働き方改革やワークライフバランスは、厚生労働省によって定義されており、社内でこれらを推進することで得られるメリットも多くあります。本記事では、それぞれの定義や推進に必要な施策、効果について解説するので、社内で推進する際の参考にしてください。
働き方改革やワークライフバランスの定義について、よくわからないと困っていませんか。どちらも厚生労働省によって定義されており、これからの社会において、重要な考え方になっています。また、社内で働き方改革やワークライフバランスを推進することで、得られるメリットも多いです。
本記事では、働き方改革・ワークライフバランスそれぞれの定義や、推進に必要な施策、効果、問題点などを取り上げるので、社内で取り入れる際の参考にしてください。
働き方改革とは
働き方改革は、厚生労働省によって定義づけされており、法改正もされています。ここでは、働き方改革の概要を見ていきましょう。
厚生労働省による働き方改革の定義
働き方改革は、少子高齢化に伴う人口の減少や、介護・育児の両立などの状況における課題を解決するために、多様な働き方を選択できる社会の実現を目標としています。
一人ひとりが活躍できる働き方に改革することで働き手を増やし、労働生産性を高めることも、働き方改革が目指していることです。
働き方改革推進のための法改正
働き方改革を進めるにあたり「働き方改革関連法」(2018年公布、2019年から順次施行)により、さまざまな法律が改正されます。特に以下3点が重要です。
年次有給休暇の時季指定
時間外労働の上限制限
同一労働同一賃金
「年次有給休暇の時季指定」は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の場合に、毎年5日は必ず年次有給休暇を取得させなければならないルールです。
「時間外労働の上限制限」では、原則として残業時間の上限を、月45時間・年360時間としています。「同一労働同一賃金」は基本給などの待遇において、正社員と非正規雇用との間で不合理な差がなくなる決まりのことです。
「しっかりと休める」「残業が規制される」「待遇差がない」ということが、働き方改革推進のための法改正といえるでしょう。
ワークライフバランスとは
ワークライフバランスの定義も、厚生労働省によって定められています。ここでは、ワークライフバランスの定義や重視される背景を紹介します。
厚生労働省によるワークライフバランスの定義
ワークライフバランスを日本語にすると「仕事と生活の調和」という意味です。「ワーク=仕事」と「ライフ=生活」の「バランス=調和」を整えるということです。
そして、一人ひとりがやりがいを持って働きながら、子育て期や中高年期など、人生の段階に応じた多様な生き方を選択できる社会と定義されています。
ワークライフバランスが重視される背景
ワークライフバランスが重視されるようになったのは、少子化対策を進めたにもかかわらず、少子化が止まらなかったためです。
仕事と育児の両立をサポートすることが義務付けられ、ワークライフバランスの重要性が謳われるようになりました。
また昨今では、女性だけでなく男性に対する介護対策が必要になっています。育児で休む女性よりも、介護で休む男性の数が多くなると言われており、世の中的に仕事と生活の調和が求められています。
働き方改革やワークライフバランスによる効果
働き方改革やワークライフバランスによって、以下のような効果を期待できます。
離職率を下げることができる
社員の生産性が高まる
優秀な人材を確保できる
個人の能力がアップする
地域社会への貢献になる
企業の売り上げがアップする
多様な人材や労働人口を確保できる
ここでは、各効果の詳細を紹介します。
離職率を下げることができる
働き方改革やワークライフバランスによって、社員の離職率を下げられる可能性があります。働き方改革やワークライフバランスは、長時間労働の改善につながり、働いている人の心身の健康を守れるものです。
社員の健康が維持できれば、退職ではなく、腰を据えて働くことを選択する可能性が高くなり、知識や実力のある人材の離職を防げるでしょう。
社員の生産性が高まる
働き方改革やワークライフバランスは、生産性を高める効果もあります。長時間労働が減り、限られた時間の中で集中して業務に取り組めるようになるためです。
また、しっかりと休めるようになるため、一人ひとりのプライベートが充実し、仕事へのモチベーションを向上させることが可能です。
ワークライフバランスが実現できてないと、ダラダラと仕事を進めてしまい、生産性の向上どころか、低下を招く可能性すらあるといえます。
