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働き方改革の問題点をわかりやすく解説!失敗しない導入のコツとは

従業員の働き方改革を検討しているものの、やり方がわからず困っている人も多いのではないでしょうか?働き方改革にはデメリットや問題点も存在します。本記事では働き方改革の失敗を避けたい人向けに、デメリットや問題点、失敗事例や解決方法を解説します。

従業員の雇用条件や満足度の改善のために、働き方改革を検討しているものの、やり方がわからずに困っている経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか?

働き方改革とは、国が主導する労働環境改善の取り組みです。働き方改革というと、従業員の満足度向上といったメリットに注目が集まりがちですが、残念ながらデメリットや問題点も存在します。

本記事では、働き方改革の問題点やデメリットを紹介し、失敗を避けるために失敗事例や解決方法を解説します。本記事を参考にして、新しい職場環境のスムーズな導入を目指してください。


働き方改革の5つの問題点

事業主側から見た働き方改革の主な問題点は、以下の5つです。

  • 事業の利益が減少する可能性

  • 高度プロフェッショナル制度の乱用が発生

  • 社内制度や業務規則の変更に手間

  • 社員のモチベーションの低下

  • 早急な働き方改革は困難

それぞれの問題点と対策・ポイントについて詳しく解説します。


事業の利益が減少する可能性

働き方改革を行うことで、事業の利益に影響が出る恐れがあります。

そもそも働き方改革とは、従業員の待遇や労働条件を見直すことで、生産性や労働効率を向上させる取り組みです。

しかし、従業員の満足度を重視するあまり、本来の目的であった生産性が落ち込んだり、労働効率が低下したりする可能性があります。労働効率が下がると業績や顧客獲得にも影響が出て、結果的にコストの増加にもつながるでしょう。

この問題を避けるためには、従業員の労働状況や日常業務の時間的コストを把握しておく必要があります。自身で管理することが難しければ、ITソフトなどを導入し数字化・視覚化して把握することもおすすめです。


高度プロフェッショナル制度の乱用が発生

高度プロフェッショナル制度が悪用されると、従業員の負担がかえって大きくなる恐れがあります。

高度プロフェッショナル制度とは、2019年4月の働き方改革関連法の成立によって施行された新たな働き方制度です。年収おおよそ1,075万円以上の社員に限って、労働時間ではなく成果で報酬を決めることができるようになりました。

業務を早く終えれば残業せずに早く帰ることができるため、従業員の生産性アップにつながります。また、事業主側から見れば無駄な残業を減らすことができるためメリットが大きいです。

しかし、この制度を悪用すると、長時間勤務をしているにもかかわらず、残業代がもらえないという事態になりかねません。成果と報酬のバランスを適切に設定しなければ、事業主側に一方的な利益が生まれてしまいます

制度の導入は従業員との同意がなければできないため、丁寧なヒアリングを行なったうえで導入しましょう。

“参考:厚生労働省⾼度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」”


社内制度や業務規則の変更に手間

事業主側のデメリットとして、社内制度や業務規則の変更に時間を要することが挙げられます

働き方改革関連法の成立で、時間外労働の上限の規約など、明確なルール設定が事業主側に求められるようになりました。また従業員への指導など、口頭で労働時間削減を提唱するだけでは働き方改革の実現は難しいでしょう。

働き方改革の計画・実行には、通常業務に加えて改善業務も必要になるため、中小企業診断士や社会保険労務士などの専門家に依頼することも検討しましょう。


社員のモチベーションの低下

労働条件を見直して残業時間が減ることで、社員のモチベーション低下を招く可能性があります。

本来、残業時間が減って拘束時間が減るのは望ましいことです。しかし精一杯労働して、多くの残業代を得ることをやりがいとする従業員にとっては、デメリットになる場合があります。また労働時間が少なくなっても、仕事量が変わらなければ負担の増加にもつながります。

働き方改革によって、従業員の負担や不満が増えてしまっては元も子もありません。現場の状態を把握し、場面や状況に応じた臨機応変な対応が求められます。


早急な働き方改革は困難

働き方改革を実行したからといって、すぐに効果が見られるわけではありません。長期的な視点を持ち、無理のない変化をもたらしていく努力が必要です。

無意識のうちに、従業員はこれまでの働き方が正しいという固定概念を持っている可能性があります。従業員が改革を受け入れやすいように、ポジティブな呼びかけを続けましょう。変化によるデメリットや問題点に対する声を真摯に受け止める必要があります。

