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働き方改革はいつから始まった?変わったことやその時期まで

労働環境の改善策として、働き方改革についてよく耳にしている方も多いのではないでしょうか。本改革は、健康的な社会活動のために企業・労働者の双方で理解を深めるべき事柄です。本記事では働き方改革の始まりや変更点、さらに施行時期についてご紹介します。

近年、労働環境と条件の改善策として働き方改革が進んでいることを、よく聞く方も多いのではないでしょうか。この改革では労働環境を改善したり、さまざまな雇用形態や事情に関わらず不利なく働けるようにしたりするために、社会全体で導入が進められています。

そのため社会の一員として、あらゆる企業・労働者の双方で理解を深めるべき事柄といえます。そこで本記事では、働き方改革の始まりと変更点のほかに、施行時期についても各改革案の説明付きでご紹介します。改革について理解を深め、変化に備えていきましょう。


働き方改革とは?

働き方改革が始まった背景には、社会的な問題と課題が大きく影響しています。近年では働き方のニーズも変わってきたことから、どのような会社でも少なからず改革を取り入れる必要があります。そのため、働き方改革についての理解を深めていきましょう。


働き方改革とは

働き方改革とは、日本で働くさまざまな人が働き方を選べるようにする改革のことです厚生労働省が中心となって各企業へ推進しており、働き方改革法案も施行することで法律から改革を進めています。

本改革の目的は、不利な雇用条件や不規則な事情があって、働きにくかった労働者の環境を良くすることです。多くの人が不利なく働けるようにすることや、社会的な生産性を上げることが狙いです特に問題なく働いている人も、より良い環境にして人々が健全で豊かな人生を歩めるようにすることを目指しています。


働き方改革で必要なこと

働き方改革の課題として必要になることは以下の3つが挙げられます。

  • 労働参加率を増やす

  • 労働生産性の向上

  • 多様な働き方に対応する

労働参加率を増やす

そもそも働き方改革が始まった背景には、人口減少と少子高齢化に伴った労働者人口の減少があります。主要となる労働人口は15~64歳とされていますが、日本全体でその数が少なくなっているのです。

2060年には、過去の労働者人口が最も多かったピーク時の半分になるという予測も出ており、社会活動が全体で停滞してしまう懸念があります。そこで柔軟な就労環境にすることで、今まで事情があって働けなかった人や定年後の高齢就業者なども働けるようにして、労働参加率を上げることが目標です


労働生産性の向上

労働者が少ないことで労働生産性も低下しているため、それを向上させることも必要です。実際、OECD(経済協力開発機構)に基づき、日本の社会経済活動を調査・分析する公益財団法人日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2021」によれば、労働生産性は加盟国38か国中23位となっています。(2020年時点データ)

そのため、働き方改革では労働生産性を上げることも課題です。国全体の生産を維持することにも繋がるため、必要不可欠な要素といえます。


OECD(経済協力開発機構)とは?

国際社会全体での経済・貿易・社会福祉などを向上させ、国の生産性を高めることに貢献することを目的とする国際的な機構。加盟国は全世界38か国。


多様な働き方に対応する

近年では人々の生活環境や働き方が変化しているため、多様な人々の働き方に対応する必要があります。

例えば昔は、正社員のフルタイム勤務が普通という概念もありました。しかし最近は勤務時間より成果物次第であるなど、雇用形態もさまざまに変化しています。副業や兼業をしたり共働きしたりすることも一般的となり、多様な働き方が日常となったのです。

しかし需要がある反面、企業では非正規や不規則な働き方をする従業員は不利なままであることが多く、これらの多様な働き方に対応することも急ぎの課題となっています。


働き方改革法案とは

働き方改革法案の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。労働時間の見直しと、雇用形態にかかわらない公正な待遇に変えていくことが目的とされた法案です。

法の観点から労働環境・待遇面などが不合理な条件・状態にならないようにするためのものとして、2018年の6月に成立しました。主な法律は以下の通りです。

  • 労働基準法

  • 労働契約法

  • 労働施策総合推進法

  • じん肺法

  • 労働安全衛生法

  • 労働者派遣法

  • 労働時間等設定改善法

  • パートタイム・有期雇用労働法

この他にも、労働に関連するさまざまな関連法も整備されています。施行日は改正案により異なりますが、適用は大企業から順に施行されています。


働き方改革法案はいつから適用?