優秀な人材を確保できる
優秀な人材の入社を期待できることも、働き方改革やワークライフバランスの効果です。なぜなら、働き方改革やワークライフバランスによって働きやすい会社になり、就職希望者を増やせるためです。
クリーンなイメージを確立することで、働きたいと思う求職者が増加し、優秀な人材が集まってくるようになるでしょう。ブラック企業と言われてしまうような職場環境では、就職希望者を増やすことは困難です。
個人の能力がアップする
働き方改革やワークライフバランスによって、社員の能力向上も期待できるでしょう。仕事以外のプライベートでのさまざまな経験により、一人ひとりの自己成長につなげられるためです。
また、社員が資格を取得するための勉強時間も確保しやすくなり、キャリアアップを目指せる環境を作れます。
さらに、個人の能力がアップすれば、業務の生産性向上にもつなげられるでしょう
地域社会への貢献になる
地域社会の活性化を推進できることも、働き方改革やワークライフバランスの効果です。企業の売上に直接貢献するような業務だけではなく、子育てや教育、介護、福祉などの分野に関われるようになります。
地域社会の活性化は本来、行政の役割ですが、市民が地域社会の発展に貢献できるようになり、暮らしやすい街づくりを実現できるでしょう。
企業の売り上げがアップする
ワークライフバランスの改善により、売上高の水準が高くなったというデータもあります。労働時間の短縮は、売上高を下げるとイメージされることが一般的です。しかし働き方改革やワークライフバランスが、売上に対して悪影響とはいえません。
また国や自治体から、ワークライフバランスの改善ができている企業のモデルケースとして表彰されている場合においては、表彰されていない企業よりも売上高が高い傾向にあります。
働き方改革やワークライフバランスは、売上アップにもつながると認識しておきましょう。
多様な人材や労働人口を確保できる
これまでに仕事と生活を両立できなかった人たちが働けることも、働き方改革やワークライフバランスの効果です。
家庭の事情を抱えている人や育児中の人などは、そうではない人よりも働く時間を確保できずに就業しづらいです。しかし働き方改革によって、短時間ワークを実現できます。
また、多様な人材や労働人口を確保することで、企業の売り上げがアップしたり生産性を高められたりするなど、メリットが少なくありません。
働き方改革やワークライフバランス推進に必要な施策
働き方改革やワークライフバランスを推進するためには、以下のような施策が必要です。
育児休暇を取得しやすくする
勤務時間の短縮化・多様化
能力と業務のバランス調整
在宅勤務やテレワークの導入
福利厚生制度を充実させる
残業の廃止や削減
売上アップや優秀な人材の確保、離職率の低下などを実現したい場合は、ぜひ参考にしてください。
育児休暇を取得しやすくする
働き方改革やワークライフバランス推進に必要な施策は、育児休暇を取りやすい状態を作ることです。育児休暇は女性が取るイメージが強いですが、男性社員の育児休暇取得を推進することが重要です。
女性の活躍を実現するためには、男性も育児休暇を取りやすいように、職場全体の意識を変える必要があります。
厚生労働省の雇用均等基本調査(2020年度)によると、育休を取得した男性は12.65%と過去最高記録になっています。ただし政府が目標としていた13%には到達できませんでした。
働き方改革やワークライフバランスを推進するためには、男性も育児休暇を取得しやすくする施策が必要です。
勤務時間の短縮化・多様化
働く時間を短縮したり多様化したりする施策も、働き方改革やワークライフバランス推進に必要です。
例えば、育児や介護をしている社員を対象に、働く時間を2~3時間短縮できる「短時間勤務制度」を導入すれば、仕事をしながら私生活の時間を確保できます。2~3時間ではなく、30分の短縮であっても効果的です。
あるいは、働く時間を自由に設定できる「フレックスタイム制度」を導入することで、社員は自身の生活に合わせて柔軟に仕事することが可能です。勤務時間の短縮化・多様化によって、一人ひとりが活躍できる環境を構築しましょう。
勤務時間が固定化されていたり、社員全員に対して一律になっていたりすると、ワークライフバランスの実現は難しいです。
能力と業務のバランス調整
社員が達成できる仕事を与えることも、働き方改革やワークライフバランス推進に必要です。社員一人ひとりの能力に見合った業務を与えることで、仕事への意欲を高められるだけではなく、生産性の向上にもつながります。