また、一企業の努力だけでは改革がうまく進まない場合もあります。必要に応じて取引先や同業界の他社に働きかけるなど、業界全体での取り組みが大切です。


問題点が顕在化し働き方改革が失敗した事例

続いて、問題点によって働き方改革が失敗してしまった事例を紹介します。失敗事例を把握することで、同じような失態を避けることにつながるでしょう。


同一労働同一賃金で社員の流出

働き方改革によって、従業員の労働時間や報酬を平等化することに成功した結果、優秀な従業員が転職してしまったという失敗事例があります

すべての従業員に対して平等であろうとする姿勢は大切です。しかし、平等が故に成果を出している従業員が評価されないようでは、優秀な人材の流出につながりかねません。

労働時間が平等になれば、従業員が出した成果で能力を見極めやすくなります。結果を出すと評価される仕組みを整えることも、働き方改革の大切な要素です。


有給休暇を取ると負担増

働き方改革には「毎年5日の年次有給休暇の確実取得」など、有給休暇の取得促進が含まれています。ただし、休暇を取ることに従業員が負担を感じてしまうことも。

有給休暇は、休養を取りながら給与を得ることができる従業員を守る制度です。しかし仕事量が変わらなければ、有給休暇後の業務量が増えたり、周囲の従業員にしわ寄せがいったりとデメリットも発生します

業務量や労働環境を考えず、安易に有給休暇取得を促すことは、従業員の負担増加につながります。まずは従業員の現在の業務について把握することが大切です。

“参考:厚生労働省働き方改革特設サイト年次有給休暇の時季指定」”


働き方改革をしても業務課題が残る

「推進されているから」「人件費を減らしたいから」と安易に働き方改革をスタートしても、思ったような成果が得られないことがあります。

働き方改革には労力や時間がかかるため、改革後に業務課題が残るようでは、コストパフォーマンスがよい取り組みとはいえないでしょう

業務課題が残ってしまうのは、課題について深く考えずに改革を実行したことに原因があります。従業員の不満の声や業務上の問題について、「なぜそうなるのか」を深掘りしたうえで、どういった改革が適しているか検討しましょう。


問題点を解決する働き方改革のコツ

働き方改革にはさまざまな問題点や失敗のリスクが伴います。失敗リスクを避けつつ問題点を解決するために、実践したい働き方改革のコツをまとめました。

  • 改革を始める前に現状を正しく把握

  • 業務課題の根本的な解決を図る

  • 社員の意識改革も実行

  • 役立つツールは積極的に導入

  • 働き方改革の助成金を申請

  • 働き方改革の結果は分析して再実行

それぞれのコツを以下で詳しく見てみましょう。


改革を始める前に現状を正しく把握

具体的な改革を検討する前に、現状を正しく把握することから始めましょう。状況がわからなければ、見当違いな働き方改革となってしまい、失敗しかねません。

まず会社の状態や課題、従業員の声、業務状況などを調査しましょう。現状を調べることで、何を第一に改革すべきか明確になります。

また並行して、従業員へのヒアリングを行うなど、改革のデメリットや問題点についてもよく理解しておきましょう。


業務課題の根本的な解決を図る

把握できた業務課題は、原因や目的をはっきりさせて根本的な解決を目指しましょう。

業務課題解決のために改革を行なっても、的外れな改革では根本的な解決には至りません。特に人手不足が続く業界では、労働時間の短縮によって従業員の負担が大きくなることもあります。

事業主側は労働時間や残業代など、どうしても表面的な結果や費用対効果を重視してしまいがちです。

根本的に業務課題を解決するなら、従業員一人ひとりの生産性や人手不足の解消も必要です。自社の課題を明確に理解して、原因の解決に努めましょう。


社員の意識改革も実行

制度やルールを決めるだけでなく、社員や従業員の意識改革を行うことも改革のうちです。「こうあるべき」という働き方への固定概念を壊し、新たな働き方を受け入れられる器を作っていく必要があります。