働き方改革法案は、さまざまな法律において改正が行われていますが、実際に適用されるのは、企業の規模や業種や関連法案の内容で異なります大企業と中小企業、さらに業態によっては資本金、労働者数などの違いから、働き方改革にかかる負担やリソースが異なるためです。

そこでここからは働き方改革法案の適用時期について、項目ごとに分けて解説します。ご紹介するのは以下の11項目です。

  • 時間外労働

  • 年5日の年次有給休暇の取得

  • 同一労働同一賃金

  • 勤務時間インターバル制度

  • 高度プロフェッショナル制度の創設

  • 産業医・産業保健機能の強化

  • フレックスタイム制度の拡充

  • 割増賃金率の引き上げ

  • 待遇に関する説明義務の強化

  • 行政から事業主への助言および指導などや行政ADRの規定整備

  • 労働時間の把握の義務化

時間外労働

改正法律

施行時期

  • 労働基準法(第32条)

  • 大企業:2019年4月1日

  • 中小企業:2020年4月1日

時間外労働(残業)は、労働基準法によって上限が定められていましたが、今回の改正で罰則付きで上限が規定されることになりましたさらに基本の残業時間の規定以上に残業が必要となる場合は、臨時的な事情であることを条件に労働基準法第36条に基づく労使協定の締結に加え、所轄労働基準監督署長への届け出が必要になりました。

これにより悪質な残業時間が起きにくい構造にしています。規定を破った場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるため、企業側も無視することはできません。

現時点(2022年4月時点)では、大企業だけでなく中小企業においても施行が開始されています。


改正後の労働基準法はどうなる?

時間外労働は労働基準法において以下のように変化しています。


残業時間の変化

上限の条件の違い

改革法案適用前

月45時間・年360時間まで

  • 年6ヶ月までは上限なし

  • 超えた場合は行政指導


  • 36協定を締結した場合は限度時間まで残業が可能

  • 罰則なし

改革法案適用後

【原則】月45時間・年360時間まで

  • 法律により原則として上限を超えられない

  • 罰則あり

残業が足りない場合※

【原則】月100時間未満・年720時間以内(休日労働含む)

  • 法律により原則として上限が超えられない

  • 罰則あり

※労働基準法第36条に基づく労使協定の締結と所轄労働基準監督署長へ届け出が必要

このように規定が原則となったり、追加の時間外労働の限度も罰則付きで設けられたりしたため、ありえない残業を従業員に強いる状況が起きにくくなることが期待されています。


年5日の年次有給休暇の取得

改正法律

施行時期

  • 労働基準法(第39条)

2019年4月1日施行(規模問わず)

有給休暇を取ることは今まで義務化されていませんでしたが、2019年4月1日から年次有給休暇の取得が義務付けられました内容は「年次有給休暇が10日以上付与される労働者には、年5日の年次有給休暇を確実に取得させなけらばならない」という規定に改正されました。

同時に、従業員ごとに年次有給休暇基準日や日数などを調査・記載をする「年次有給休暇管理簿」の作成も義務付けられています。(当該期間の満了3年間まで)さらに、この年次有給休暇に関する事項は、就業規則への記載も必要です。これらを守らなかった企業は30万円以下の罰金が科せられるので注意しましょう。

年次有給休暇についての改正点をまとめると以下の通りです。

  • 年間5日の年次有給休暇を取得させる(※年次有給休暇が10日以上付与される労働者)

