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【専門家監修】新規事業向け計画書のテンプレートを紹介!作成のコツもチェック

新規事業の担当になり、計画書を作成することになったものの、どのように書いたらいいのか分からなくて困っていませんか。本記事では、新規事業の計画書の記載事項や、作成・プレゼンのコツなどについて紹介するので、ぜひ参考にしてください。


\この記事は、専門家監修のもと制作しています/


本記事の監修者
Seven Rich会計事務所/日野 陽一(ひの よういち)

2011年に青色申告会に入社。2015年に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ東京事務所に入所。金融機関の法定監査などに携わる。2018年からはSeven Rich会計事務所に勤務し、ベンチャーやスタートアップ企業を中心に資金調達やIPOの支援、税務申告のサポート等を行っている。


新規事業の計画書を作成することになり、どのように書いたらいいのか分からず困っていませんか? 新規事業の計画書を作成する目的は、多くの場合、事業の実施について決定権のある経営陣や管理職、またはお金の出し手である金融機関などに読んでもらい、ゴーサインを出してもらうことです。

本記事では、新規事業の計画書に記載するべき項目や、読み手に納得してもらう作成の仕方、プレゼンテーションのコツについて解説するので、ぜひ参考にしてください。


3種の新規事業向け計画書のテンプレート

計画書の様式は、提出先で指定されていない限り、特に定まったものはありません。しかし、記載しておいたほうがよいものはあります。

そこで、新規事業の計画書にはどのようなことを記載すればいいのかを、提出先別に3パターン紹介します。


社内で提出する計画書のテンプレート例

社内向けの計画書は、経営者や管理職などの人たちの意思決定を助けたり、新規事業に関わるチームの人たちの間で、共通意識を作ったりするために作成します。記載項目は、次のようにするとよいでしょう。

  • 表紙

  • 目次

  • 会社概要

  • 創業者・経営者のプロフィール

  • 新規事業の概要・コンセプト

  • 新規事業のビジョン・理念・目的

  • 解決すべき課題

  • 自社のサービスや商品の強み・特徴

  • 市場環境・競合

  • 新規事業の事業戦略

  • 新規事業の販売・マーケティング戦略

  • スケジュール

  • 生産方法・仕入先

  • 売上・費用・利益・資金調達

  • 課題・リスク


金融機関へ提出する計画書のテンプレート例

金融機関向けの事業計画書は、事業資金の融資を受けるために作成します。記載項目は、次のものが挙げられます。

  • 表紙

  • 目次

  • 新規事業の概要・コンセプト

  • 新規事業のビジョン・理念・目的

  • 解決すべき課題

  • 自社のサービスや商品の強み・特徴

  • 市場環境・競合

  • 新規事業の事業戦略

  • 新規事業の販売・マーケティング戦略

  • スケジュール

  • 生産方法・仕入先

  • 売上・費用・利益・資金調達

  • 課題・リスク

金融機関のなかには、京都銀行のように経営(事業)計画書のテンプレート(書式)を用意しているところもあります。融資を受けたい金融機関の相談窓口に確認してみるとよいでしょう。


国や自治体へ提出する計画書のテンプレート例

国や自治体など行政機関向けの計画書は、助成金、補助金、公的融資を受けるために作成することが多いです。この場合の記載項目は、金融機関向けの計画書とほぼ同じです。

日本政策金融公庫が用意している事業計画書のフォーマットや、中小企業庁が実施している事業再構築補助金の事業計画書の採択事例が参考になります。

また、法令などに基づいた手続きを踏むために作成しなければならないこともあります。この場合は、マニュアル(要綱、事務要領など)を確認し、不明な点は行政機関の担当部署に相談しながら記載しましょう。


新規事業向け計画書の基本

新規事業の計画書は、ひとたび事業開始にOKが出れば、人や組織、お金がそれに基づいて動き出すため、非常に重要な文書です。そこで、新規事業の計画書を作成する際の基本的なポイントを3つ紹介します。


新規事業のネタ探しはゼロから始めない

新規事業のためのネタ探しやアイデア出しをするときは、問題意識を持ちながら、情報をたくさん集めてみましょう。具体的には、次のことをピックアップしてみるとよいでしょう。

  • 自分自身が困っていることは?

