新規事業の立ち上げを任されたけれど、どうしたらアイデアを出せるか検討もつかないと悩んでいませんか。そんな方のために、参考になるアイデア例や考え方のヒントを解説します。あわせて、新規事業の立ち上げのポイントも紹介していきます。
多くの事業が展開される現代において、新規事業は新サービス・商品の提案や企業の課題解決など、企業を継続するために欠かせない重要な要素です。
しかし、いざ新規事業の立ち上げを任されても、なかなかアイデアが出せずに困っている方は多いのではないでしょうか。この記事では、新規事業の立ち上げのアイデアの出し方に関するヒントやポイント、事例を紹介します。
アイデアを出すことができずに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
最初に、新規事業に関するアイデアを出す際に役立つ切り口を6つ紹介します。
新規事業のアイデアを出す際は、なぜ新規事業を立ち上げなくてはならないのか、新規事業の立ち上げが必要となった経緯を振り返りましょう。新規事業の必要性を言語化することで、事業が目指すゴールが定まります。するとアイデアの方向性が見えやすくなり、情報収集を行う場所や内容も絞りやすくなるでしょう。
現代は消費者の志向や法律などが変化し、目まぐるしく環境が変わっています。そのような中で企業が持続していくためには、従来通りのサービスや商品の提供だけでは難しい面があります。そこで、将来の成長につながる打開策として編み出されるのが、新規事業の創出です。
しかし、必要性がはっきりしないまま進めてしまうと、時間をかけて行った情報収集が無意味になることも。また本当にサービスを必要としている顧客を取り逃したり、計画段階で回避できた失敗を呼び込んだりする恐れもあります。まずは新規事業が必要な理由を明確にしてゴールを設けましょう。
いまの事業における長所や短所を分析し、なぜ事業が軌道に乗っているのか、競合と比べて自社が優れている強み=ストロングポイントを洗い出しましょう。どのように優れているのか分かれば、ストロングポイントを活かす新規事業を検討することで、今のリソースや経験を生かしたアイデアを出しやすくなります。
この際に活用できるフレームワークとして、バリューチェーンが挙げられます。バリューチェーンとは、サービスや商品が顧客の手元に届き、利益になるまでの過程を、主活動と支援活動の2つの視点から情報を分析する手法です。
実施することで、事業にとって失敗要因となっている弱みを洗いだすことができます。最終的に何が顧客にとって付加価値となって、商品・サービスの選択につながっているのかを探ることが可能です。
すでに提供しているものや、他社が提供しているサービスや商品をかけ合わせてアイデアを生み出すのも手です。たとえば映画やアニメをインターネット配信するサブスクリプションサービスは、既存のサービスを組み合わせたアイデアの一つといえます。まずは気軽に、自社や他社といった区分にとらわれず、要素を組み合わせてみるのもおすすめです。
この既存の要素のかけ合わせは、次に解説する「不満や不平など不のつくものを見つける」という手法においても役立ちます。たとえば「この商品のここが不満」というニーズを見つけた際に、既存の技術で解決できたとすれば、不満を解消する付加価値が生まれるからです。
自社の技術や強みを、不平や不満、不公平、不便といった「不」のつくものを解決するために使えないかという視点から、アイデアが生まれることもあります。実際にサービスや商品を使っている人から話を聞いたり、お客様相談室に寄せられた意見から情報を吸い上げたりすることで、ヒントを見つけやすくなります。
この際に、感情面についても情報収集を行ってみましょう。たとえば不満と一口にいっても、こだわりがあるからこその不満や怒りをもとに生まれた不満など、さまざまな不満があるためです。
ゼロからアイデアを生み出すことにこだわらず、急成長している企業の成功事例を国内外問わずに広く集め、参考にしてみましょう。成功事例から情報を得ることで、市場環境が似ているのであれば、新規事業が成功する可能性が高くなります。
また、成功事例に参考にできる情報があれば、新規事業を今行うべき説得力や裏付けになるエビデンスを、探しやすくなるのもメリットです。国内だけでなく、市場が似ているのであれば海外の情報も積極的に収集してみましょう。
