新規事業に向いている人の5つの特徴を、推奨されるスキルとともに解説します。向いている人を社内で見つける方法や社内で育てていく方法、外注を選ぶ場合のポイントなど、新規事業立ち上げのチーム作りに関する情報を知りたい方におすすめです。
新規事業に向いている人をどのように選べばよいか分からず、チーム作りに悩んでいませんか。新規事業に関わるメンバーは、その事業の成否に大きな影響を与えます。したがってメンバーを選ぶときには、ポイントをしっかり押さえておくことが必要不可欠です。
本記事では、新規事業に向いている人の特徴や見つけ方、立ち上げる際のポイント、新規事業立ち上げの際の注意点について解説します。新規事業立ち上げに適した人材を選び、注意点をふまえながら事業の成功を目指しましょう。
新規事業に向いている人の5つの特徴
まず、新規事業を任せるにふさわしい人を選考する際に、注目するべき5つの特徴を紹介します。
不確実なことでも恐れずチャレンジ
これまでのデータやノウハウが通用しないことも多い新規事業の場合は、不確かな道筋の中でも恐れずにチャレンジできる人であることが重要です。
例えば、全く新しいサービスを提案する際は、アンケートや市場調査から顧客が求めていることを100%くみ上げることは難しいものです。そのためニーズや課題がはっきりしなかったり、他社の取り組みを参考にしたりすることもできません。
今は、まだ何となく分かっているだけの課題や問題であっても、解決のために「まずはチャレンジ」と捉えて行動できることは、新規事業を任せる人を選ぶ際に注目したい特徴といえます。
過去の成功体験に囚われない
これまでの成功体験にこだわらず、新しいことや技術を積極的に取り入れられる人を選ぶことも重要です。新規事業では、これまでの営業方法や使用してきたツールが通用しないこともあります。
成功体験にこだわる人を避けるのであれば、完璧主義な人も避けたほうがよいでしょう。能力が高かったとしても、新規事業を始めるべきタイミングに間に合わなかったり、予算を大幅にオーバーしてしまう危険性があります。
積極的に新しい方法やツール、外部からの意見も取り入れつつ、新規事業のための経験や知識を蓄積できる人材を選びましょう。
経営者目線でコスト意識を持てる
許容範囲のコストで事業を立ち上げられるのか、削ってもよい経費はあるかなど、経営者目線のコスト意識を持つ人を選ぶことも大切です。
新規事業は新しいツールや人材を必要とすることも多く、何かとコストがかかります。したがって、経営者目線でメリハリの利いたリソースの配分ができる人材が求められます。
責任を持って行動できる
前例がなくても、自ら責任を持って行動できる人であることも重要です。新規事業が軌道に乗るまでの間は、特にリーダー的立場の人は自ら行動に移さないと、周りの人もついてこられません。
また、新規事業はフレームワークを活用したり、データをもとに分析を行ったりしても、明確に答えが出ないことも少なくありません。そういったなかで、新規事業の結果がなかなか出なくても、その状況を許容しつつ、チャレンジ精神を持って取り組むことも求められます。
コミュニケーション能力が優れている
交渉を行いつつ、相手に分かりやすい説明も行えるように、コミュニケーション能力が優れていることも重要です。ここで言うコミュニケーションスキルとは、他の人と共に行動でき、多くの企業とやり取りできる交渉力を指します。
例えば、銀行から融資を受けるためには、自分たちの持つ資料や情報、アイデアの良さを伝えなくてはなりません。新規事業を立ち上げていく過程において、事業内容によっては多くの他部署や関連企業に、納得してもらう必要があります。
新規事業に向いている人の見つけ方
新規事業を行う際は、その担い手をどのように探したらよいのでしょうか。既に社内にいる社員を育成する方法や新規採用する方法、M&Aで外部調達する方法の3つがあげられます。それぞれについて詳しく紹介します。
求める能力がある人材を社内で育成
まずは、社内で新規事業に適した能力を持つ人材を見つけ、育成していく必要があるでしょう。次のような方法を用いて、新規事業に取り組んでもらえる環境作りをします。
社内で人材を見つけ出す「オーディション」を実施する
ワークショップを通じて仮説設定などのトレーニングを行う
企画書の作成を実践してもらい採用・不採用にかかわらずフィードバックを行う
チームを作って成果を競い合う「ハッカソン」の開催
「ハッカソン」とは、「ハック」と「マラソン」を掛け合わせた造語です。社内外交流のイベントや災害支援といったさまざまな目的に合わせ、デザイナーやITエンジニアなどでチームを組みます。そして限られた期間内にサービスやアプリケーションを作り上げます。
社内育成で重点的に伸ばすべきスキル
新規事業のコンテストやハッカソンは、会社によっては通常業務の大きな負担になることもあります。スモールステップで社内育成を始める方法として、トレーニングを通じて社員のスキルを伸ばしていくのも手です。
新規事業に向けて重点的に伸ばしたいスキルとして、次の5つがあげられます。
スキル | 理由 |
ビジョンや理想を言語化できるスキル | どんなに良い事業でも言葉として人に語らないと理解や共感が得られないため |