  • 年次有給休暇管理簿の作成

  • 年次有給休暇についてを就業規則へ記載する


同一労働同一賃金

改正法律

施行時期

  • パートタイム労働法

  • 労働契約法

  • 労働者派遣法

  • 大企業:2020年4月1日

  • 中小企業:2021年4月1日

正規雇用と非正規雇用の差をなくすために、同一労働同一賃金を推進する法律に改正されました。大企業は2020年4月に、中小企業はその1年後の2021年4月に適用されています。

非正規の不合理な待遇差を禁止するものとして、基本給、賞与、手当、福利厚生などの待遇を同一にすることを推進しています。加えて待遇についての説明義務強化や、行政による非正規への助言・指導などが強化され、非正規の待遇改善を行っています。


勤務時間インターバル制度

改正法律

施行時期

なし

2019年4月1日

勤務時間インターバル制度は、就業時間から始業時間までの間隔=インターバルを確保して従業員の休息時間を増やすことに繋げることが目的です。なお、すでに2019年4月1日に適用されています。

今まで企業は実質的な勤務時間しか関知せず、就業時間に対し始業時間までが短くても、企業はそのインターバルに気を使うことはありませんでした。しかし労働者の健康的な生活を確保するために、休息時間を取り入れる働きが導入されています。ただしこの制度は努力義務となっており、法的な拘束力や罰則はありません。


高度プロフェッショナル制度の創設

改正法律

施行時期

  • 労働基準法(第41条)

2019年4月1日

高度プロフェッショナル制度は、2019年4月1日に新設された制度です。年収1,075万円以上の一部の専門職の人に対して、労働時間や時間外労働の割増賃金支払規定の対象外としました。また、成果物に労働時間が左右されるため、残業制限がないことに対策を立てるため、対象者には健康確保措置が義務化されることも決まっています。

これらにより優秀な人材や専門性の高い作業が可能な人材が、自由な働き方をしやすくすることを目指しています。なお、労使委員会での決議と本人の同意(書面)が揃えば適用が可能です。


産業医・産業保健機能の強化

改正法律

施行時期

  • 労働安全衛生法令及びじん肺法

2019年4月1日

産業医・産業保健機能の強化は、 2019年4月1日に施行が始まっています。産業保険は、労働者が安心して働ける環境作りのために、外部の産業医や保健師の手を借りて支援・指導するものですこれには労働者の定期健診などの健康管理も含まれます

今回の改正では、より一層の健康管理強化として産業医の権限を明確にしています企業側に意見を述べて情報を求めることや、必要に応じて適切な措置を指示することを内容に含めることで、産業医としての立場を強めているのです。

さらに健康診断、時間外労働、ストレスチェックなどの観点から、情報提供を強化することも内容に含まれています。産業医の立場を強め、密な情報提供を強化することで労働者の健康を守ることが狙いです


フレックスタイム制度の拡充

改正法律

施行時期

  • 労働基準法第32条

2019年4月1日

フレックスタイム制度の拡充も2019年4月1日から始まっています。フレックスタイム制とは、1日の労働時間を定めずに週あたりで計算して働く制度です。以前は労働時間の調整は1ヶ月以内で月をまたぐことができず、閑散期と繁忙期の調整がしにくいことが問題点でした。

しかし改正により労働時間の調整期間が3ヶ月となることで、前月働いた分を次月の休んだ分に振替することなどが可能になったのです。これによって一層柔軟な働き方ができるようになったといえます。

対して労働時間が1ヶ月で1週平均50時間を超えた場合は、割増賃金の対象となることについては留意が必要です。


割増賃金率の引き上げ

改正法律

施行時期

  • 労働基準法(第32条3の2)

中小企業:2023年4月1日

割増賃金率の引き上げは、2023年4月1日に施行が始まります。60時間を超えた分の時間外労働の割増賃金を引き上げるもので、25%から50%に引き上げがなされますこれらに違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

なお大企業では、すでに2010年に50%への引き上げが行われました。一番は無為な残業を抑制するのが狙いですが、必要に応じて残業を行う労働者にとっても、働きに対する成果がもらえる側面もあります。