意識改革を実行する際も、現状を把握することが必要です。「従業員がなぜこのような意識を持っているのか」を理解することで、根本的な解決に繋げることができます。

例えば、長時間労働すべきと思っている従業員は、「残業しなければ十分な給与が得られない」「成果を出しても評価されない」といったことに不満を持っているのかもしれません。

適切な声かけを行うためにも現状や原因の追求を心掛けましょう。


役立つツールは積極的に導入

必要に応じて役立つツールは積極的に導入して、改善に努めましょう。

事業主や従業員の努力だけでは、業務課題をすべて解決することは難しいです。業務の効率性アップや職場環境づくりに役立つITツールは、数多く提供されています。役立つツールを選んで活用することで、働き方改革も効率的に進むでしょう。

ただし、ツール導入には費用がかかるため、自社に適した効果のあるものを選ぶ必要があります。人気があるからといって自社や業務に適しているとは限りません。現状を把握して、使い勝手の良いツールを利用しましょう。


働き方改革の助成金を申請

条件を満たせば、働き方改革によって助成金が申請できる可能性があります。ITツールの導入や人材の補充など、働き方改革は内容によって資金が必要です。要件を確認して、ぜひ申請しましょう。

厚生労働省が実施する助成金制度は次の通りです。2021年度の情報なので、申請する際は最新情報を確認してください。

  • 働き方改革推進支援助成金

  • 業務改善助成金

  • キャリアアップ助成金

助成金の種類

働き方改善推進支援助成金

業務改善助成金

キャリアアップ助成金

概要

労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備実施に要した費用の一部助成

生産性向上の支援、事業場内最低賃金の引上げに要した費用の一部助成

非正規雇用者のキャリアアップ促進に対する助成

要件

・労働災害補償保険の適用事業主であること

・成果目標を満たすこと

・年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること

・以下からいずれか1つ以上実施すること

1.労務管理担当者に対する研修

2.労働者に対する研修、周知、啓発

3.外部専門家によるコンサルティング

4.就業規則・労使協定等の作成・変更

5.人材確保に向けた取組

6.労務管理用ソフトウェアの導入・更新

7.労務管理用機器の導入・更新

8.デジタル式運行記録計の導入・更新

9.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

・賃金引上げ計画を策定すること

・事業場内最低賃金を一定以上引き上げること

・引上げ後の賃金額を支払うこと

・生産性向上に資する機器・設備やコンサルティングの導入、人材育成の実施により業務改善を行い、その費用を支払うこと

・解雇、賃金引下げなどの不交付事由がないこと

・雇用保険適用事業所であること

・キャリアアップ管理者を置いていること

・キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること

“参考:厚生労働省働き方改革特設サイト助成金のご案内」”

また厚生労働省のほかに、他の省庁や自治体の助成金が利用できるかもしれません。中小企業診断士や社会保険労務士に相談してみてください。


働き方改革の結果は分析して再実行

業務改善は、ひとつの改革を実施しただけで終わるものではありません。現状や課題をよく理解して実施したとしても、想定外のことや新たな問題が生まれることもあります。

よって働き方改革の結果は必ず分析を行いましょう。どこが改善されたか、どういった問題が現れたかなど、結果を分析して新たな施策を練り直し、再実行することも必要です。

数年先の将来を考えて、自社にとって最適な仕組みを模索し続けることが大切です。少しずつ変化をもたらしていき、時間をかけて改革を進めましょう。


働き方改革で成功した3つの事例

働き方改革の成功事例も見ていきましょう。働き方改革の効果を理解しておくことで見通しが立ち、従業員の意識改革にも役立ちます。


NTT東日本の時間外労働短縮

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)では、働き方改革によって時間外労働を13%も短縮させることに成功しました。また、時間外労働が月45時間以上の社員が34%減少し、業務環境がかなり改善されていることがわかります。

具体的には、次のような取り組みが成果に結び付きました。

  • 在宅勤務の活用

  • Web会議の導入

  • 20時以降の時間外労働を原則禁止

  • 朝方時間外労働を6時から可能に

リモートワークの普及は移動時間や費用の削減につながるため、従業員にも事業主側にもメリットがあります。可能な業種であれば積極的に取り入れましょう。

“参考:厚生労働省働き方・休み方改善ポータルサイト取組事例:東日本電信電話株式会社」”