とにかく新規事業に関する情報をたくさん得たい、できる限り多くのアイデアが欲しいという場合には、社内だけでなく社外から発想を得るのも手です。たとえば、次のような方法が挙げられます。
賞金が出るアイデアコンテストを開催する
新規事業支援のコンサルタントへ相談する
新規事業担当者向けのワークショップへ参加する
興味を持った分野のSNSのグループなど社外コミュニティへ参加する
ワークショップや社外コミュニティへの参加は、普段接することがない業務に携わる人や他業界の専門家と、直にやり取りできるメリットがあります。普段の業務だけでは見つからないアイデアを思いついたり、発想を得たりする可能性が高まるでしょう。
また自社にない技術を利用したい場合や、現状のデータでは新規事業にかけるコストの予測が難しい場合に、具体的なアドバイスを求められるコンサルタントを活用するのもひとつです。リスクを抑えながら計画を立てたい場合にも、経営戦略などを得意とするコンサルティング会社を利用することで、リスク回避にもつながります。
アイデアを思い付いただけでは、新規事業は形になりません。そこで成功に導くためのポイントを4つ紹介します。
まずは、立ち上げるまでの流れを把握しておきましょう。実際に新規事業が軌道に乗るまでには、大まかに次の7つのステップを踏みます。
アイデアを創出する
ターゲットとするマーケットを調査
事業に関する理念やビジョンを明確にする
仮説と検証を行う(試作開発やデモンストレーション)
事業計画を策定
資金調達を行う
行動計画を策定し実行
新規事業の立ち上げにおいて、アイデアの創出は重要なポイントです。今回紹介したアイデアの出し方を参考にしつつ、柔軟に幅を広げていきましょう。
新規事業の立ち上げにおいて、どのような顧客を獲得したいのかターゲットを絞ることが大切です。ターゲットが絞れていないと、女性向けの食器ブランドを展開するにもかかわらず、Web広告に男性へ広く知らしめる要素を盛り込んで出稿することにもなりかねません。
どのような人に顧客になってもらいたいのかデータを絞り込むことで、サービスや商品の提供方法を検討しやすくなります。また、共感を呼ぶ表現を考えたい場合には、ターゲットになりきる方法も挙げられます。単身赴任者や食器好きの人など、ターゲットとなる消費者の立場になって考えることで、より必要な商品やサービスのアイデアが思いつくかもしれません。
新規事業を立ち上げたあとで、成功した場合にはどのような成果がもたらされるのか、未来像をチーム内で共有しましょう。未来の成功を思い描くことで、何のために新規事業を立ち上げるのか明らかとなり、企業内での価値を把握できます。
また、商品やサービスがどのように軌道に乗り、売上を伸ばしていくのかを想像することも大切です。もし想像できなければ、新規事業の立ち上げに落とし穴がある可能性も考えられます。
今あるデータを活用できる既存事業と異なり、新規事業にはゼロから1を生み出すアイデアの創出が求められます。利益を上げることは同じであっても、求められるスキルが違うため、適したスキルを持つ人材をチームに配置することも大切です。
新規事業を立ち上げるのに必要とされるスキルには、次の4つが挙げられます。
目的やビジョンを明確にする「言語化」
成功事例などを集める「情報の収集」
チームを率いる「リーダーシップ」
経営陣や他業種へも働きかけるための「プレゼンテーション」
新規事業で新たな業界へ参入する場合は、どういった類似製品があるのか、競合他社はどのように課題解決に取り組んでいるのかなど、幅広い情報を集めなければなりません。集めた情報はチーム内で共有することも大切なため、自分だけが分かっている状態から、みんなが分かる状態に言語化することも必要です。
新規事業に取り組む人材が複数いる場合は、チームを率いるリーダーシップも求められます。そして新規事業を実現させるためには、経営陣や現場、他業種など、説明する相手に合わせたプレゼンテーションを行う能力も必要です。複数人でそれぞれのスキルに対応するか、社内では難しい場合は外部リソースを活用することも検討していきましょう。
アイデアを生み出すためには、どのような新規事業が実際に成功しているのか知ることも大切です。ここで、情報収集の一助となる新規事業のアイデア例を4つ紹介します。