待遇に関する説明義務の強化

改正法律

施行時期

なし

  • 大企業:2020年4月1日

  • 中小企業:2021年4月1日

待遇に関する説明義務の強化は、大企業・中小企業共にすでに改革が進んでいます。主に非正規雇用労働者の待遇面の改善のため、非正規雇用労働者は社員との待遇差の内容と理由について、企業へ説明を求めることができるというものです。

これにより企業は待遇改善をするだけでなく、不合理な待遇差があった場合に説明義務が伴うようになっています。


行政から事業主への助言および指導などや行政ADRの規定整備

改正法律

施行時期

  • 労働基準法

  • 大企業:2020年4月1日

  • 中小企業:2021年4月1日

雇用形態による待遇差をなくすために「行政から事業主への助言および指導などや行政ADRの規定整備」という改正も行われました。

行政的な立場から、事業主が待遇差によって悩んでいた場合の助言や、無料もしくは非公開の紛争解決手続きの実施に加え、裁判外紛争解決手続についても行政内で整備を行っています。


労働時間の把握の義務化

改正法律

施行時期

  • 労働基準法第42条

2019年4月1日

改正により、正確な労働時間の把握が2019年4月1日に義務化されました。残業時間を明確に管理することで、残業などを抑制して長時間労働を防ぐために企業の把握が必要不可欠になったのです。

労働時間の把握には、タイムカードやPCのログインソフトなど、正確な時刻が記録できるものを使用します。


働き方改革関連法への取るべき対応

働き方改革ではたくさんの項目から、より良い就労環境となるさまざまな改正が行われています。それらを踏まえ、企業はこれから働き方改革関連法にどう対応すべきかをご紹介します。

ポイントは以下の3つです。

  • 労使協定の改定・締結

  • 就業規則を変える

  • 労働契約書の明示方法の変更


労使協定の改定・締結

まず労使協定の改定・締結を行う必要があります。労使協定とは、労働者と企業間で締結される協定のことです。

特に残業時間が超過したり休日出勤などで法定労働時間を超えたりする場合は、労働基準法36条に基づく「36協定」という労使協定を結ぶ必要があります。もし届出をせずに法定労働時間を超えた労働を強いた場合には、労働基準法違反となるので注意しましょう。

なお、働き方改革関連法案の施行で「36協定」は特別条項になったため、一般条項と特別条項の2つの書類が必要です。詳しくは厚生労働省のホームページにて、書類の詳細が記載されているのであわせてご確認ください。

参考:厚生労働省「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)


就業規則を変える

働き方改革関連法により、就業規則を変更することも必要です。特に残業時間の規定変更、有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金などにおいては就業規則に記載義務があります。

改訂する際には労働省から意見を聞くなどして、その企業に勤める労働者に寄り添った就業規則に変更していきましょうまた、就業規則の変更後は社内全体に変更点が周知されるように努力が必要です。


労働契約書の明示方法の変更

労働者と交わす労働契約書(雇用契約書)の明示方法も変わっているため、対応を行う必要があります改正によって、労働基準法施行規則5条に以下の2点が明記されたためです。

  • 提示する労働条件が事実と異なってはならない

  • 労働条件の明示方法は労働者の希望に応じてFAX・メールによる通知を認める

このように労働条件提示について厳しく扱われることで、求人詐欺などはもちろん、実際と異なる労働条件とならないようにする狙いもあります。

まとめ

働き方改革は、どの職種でも等しく導入を進めていかなければならない改革です。その始まりを見ると、これからの社会では必要不可欠な内容となっています。そもそも労働者がいなければ企業は成り立たないため、今一度改革にあわせて労働者にとっての「働きやすさ」について考えてみてはいかがでしょうか。

また、導入された関連法案については現在、ほとんどのものが施行されていますが、企業の規模や業種によって異なる部分もあります。よって厚生労働省働き方改革関連法案についてのページも目を通しておくことをおすすめします。より良い労働環境を円滑に取り入れていきましょう。


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