がりです。また、共有といってもオープンスペースと個室がある場合もあるため、従業員の希望に合わせた環境を用意することも可能です。
従業員のスキルアップ
いくら働き方を改革しても、それに従業員が追いつけない状況では、生産性アップを狙うのは困難になります。短時間勤務などにして残業が減ったものの、従業員が退勤後に密かに残業を行うことになれば本末転倒です。
つまり働き方を多様化させて改革を行うなら、同時に従業員のスキルアップも行っていかなければなりません。業務短縮のための工夫や明確な依頼のやり取りなど、無駄をなくすことが必要です。そのためには、効率的に働ける方法や具体的なスキル構築の機会を考えていきましょう。
現在、働き方改革はすでに社会的になじめ始めており、人材育成のフェーズに移行しています。これからは、企業と従業員の間にあるスキルのギャップを埋めることが課題となるでしょう。
まとめ
働き方の多様化を進めることは、優秀な人材を確保して生産性を向上させられたり、コストを削減できたりと企業にとってのメリットも大きいです。働く世代が減っている現在、企業はさまざまな働きたい人のニーズを満たし、より多くの従業員が苦悩なく働ける場所を確保することが必要不可欠です。
働き方の多様化を進めていくにあたり、しわ寄せが起きたり改革に追いつけない従業員が出たりといったデメリットの懸念もあります。しかし準備と計画をしっかりと行って対策を立てておけば、それらに備えることができるでしょう。
ぜひ働き方の多様化を進め、優秀な人材で会社を動かすことを検討してみてください。
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