コロナ禍の影響や働き方の変容により、自宅から商品を購入できるネット販売は、多くのビジネスチャンスを生み出しているアイデアです。ネットショップでは、現地の店舗を訪れなくても、実際に商品が手に入ります。また自社が作り出したデジタル商品として、たとえば写真や音楽データ、服の型紙などを販売することも可能です。
他にも、ネット販売を手助けしてくれるサービスも展開されています。欲しい人がいることは分かっていても、手元まで商品を届けるノウハウがない場合は活用してみましょう。
スタッフが店舗にいて商品を販売するのではなく、タッチパネルやリモート接客により、複数の店舗を少数のスタッフで対応できるようにする仕組みを作るのも手です。スタッフ側においても、接客をリモートで行うことができれば、在宅のまま継続して働ける側面も持っています。
また、従来であれば対面で契約を行っていたサービスを、リモートで会話しつつオンライン上で行える仕組み作りも、新規事業になり得ます。利便性にメリットを感じ、自社を選んでくれる顧客が増える可能性があるためです。
この技術が欲しいけれど伝手がない、こんな人材が欲しいけれど見つからないなど、「探しているけど見つからない」という需要同士を繋ぎあうマッチング事業も、アイデアとして検討してみましょう。たとえば、次のようなアイデアが実現されています。
「商品を売りたいけど売る場所がない人」と「場所」
「ハイクラス求人を探している人」と「特定のスキルを持つ人材を探している企業」
「学びたい内容の勉強先が見つからない人」と「教えられる人」
「ペットの預かり先を探している人」と「一時的に預かれる人」
自社が持つ伝手やサービスそのものが、他の企業にとっては重要な情報ということもあります。自分たちが過去に困ったことをもとにして、解決策を講じるためのサービスを検討するのもひとつの方法です。
「自分でやると面倒だけれど、人にやってもらうのであれば価値がある」と感じる物事を探り、サービスを検討する方法です。経済面にゆとりがある人をターゲットとすることで、より価値があると感じてもらえるニーズに気付きやすくなります。医師や資産家といった個人の顧客だけでなく、大手企業や外資系企業もその対象です。
たとえば紙の名刺のクラウド化を代行できるサービスや、資産家を対象としたサービスを提供したい企業の自社サイトへの誘致の代行などが考えられます。さまざまな「自分では面倒」の解決を目的としたサービスを、新規事業として展開することでより多くの売り上げを目指せる可能性があります。
アイデアの例や参考事例を集めたら、自社に合わせた新しいアイデアを生み出すためにフレームワークを活用してみましょう。ここでは、おすすめのフレームワークを4つ紹介します。
マンダラートは3×3のマスを描き、中央のメインテーマから派生したアイデアを書き込むことで、テーマに関連したアイデアを生み出すフレームワークです。メインテーマを固定させることで新規事業の目的が明確になり、テーマを派生させるように書くため目標達成までのプロセスを具体化できます。
マンダラートのメリットとして、視覚的に思考やアイデアを整理しながら、より多くのアイデアを生み出せることが挙げられます。8つのマスに記入したメインテーマから派生したアイデアを、別の3×3マスの中央にメインテーマとして配置することで、関連したアイデアをさらに生み出すことも可能です。
最終的にすべてのマスを埋めることができれば、合計で64個のメインテーマに関連した情報を整理できます。
新規事業は必ずしも成功の連続とは限らず、失敗により目的や未来像、ビジョンが途中で分からなくなってしまうことがあります。事業を進める指針となる自らの意義や役割を定義し、チーム内で共有しあうビジョンを明確にするために活用できるのが、ミッション・ビジョン・バリューというフレームワークです。
考えるポイント | 意図 |
ミッション | どうしてこの事業を行うのか、企業としての使命や目的を定める |
ビジョン | 企業として到達したい目的、将来像 |
バリュー | メンバーが共有する価値や判断基準 |
ミッション・ビジョン・バリューを共有しあうことで、経営陣と現場のすれ違いを埋めながら、実際に行動を起こす際の判断基準の元にもなります。目標が分からなくなったときや方向転換が必要になったときに、あらためて立ち返れるように新規事業に取り組むチーム内で共有しあうことも大切です。