  • 自分の周りの人たちが困っていることは?

  • 世間一般の人たちが困っていることは?

これらのことをメモに書いて可視化・整理し、ときにはリラックスしたり、環境を変えたりしながら思考を続けましょう。一定の枠組み(フレームワーク)のなかで考えたほうが検討事項に漏れが生じにくく、考えがまとまりやすくなります。

他業種の成功例や、既存事業の組み合わせを変えてみることなども、足がかりになります。流行・トレンドも参考になりますが、新規事業が軌道にのる前に陳腐化する可能性があるので注意が必要です。

りそな銀行りそなCollaborare)の「資金調達につながる事業計画書の書き方(2021年1月時点)」も参考になるので、ぜひ参照してください。


計画書の作成はスピード勝負

新規事業のアイデアが固まったら、できるだけ早く事業計画書を作成しましょう。過去の売上実績や天候、関連イベントの開催状況なども考慮し、タイミングを逃さないようにしてください。

作成に時間をかけすぎてしまうと競合に先を越されたり、分析した情報が古くなったりしてしまう恐れがあります。


複数の仮説に応じた計画書作り

新規事業の場合は、計画通りに推進できるとは限りません。どのような状況になったら、どのタイミングで、どのように方向転換するのかなど、複数の仮説を検討して事業計画書に記載しておきましょう。

また、複数立てた仮説をチーム内で共有しておくことも大切です。特に、事業に多額の投資がかかっていると、方向転換するタイミングを見誤ることがあります。なし崩し的に方向転換すると、チームの足並みがそろえられなくなり、悪循環に陥る恐れがあるため、注意しましょう。


承認される新規事業向け計画書を作成するコツ

新規事業の計画書を作成したら、会社の経営陣や関係者、金融機関の担当者などに読んでもらい、事業開始や融資などのゴーサインを出してもらう必要があります。この章では、承認を得やすい計画書作成のコツを紹介します。


内容が簡潔にわかるタイトル付け

タイトルは1行程度で、どのような事業なのかが端的にわかるように付けましょう。単に「企画書」「事業計画書」のように抽象的なものや、長々としたものにすると、読み手に「つまらない」「読むのがめんどうくさい」などと思われてしまいます。

また表紙には、キャッチコピーやロゴ、イラストを入れて、読み手が思わず読みたくなるような、新規事業に興味を持ってもらえるものにしましょう。スライドの場合は上部にタイトルを入れるのがおすすめです。


納得できる新規事業への挑戦理由

新規事業を立ち上げる理由について、説得力のある説明をしましょう。理由の説明は、外的要因と内的要因に分けると整理しやすくなります。

外的要因は、法律、技術、業界、競合他社、消費者、トレンドなどの動向をふまえたもので、例えば次のような理由が挙げられます。

  • 法律の規制ができたため

  • 業界全体で部品の規格を統一させることになったため

  • 競合他社が値下げを実施したため

  • 消費者からの要望があるため

一方、内的要因は、自社の商品、サービス、技術力、人材、ネットワークなどをふまえたもので、以下が一例です。

  • 自社で新たに開発した技術を取り入れたいため

  • 自社に新たに入社した社員の知見を取り入れたいため

  • 自社の売上が下がっているため


新規事業の本質的な課題設定

新規事業を立ち上げて、売れるニーズがあるかを把握しましょう。

売れるかどうかは、新規事業によって顧客候補が抱える課題を、解決できるかが重要なポイントになります。「このような顧客の、このような課題を解決するには、この新規事業を立ち上げるしかない」というロジックを組み立てるとよいでしょう。

例えば、「集客が伸び悩んでいたものの、新企画を実施することによって競合他社の集客を超えられる」「現行品の陳腐化がみられたものの、新技術を取り入れることによって競合他社の製品の性能を超えられる」などといったものです。

また、課題を設定する際は、顕在的なニーズや課題はもちろんですが、潜在的なものについても調べる必要があります。


新規事業で勝算はあるのか分析

今から新規事業を立ち上げて、競合他社に勝てる根拠を示しましょう。特に新規参入する場合は、すでに競合が多いと、よほど独自性がなければ勝てる見込みは低いとみられます。