“参考:東日本電信電話株式会社時間と場所にとらわれない働き方の推進」”


MSD製薬のワーク・ライフ・インテグレーション実現

製薬・販売会社のMSD株式会社(MSD製薬)では、働き方改革によってワーク・ライフ・インテグレーションの実現に取り組んでいます。

ワーク・ライフ・インテグレーションとは、仕事と私生活のどちらにも力を入れることで、双方に良い効果が現れることをいいます

MSD製薬では働き方改革のために、次のような取り組みを行いました。

  • 育児休暇開始後5日間を有給化

  • 30日間の介護休暇を付与

  • 30日間の看護休暇を付与

  • 妊娠時の体調不良や父母学級への参加でも積立休暇が利用できる

このように女性や父親が働きやすく、育児休暇を終えて復帰しやすいような環境づくりがなされています。私生活を充実させることで、進んで休暇を取る従業員が増える効果もあります

“参考:株式会社MSDダイバーシティ&インクルージョン/多様で柔軟な働き方」”

“参考:国土交通省観光庁ポジティブ・オフ取組紹介:MDS株式会社」”


すかいらーくグループの従業員の満足度向上

飲食店業界大手の株式会社すかいらーくホールディングス(すかいらーくグループ)では、人材不足を解消するために労働環境の改善を行いました。結果、従業員の満足度が向上し、長期的に働ける職場環境に変化しています。

具体的には次のような取り組みを行いました。

  • 24時間営業(深夜・早朝営業)の廃止

  • メニュー改定の頻度を削減

  • 再度採用制度「おかえり採用」の導入

飲食業界は人手不足が続いていますが、従業員の負担を減らして働きやすくすることで、定着率の向上に勤めています

“参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構事例報告2 すかいらーくグループが目指す仕事と家庭の両立支援

“参考:株式会社すかいらーくホールディングス価値観や生活様式の変化に対応し、多様な人財が活躍できる企業に」”


企業が働き方改革をするべき理由

働き方改革にはいくつかの問題点が伴いますが、それ以上に企業や社会にとってのメリットが大きい取り組みです。なぜ働き方改革をすべきなのか、改革によって起こるメリットを2つ紹介します。


少子高齢化による労働力不足の解消

昨今、少子高齢化による労働力不足が問題視されています。厚生労働省の「日本の将来推計人口(平成29年推計)の概要」によると、日本の人口は2008年から減少を続けています。なかでも生産年齢人口(15〜64歳)の減少は、労働力不足に大きく影響してきました。

同調査では、このまま人口の減少が続くと、2065年には生産年齢人口は4,529万人となり、調査時から約4割減少すると予想されています。労働力不足が続けば、65歳以上の高齢者も労働力として働く必要が出てくるなど、さまざまな問題が伴うでしょう。

企業がいま働き方改革を行い働きやすい環境を提供すれば、労働参加率を向上させることも可能です。将来の労働環境を整えるためにも、社会全体で働き方改革に取り組んでいかなければなりません。


労働参加率低下を避ける

労働参加率の低下は、さまざまな業界での人手不足や業務環境の悪化を招きます。社会の取り組みとして「働きたいのに働けない人」を減らし、労働参加率を上げる必要があるでしょう。

特に、長時間労働はリスクが大きいとされています。出産や介護といったライフイベントによって長時間労働が難しくなり、離職せざるを得ない状況に陥ることも多いです。働き方改革によって、時短勤務や在宅勤務などの選択肢が増えることで、離職率を下げて長期的に働ける環境をつくることができます。

また、労働時間を改善することは、健康被害のリスク低下にもつながります。人々が健康的に長く働けるように、企業から社会へ取り組んでいくことが必要です。


まとめ

働き方改革は、企業の現状をよく把握して、業務課題を追求してから行う必要があります。現状を分析せずに改革を始めてしまうと、かえって利益が下がったり、社員のモチベーションに影響して人材流出が起きたりといった事態になりかねません。

しかし、労働力不足や労働参加率低下を避けるためにも、働き方改革で職場環境を改善する努力が必要です。本記事を参考にしていただき、まずは企業の問題点や課題を分析してみてください。そのうえで、社員の意識改革を実行したり効果的なツールの導入や助成金の申請を行ったりするなどして、働き方改革の具体的な計画を立てましょう。


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