ブレーンストーミングを考案したアレックス・F・オズボーンが制作した、アイデアを9つの視点から多角的に検討するためのチェックリストです。既存事業から新しいアイデアの創出を行うときや、他の業界が課題解決に成功した事例を自社に適用できるか考える際にも利用できます。
9つの観点にはそれぞれ問いかける意味があり、次のように考え方を変えることでさまざまな業種で利用できます。
問いかける観点 | 意味 | 自社に合わせた考え方をした例 |
転用 | 他の使い道はあるか? | 他のものに置き換えられないか? |
応用 | 真似できないか? | 他社が似たものをつくれるのか? |
変更 | 変えてみるとどうなるのか? | 色や形、順序、大きさなど要素を変えるとどうなるのか? |
拡大 | 大きくするとどうなるのか? | 長さを長く、厚みを厚くなど大きさを変えることはできるか? |
縮小 | 小さくするとどうなるのか? | より短く、さらに軽くなど小さくしていくことはできるか? |
代用 | 他に代用できるものはないか? | 違う素材で代用できないか? |
置換 | 入れ替えてみたらどうなるか? | 要素を違う順番で使えるか? |
逆転 | 逆にしても利用できるか? | 役割を反対にすることはできるか? |
結合 | 組み合わせたらどうなるのか? | 2つの要素を組み合わせられないか? |
外部要因と自社の状況を分析して明確化することで、新規事業の方向性や基本方針を見つけ出すためのフレームワークです。3Cとは、顧客、競合、自社という3つの観点を指します。それぞれの観点から情報を分析することで、成功要因(KSF)を見つけ出すことが目的です。
まず、顧客について分析を行います。今の市場環境や顧客の情報を広く分析するために、外部環境に「PEST分析」、業界が自社の新規事業へ与えうる影響やリスクを検討する際に「ファイブフォース分析」が用いられることが多いです。
続いて、判明した市場のリスクや顧客ニーズの変化を「競合はどのように解決しているのか」に注目し、情報収集して分析します。これは自社と競合の違いを明確にし、どういった仕組みで差別化が図られているのか明確にするためです。
そして2つの分析結果をもとに、自社が事業で成功するための成功要因を導き出します。優位性を持てる要素と、反対に弱点になりうる要素を見つけ出すために、強み、弱み、機会、脅威の4つの観点から分析する「SWOT分析」が用いられることが多いです。
自社の資金だけでは新規事業の立ち上げが難しい場合には、助成金や補助金を活用することも検討してみましょう。ここでは2つの助成金と補助金を解説します。
伝統技術や農林水産物を活用し、地域貢献できると思われる事業を展開する際に利用できる助成金が、地域中小企業応援ファンドです。主に研究や商品開発、需要開拓のために使われる費用に対し、助成金が支給されます。
原則として返済する必要がなく、ファンドによっては数年かけて資金を助成してくれる場合もあり、事業内容に合わせて選べるのが特徴です。たとえば中小企業で「地域の特産野菜を使った商品開発を行いたい」といった場合に、助成金を受け取れる可能性があります。
中小企業庁が地域の活性化などを目的に制定した、特定創業支援事業を受けて創業することで、会社の創設に関する登録免許税や、定款認証費用に係る手数料が対象となる助成金を受けられます。特定創業支援事業を受けることで、日本政策金融公庫の要件拡充や貸付利率の引き下げを適用してもらえるなど、助成金以外のメリットも多くあるのが特徴です。
注意点として、市区町村によって創業支援事業計画が異なる点が挙げられます。まずは創業を希望する地域の市区町村では、どのような創業支援事業計画になっているか確かめてみましょう。
新規事業の立ち上げを行う際に、オリジナリティーのあるアイデアを出すことは計画の第一歩です。しかし、アイデアがなかなか出ずに詰まってしまうと、時間ばかりが過ぎていくこともままあります。
今回紹介したように、アイデアの出し方はさまざまです。フレームワークの活用や外部からの発案など、チーム内だけで悩まずにすむ方法がいくつもあります。ツールも活用しながら新規事業のアイデアを創出し、行動を次のステップへと進めていきましょう。
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