まずは競合他社で、すでに商品やサービスを提供していないかを確認しましょう。そして売上や経営状況などを調べて、新規事業によって競合他社の商品やサービスを超えられるという仮説を、論理的に説明する必要があります。


数字で新規事業の目標の設定

新規事業の目標は、まず抽象的な目標設定をします。それからアクションプランのレベルで抽象度を落とし、売上や集客数などの目標を数値化していくとよいでしょう。

先に抽象的な目標設定をするのは、より高いレベルで本当に達成したい目標を設定するためです。いきなり具体的な目標を設定しようとすると、現状から見て妥当な設定をしてしまいがちになります。


現実的な予算内・リソース内の計画

目標設定をしたら、その新規事業の立ち上げに必要となる予算や推進体制を検討します。人・組織・お金が社内のリソースだけで賄えるかを考え、不足する場合は、どの部分をどのようにして社外から協力を依頼するのかなど、現実的な計画を立てましょう。

検討事項は次の通りです。

  • 初期投資(イニシャルコスト)はどのくらいの規模になるか

  • プロジェクトチームにどのようなメンバーを集めるか

  • 部門間連携は必要か

  • 社外のリソースは必要か


計画書の作成時点で判明しているリスクの分析

新規事業を立ち上げることによって起こりうるリスクを洗い出しておきましょう。新規事業に関するリスクだけでなく、自社の既存事業に悪影響が出ないかも想定しておきます。

リスクの洗い出しをしたら、それぞれのリスクに対して評価し、対応策を検討します。リスクの分析や対応策が想定されていることで、経営陣や関係者などからゴーサインを得やすくなるでしょう。

リスク分析についてさらに詳しく知りたい方は、SOMPOリスクマネジメントの「総合リスクマップ-リスク洗い出し・算定・評価-」が参考になります。


新規事業向け計画書のプレゼンをするコツ

プレゼンのときに、計画書に書かれていることをそのまま説明しても、聞き手にうまく伝わらないでしょう。場合によっては新規事業にゴーサインが出ないこともあります。

この章では、「どうすれば話を聞いてもらえるのか」という視点から、プレゼンのコツを紹介します。


プレゼンを聞く人の知識に合わせた説明

聞き手に前提となる知識や経験があるかないかで、語り手が語ったことに対する理解度は変わってきます。そのため、聞き手によって使う言葉を変えることが大切です。

例えば、経営陣や社外の人に対しては専門用語の使用は避けたほうがよいです。しかし社内の同じ部門で働く人であれば、むしろ使ったほうが伝わりやすいということもあります。

また、プレゼンの持ち時間を有効に使うためにも、聞き手によって構成を変えましょう。

例えば、経営陣に対しては、一番気になるテーマであろう「新規事業でどのようなことをするのか、それによってどのような効果があるのか、儲かるのか、競合に勝てるのか」に重点を置いた構成にしたほうが、聞き手にとっても語り手にとっても効率的かつ効果的です。

特に、社内でのプレゼンの持ち時間は、聞き手が上層になるほど短くなる傾向があるため、10~15分程度でシンプルながらも強いインパクトを与えられるプレゼンができるようにシミュレーションしておきましょう。

プレゼン資料を内容別や項目別にユニット化し、リンクボタンなどを活用して任意のページに飛ばせるようにしておくと、聞き手に合わせて現場で調整できるのでおすすめです。


スライドに情報は詰め込まない

レゼン資料の文字数を減らし、図やグラフなども入れて、視覚的にすっきりしたものを目指しましょう。資料は短時間で理解してもらえる量にまとめて、実際にプレゼンするときにポイントを自分の言葉で話すほうが効果的です。

さまざまなことを伝えたいあまりに、いろいろな情報を詰め込んでしまいがちですが、たくさん情報を詰め込んでも読んでもらえないでしょう。

プレゼンは、理解してもらうことそのものが目的ではありません。新規事業にゴーサインを出してもらうことこそが目的であることを意識して、資料づくりに取り組みましょう。


プレゼン前に根回し

根回し」というと、ネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、新規事業の立ち上げには多くの関係者や部門が関わるため、事前に説明をして、了解を得たり、ときには味方になってもらうことも必要です。