コミュニケーションスキル | 人材確保や社内への情報伝達力に欠かせないため |
プレゼンテーションスキル | 他業種や他社、顧客、社内他部署など、相手に応じた伝え方で新規事業の理解を求めるため |
情報収集スキル | 今の流行を取り入れるとともに、情報機密保持を適切に行える必要があるため |
プロセスを組み立てるスキル | 課題達成のための段階や目標を小分けに作り、具体的に計画を立てる必要があるため |
向いている人を新規に採用
新規事業を経営陣が承認しており、スケジュールやリソース、必要となる専門知識やスキルが明らかになっている場合は、適任の人を新たに採用する方法も検討する必要があります。
社内で必要な専門知識を持っている人がおらず、ゼロから育成するにはタイミングが合わない場合に有効です。
求人サイトで向いている人を募集するほか、事業の立ち上げを専門とする会社に依頼し、一部の仕組みを担ってもらうという手もあります。
M&Aで外部調達
費用対効果を検討したうえで、求める新規事業に適切なスキルや経験、知識を持つ企業と合併したり、チームごと買収したりすることも1つの方法です。自社にはない新しい風土を持つ人材を獲得できるといったメリットもあります。
しかし、M&Aでチームを外部調達したからといって、必ずしも新規事業の成功に結びつくわけではありません。適切なスキルや経験、知識が分かったうえで、目的達成の手段としてM&Aを選択し、外部調達を行うことが前提です。
向いている人で新規事業を成功させるポイント
新規事業に向いている人を集めただけで、新規事業がうまくいくわけではありません。せっかく集めた人材のスキルを発揮しやすいように、環境を整えることが成功のポイントです。この章ではそのポイントを整理して紹介します。
必要な範囲で権限を与える
新規事業を担当する責任者やリーダーを定めたら、必要な範囲で権限を下すことで、より適切な目標への道筋を描けるようなチーム作りを進めていきましょう。
何をしようとしても、「部長に承認してもらう必要がある」「社長の意向に沿わないといけない」という環境のままでは、新規事業が進まずにストップしてしまう可能性があります。
新規事業への参加者を社内の外圧から守る
新規事業は結果が出るまでに時間がかかり、時には他の部署から外圧が強くなることもあります。責任者任せにするのではなく、経営側は他人任せとならないように、社内の外圧から守ることも重要です。
例えば、責任者には経営者に次ぐポジションの人を選ぶことで、新規事業の重要性を社内に強く示し、外圧から守りやすくなります。社内で新規事業に対するイメージを統一することにもつながるため、新規事業の責任の所在を明らかにしたチーム構成にすることも大切です。
新規事業の成否によらずキャリアパスを示す
新規事業はリスクを伴うため、失敗する可能性が常に付きまといます。そのため、社内で居場所を失ったり解雇されたりするなど、キャリアに傷がつく可能性がある環境のままでは、新規事業へ取り組むことを社員が恐れてしまいかねません。
また、今まで以上に多忙になる可能性もあります。挑戦した人にとって損が起こらない道筋を示し、新規事業に携わることでスキルを磨きやすくすることも大切です。
新規事業の立ち上げ前に押さえておきたい基本
人材確保ができたら、具体的にどのように新規事業の立ち上げを行えばいいのでしょうか。この章では基本的な情報を流れに沿って解説します。
新規事業を立ち上げる流れ
まず、新規事業立ち上げまでの大まかな流れを見ていきましょう。
自社の今や顧客のニーズを振り返り「課題」や「アイデア」を見つけ出す
「課題」を元に事業を商品やサービス、将来的な機能の観点から検討
理念やビジョンを明確にする
市場における価値(市場性)と事業としての価値(事業性)を見極める
必要な人材や環境など不足している要素を洗い出す
具体的に「いつから」「どこで」「誰と」「何を」の行動計画を立てる
新規事業として取り組む
新規事業向けフレームワークの特徴
新規事業は企画の段階で時間をかけすぎると、良い結果を得られるタイミングを逃すことがあります。効率的に進めるためには、フレームワークと呼ばれる課題解決など目的別の分析方法の活用もおすすめです。
以下にその一例を、特徴とメリットとともに紹介します。
フレームワーク名 | 特徴 | メリット |
マンダラート | 3×3の9マス中央に1つのテーマを書き込み、関連するアイデアを周囲8マスに記入し発展させていく | 1つのテーマから複数のアイデアを検討できる |
6W3H | 5W1Hに「誰に」「どれだけ」「いくらで」を加えたツール | 抽象的なビジョンを具体化する効果を持つ |
MVV分析 | Mission(指名)、Vision(将来像)、Value(価値)の3つから理念を明確にするツール | 立案後に方向性の指針を定める際に活用しやすい |
3C分析 | 自社が事業に活かすべき強みを分析する方法 | 顧客に焦点を当てつつ、競合と自社の今を分析できる |
アドバンテージマトリクス | 自社事業の可能性を評価するためのツール | 事業の優位性と競争要因から評価できる |
ビジネスモデルキャンパス | ビジネスモデルを9つの要素に分類し、お互いの影響を確かめるツール | ビジネスモデルの可視化が行える |