能力と業務のバランスが悪いと、社員は仕事にやりがいを感じられません。もしくはストレスを抱えてしまい、離職してしまう可能性もあるでしょう。仕事に対するモチベーションが低い場合には、生産性も上げられません。
社員それぞれの能力を見極め、見合った仕事を振り分けることは非常に重要です。
在宅勤務やテレワークの導入
社員を出社させるのではなく、テレワークや在宅勤務を導入し、自由に働ける仕組みを作ることもおすすめです。
テレワークや在宅勤務を行うことで、今日的な感染症の予防だけでなく、毎朝の通勤や出社のストレスを軽減できるようになります。また、交通費も削減できるため、無駄な出費を減らせるでしょう。
テレワークや在宅勤務は自宅で働けるため、育児や介護をしながら自由に働けるメリットもあります。さらに会社は、自由に移動しづらい障がい者も雇用しやすくなります。
業種や職種にもよりますが、導入することで効果が望めるようであれば、検討してみてもよいでしょう。
福利厚生制度を充実させる
福利厚生をこれまで以上に充実させることも、働き方改革やワークライフバランス推進に必要な施策です。福利厚生制度を充実させれば、健全な労働環境を実現できる可能性があります。
福利厚生制度は企業が独自に導入できるため、社員や会社のことを考えて導入することで、働いている人の満足度を高められるでしょう。例えば、食堂・食事補助や住宅手当などは福利厚生として人気があるため、導入することをおすすめします。
他にもレジャー施設やジム利用、資格取得制度を取り入れるのも一つです。社員がやる気を高めて会社に愛着を感じ、腰を据えて働ける可能性が高まるでしょう。
残業の廃止や削減
企業独自に残業時間の削減に取り組むこともおすすめです。残業を減らすことで、働き方改革やワークライフバランスにつなげられます。
まずは、現在どのくらいの残業時間が発生しているか調査してみましょう。調査の結果、他社よりも残業が多い場合は短時間勤務制度を導入したり、能力と業務のバランス調整を考えたりすることが重要です。
また、残業をさせないルールを設けることで、社員のワークライフバランスを実現しやすくなります。
働き方改革やワークライフバランスの推進による問題点
働き方改革やワークライフバランスを推進しようとしても、個人に合った施策を考えることは簡単ではありません。
また、会社によっては昔の文化が根付いており、スムーズに働き方改革やワークライフバランスを進められない可能性があります。
ここでは、こうした働き方改革やワークライフバランスの推進による問題点を見ていきましょう。
個人に合った施策を考えるのが難しい
働き方改革やワークライフバランスの推進による問題点は、業務や部署によって効果的な施策が異なることです。例えば在宅ワークを導入しても、実際に人に会って取り引きしなければならない業務の場合は、在宅ワークが効果的な施策とはいえないでしょう。
会社全体で施策を一律に行うことは困難なため、各現場の実態を把握し、それぞれに合った施策を行う必要があります。さまざまな場所に拠点を構える大企業ではなくても、あらゆることが現場任せになっている場合は、注意が必要です。
前時代の企業文化が根付いている
かつての企業文化が残り続けていることも、働き方改革やワークライフバランスの推進における問題点となります。
会社によっては、いまだに労働時間・残業時間の多い人が評価される文化が根付いており、短時間労働や仕事・生活の両立が受け入れられていません。
前時代の企業文化が根付いている場合は、経営陣が積極的にワークライフバランスをアピールしていくことで、社員の心を動かすことも可能です。
働き方改革やワークライフバランスの定義を正しく理解しておこう
働き方改革やワークライフバランスは、厚生労働省によって定義されており、あらゆる産業において重要な考え方です。実際、働き方改革推進のために、さまざまな法改正も行われています。
働き方改革やワークライフバランスの実践によって、離職率を下げられたり企業の売り上げアップにつながったりするなど、いろいろな効果が期待できます。
働き方改革やワークライフバランスを推進するためには、さまざまな施策を行う必要があります。しかし一人ひとりのニーズに合った施策を考えることは難しく、相当の努力や工夫をしなければならないでしょう。
まずは正しく働き方改革やワークライフバランスの定義を理解し、社内で共有しませんか。
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