根回しの方法は次の通りです。

  1. 根回しの目的を明確にする

  2. 根回しをする相手、順番、方法を決める

  3. 根回しの相手に計画書の内容を説明する

  4. 説明後に根回しの相手から要望を聞く

特に、反対しそうな人がいる場合は、その人に対して強い影響力を持つ上司などに、先に話を通しておくとよいでしょう。


新規事業向け計画書の気になる疑問

最後に、新規事業向け計画書に関するよくある3つの疑問にお答えします。


既存事業の計画書と何が違うのか

既存事業は、これまでの実績をふまえて計画書を書くことができます。しかし新規事業の場合はそれがないため、アイデアベースで記載することになるのが一般的です。

そのため新規事業の計画書は、客観的なデータや分析の結果、売れる仕組み、長期的なビジネスプロセスをどのように裏づけるかなどについて、論理的に説明できるかが問われます。


計画書はA4用紙1枚でも十分か

新規事業の内容やボリューム、計画書の提出先・提出目的にもよりますが、計画書はA4用紙1枚で十分なケースもあります。そのメリットは次の通りです。

  • 1枚で全体が俯瞰して見える

  • 結論が明確になる

  • 作成・プレゼンの手間が省力化できる

  • 読み手の負担にならない

  • 保管しやすい、かさばらない

複数ページで作成しなければならない場合でも、全体像をわかりやすく説明するために、計画書の本冊とは別に、新規事業の概要をA4用紙1枚にまとめておくとよいでしょう。


計画書の作成で役立つフレームワークはあるか

フレームワークとは枠組みのことです。新規事業を企画する際にはアイデア出し、外部環境や内部環境の調査・分析、リスクの洗い出しなどを行います。その際は、一定の枠組みやパターンに沿って行ったほうが、調査・検討事項に漏れが出にくく、思考や分析がまとまりやすくなります。

計画書の作成で役立つ代表的なフレームワークには、次のようなものが挙げられます。

計画書作成上のプロセス

フレームワーク

概要

アイデア出し

マンダラート

3×3の9つのマスを書いて真ん中にテーマを記入し、そのテーマに関連するアイデアを周囲に書き込む

同上

SCAMPER(スキャンパー)法

Substitute(代用)、Combine(結合)、Adapt(応用)、Modify(修正)、Put to other uses(転用)、Eliminate(削減)、Reverse・Rearrange(逆転・再編成)の7要素で発想を促す(SCAMPERは、上記7項目の頭文字)

同上

5W1H/6W3H

5W1H/6W3HWhat(なにを)、Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって)の6要素で発想を促す(6W3Hは、上記6要素にWhom(だれに)、How many(どれだけ)、How much(いくらで)の3要素を付け加える)

同上

ペルソナ分析

実際にその人物が実在しているかのように、年齢、性別、居住地、職業、ライフスタイルなどリアリティのある詳細な情報を設定する

マーケティング戦略の企画・立案

PEST分析

Politics(政治的要因)、Economics(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)の4要因から外部環境を分析する

同上

3C分析

Consumer(顧客・市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3要素から自社の経営環境を分析する

同上

5フォース分析

競争業者、新規参入業者、代替品、売り手、買い手の5要素から自社をとりまく環境を分析する

同上

SWOT分析

自社がコントロールできない外部環境のなかにある機会(Opportunity)を捉えたり、脅威(Threat)に立ち向かうために、自社の持つ強み(Strength)や弱み(Weakness)をどのように活用していくかを検討する


テンプレートを活用し新規事業の計画書を作成

新規事業の計画書には、事業を無事に立ち上げたいという気持ちから、あれもこれも書いておきたいと考えている人も多いと思います。しかし、新規事業の計画書を作成する目的は、あくまでも経営陣や管理職、お金の出し手に「なるほど、これならやってよい」とゴーサインを出してもらうことです。

計画書を作成する目的を念頭に置きながら、本記事で紹介した記載すべき事項やポイントをおさえて、読み手・聞き手に強いインパクトを与えられる計画書を作成してください。



本記事の監修者
Seven Rich会計事務所/日野 陽一(ひの よういち)

2011年に青色申告会に入社。2015年に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ東京事務所に入所。金融機関の法定監査などに携わる。2018年からはSeven Rich会計事務所に勤務し、ベンチャーやスタートアップ企業を中心に資金調達やIPOの支援、税務申告のサポート等を行っている。


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