新規事業の立ち上げタイミング
新規事業が必要となるタイミングは、企業が持続的に発展しやすい時期です。既存事業の利益で損失をカバーしやすい成長期や、ベテラン社員が増える成熟期が既存事業を活用して新規事業へ取り組みやすいといえます。
一方で、人材や資金に余裕がなくなった衰退期に新規事業を立ち上げると、かえって既存事業の負担になりかねません。現状を打開できるように、短期間で成果を出すことが求められるため、新規事業のアイデアが出しづらいことも考えられます。
新規事業の相談先
新規事業を始めるにあたって「アイデアが見つからない」「法律上はどうなるのだろう」といった疑問が生じることもあります。そんなときに相談する相手として、次のような相談先を頼るのも手です。
相談先 | もらいやすいアドバイス |
スタートアップ企業の経営者 | リスクをとりつつ新たな仮説をもとに事業を立ち上げているため、アイデアのヒントになるアドバイスをもらいやすい |
他社の新規事業担当者 | 新規事業に実際に取り組んでいる人材と話し合うことで、可能性のある分野を見つけやすくなる |
コンサルタント | 自社と条件が合うコンサルタントに出会えれば幅広い相談ができる |
中小企業診断士・行政書士・税理士等 | 利用できる補助金・助成金制度や法的なアドバイスがもらえる |
新規事業の立ち上げの注意点
最後に、新規事業を立ち上げる場合の注意点を3つ紹介します。新規事業の立ち上げを成功させるためには、携わる人材の確保や育成とともに大事な点になるので、あらかじめ確認しておいてください。
新規事業の成功確率は低い
新規事業の成功確率は1~3割ほどと言われており、決して高くはありません。プラスの効果が得られたとしても、目に見えた効果にはつながらない場合もあります。
新規事業として形にはなっても、儲かる事業として継続させることはとても難しいことを、あらかじめ理解しておきましょう。
新規事業向けの補助金は時間がかかる
銀行から融資を受ける以外に、行政の補助金・助成金制度を活用するのも手です。
ただし、申請したらすぐに受け取れるわけではなく、公募要領に沿った適切な事業でなければ補助・助成の対象外となることもあります。
例えば、事業再構築補助金(中小企業庁)の場合の要件は次の3つです。
公募要領に沿った計算方法により、コロナ禍の影響で売上高が減少していること
3~5年かけて事業再構築を行うこと
認定支援機関の支援を受けつつ事業計画書を策定すること
申請する場合は、数々の書類を準備しなければならず、無事に補助金がもらえるようになった場合でも、逐次諸々の手続きが必要です。事業完了後も、5年間は継続して報告を行う必要があります。手続きがスムーズに進められるように、中小企業診断士や行政書士など専門家の知恵と手を借りることも検討しましょう。
“参考:大阪中小企業診断士会「SOLUTIONS 新規事業を起こしたい」”
“参考:日本行政書士会連合会「中小企業支援」”
事業拡大によるオフィス移転はリスク
より多くの人員を確保したい場合や、新規事業のためにオフィスを広くしたい場合でも、オフィス移転をすぐに行おうとするのはリスクになりかねません。次のようなデメリットがあるためです。
通常業務と並行して移転業務が必要
退居と入居でそれぞれコストが発生
オフィス周辺環境が社員のモチベーション低下につながる可能性がある
選び方によってはスペースの縮小を余儀なくされるケースもある
社会情勢が大きく変わりオフィス移転がデメリットに変わってしまう
こうしたデメリットを防ぎつつ、新規事業に必要なスペースを確保する手段として、フレキシブルオフィスの利用があげられます。
フレキシブルオフィスとは、「コワーキングスペース」や「レンタルスペース」と呼ばれる、短期間の契約を前提としたオフィスのことです。企業に限らず、フリーランスや社員単体でも契約できます。フリーランスをはじめ、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方をする人のために生まれたサービスのため、必要な広さのオフィスを必要な期間だけ借りられるのがメリットです。
オフィス移転をすぐに検討するのではなく、今のオフィスとフレキシブルオフィスの併用を検討してみるのもよいでしょう。
“参考:サービスオフィスポータル「サービスオフィス.JP」”
新規事業に向いている人を厳選して業績アップ
新規事業に向いている人材は、コミュニケーション能力や責任感以外にも、コストに対する考え方といった、経営陣としての目線も持っている人物が当てはまります。
ただし、新規事業を成功させるためには、人選を十分検討したうえで、能力を発揮しやすい環境を整えていくことが大切です。権限を抑えたり、キャリアに傷がついたりする状況のままでは、積極的な行動を促せない可能性があります。
新規事業のために人員やオフィスの拡充を検討する場合は、シェアオフィスなどフレキシブルオフィスを活用して、柔軟な対応を行うのもおすすめです。新規事業に向いている人をよく選び、環境を整えながら業績アップにつなげていきましょう。
サービスオフィスを複数棟、比較検討できます。
気になる物件を選び、条件や設備などの違いを確認してみましょう。一覧表で比較ができる便利な機能です。比較資料としてご利用ください。