新規事業の企画書作りでお困りではありませんか。この記事では、作成時の6つのポイントや提案パターン別のテンプレートなどを紹介します。企画書作りで悩んでいて、何から手を付ければいいか分からないという方におすすめです。
新規事業の企画書を作ることになったものの、「何から考えればよいのか分からない」「いったい何を書けばいいんだろう」など、どこから手を付ければよいか分からずに困っていませんか。
本記事では、新規事業の企画書を作るためのポイントや提案パターン別のテンプレート、新規事業のネタ探しに役立つ方法などを解説します。
既存事業の企画書を作る場合と比較して、注意するべきポイントについても解説するので、新規事業の企画書作りでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
新規事業の企画書を作る6つのポイント
新規事業における企画書とは、「何をいつまでにやり、どのように事業を軌道に乗せるのか」を示す設計図のようなものです。ここでは企画書作りのための6つのポイントを解説します。
新規事業を始める理由の説明
なぜ新規事業を企画したのか、どうして今でなくてはならないのかなど、理由を説明することで、多くの人に賛同を呼びかけやすくなります。
しかし、ただ理由をまとめるだけでは「なぜ当社がこの事業を行うのか?」という根幹に結びつきません。内的要因と外的要因の2つの視点から文章を作成していくことで、意思決定者に同意を求めやすくなるでしょう。
外的要因として、政治・経済や法律の変化があげられます。業界や競合企業の動向がこれまでとは異なる場合も、新規事業を立ち上げる要因です。顧客側が求める新たなサービスが必要になった場合も、外的要因として検討できます。
一方、内的要因は、自社において「新しい技術の開発が行われた」といった技術的なものや「取り入れたい資格や技能を持つ人材がある」といった人材的な面があげられます。両方の情報を考慮したうえで「この新規事業を今立ち上げる理由」を明確に説明しましょう。
新規事業が解決するべき課題を設定
課題の立て方は、解決したいことを見つけ出すことだけに限りません。課題を明確に定義する過程で、本質的な課題を分析してみてください。潜在的な課題も見据えることで、新規事業を立ち上げることにより、どのように課題解決につながるのか、具体的に企画書へ盛り込むことができます。
手法として、次の2つがあげられます。
方法 | ポイント | 注意点 |
課題を決めてその範囲で設定する方法 | 今解決したい課題に向けて何をすべきか考える | 別の課題を見落とす可能性がある |
問題を探索し、より広く検討して設定する方法 | 1つの課題に「なぜ?」を繰り返し問いかけ、今の事業における別の切り口や捉え方を見つけ出す | データを一から収集するため、方向性を定めるまでに時間がどうしてもかかる |
2つの考え方はどちらが良いというものではなく、組み合わせて使うことでより課題を設定しやすくなります。今の事業とは異なる切り口や捉え方から、解決したい課題に向けてどうすべきか問うことで、新規事業実現のための課題が見つかりやすくなるためです。
参入予定の分野の現状を把握
新規事業を実施する目的と課題が定まった段階で、参入予定の分野について現状を把握しましょう。今後の目標設定の際に、どのような観点から評価を受けるのかや競合の数、分野としての将来性などを理解する必要があるためです。
例えば、新規事業でスーパーの分野へ参入を考えた場合は、大手との競争の激しさを乗り越え、顧客満足度を高めるための方法など、さまざまなハードルがあります。こうしたハードルの高さは新規事業の失敗要因にもなりうるため、入念に調べましょう。
わかりやすい形で目標の設定
目標は可能であれば、売上や集客数といった数字化できるものがデータとして共有しやすいでしょう。成果を評価する際にも分かりやすくておすすめです。
抽象的な目標を設定してしまうと、最終的なゴールが関係者の間で共有されず、達成したか分からなくなってしまいます。
また、複数の関係者が関わる場合は、1つの目標をさらに分解し、メンバーごとに振り分けることで可視化するのも手です。
目標達成に必要な予算やリソースの予測
新規事業が達成すべき目標が決まった段階で、必要な予算やリソースの予測を立てましょう。予算はそれ自体が達成すべき目標となるだけでなく、関係者と共有すべき計画の1つでもあります。
過去の実績から原価や売上高を計算する
人件費や一般経費など経費を計算する
目標とする利益を計算する
こうした内容を検討したうえで、目標利益のほか、節約できそうな費用や変動が起きる可能性がある経費を計算し、予測を立てます。
また新規事業の内容によっては、その分野に詳しい専門家と協力するなど、人的リソースが必要になるかもしれません。新規事業のメンバーを決める際は、社内のみで取り組むのか、外部とも協力するのかを基準に決めましょう。
企画書の提出段階で判明しているリスクの分析
新規事業を立ち上げる際にリスクはつきものです。企画書の段階で分かるリスクや、失敗につながりかねない状況は明確にしておき、ネガティブな部分も提案時に説明できるようにしておきましょう。
新規事業のリスクには、既存事業との兼ね合いも含まれます。たとえば定期的に消費される日用品の場合は、1つの新規事業でついたイメージが既存事業にも影響します。よって、他の商品の売り上げも落ちてしまうかもしれません。
また、リスクを把握することで、実際に新規事業をプレゼンする際に、相手から質問されたときの対応にも役立ちます。直接的に関連する部分や、意思決定を行う経営陣が気にしそうなポイントに絞って分析しておきましょう。
【パターン別】企画書のテンプレート
企画書はいつ、どこで、誰に、何のために読んでもらうかによって、注目したいポイントが異なります。ここでは3つのパターン別に、企画書のテンプレートを紹介します。
社内向けの新規事業の企画書
社内に向けて新規事業の企画書を提示する場面として、次のようなパターンが挙げられます。
新規事業に携わる従業員同士のビジョン共有
経営者から決裁を得たい
したがって盛り込みたい内容としては、次のような項目があげられます。
企画書のタイトル
新規事業が必要な背景・社内の状況
具体的な新規事業の概要
実現させるための具体的な手段と目標
現状のリソースと予算の予測
リスク分析
融資のため金融機関に提出する企画書
資金調達を行う方法として、金融機関や投資家から融資を受ける方法があります。このパターンでは、企画書は確実性や将来的な事業の展開、確実な返済が見込めるかどうかを示す根拠となる資料です。
したがって、次のような項目で企画書を構成し、納得してもらえる資料に仕上げていくことが重要です。
事業の名称
現時点での自社の基本情報
新規事業の概要とビジョン、理念
自社ならではの強み
市場の今や競合他社の動き
事業で達成したい目的
事業を軌道に乗せるまでの売上・費用・収益の予測
現時点での自社の財務状況と融資による効果
リスク分析
社内向けの企画書と異なるところは、返済能力があるかを示す項目が含まれる点です。
補助金申請のため提出する企画書
融資を得る方法として、国や地方自治体、財団などが企業に向けて支給する補助金を申請するという手もあります。
このパターンの場合は、企画書の事業目的が補助金の内容に適切なものなのか、必要な項目が企画書に盛り込まれているかが重要です。なぜなら、補助金はそれぞれ個別に目的があり、その趣旨に合う事業が対象として支給してもらえるからです。新規事業としては見込みがあっても、制度の趣旨にそぐわない場合はそもそも審査に進めません。
そのため補助金を利用する際は、まずその補助金を支給する機関の指定した様式があるか探しましょう。なかった場合は、制度に沿った事業で融資を受けることを念頭に置いて、必要とされる内容を元に構成します。
事業の概要
補助金の制度に合致していることの説明
補助金の利用先
金額の算出根拠となるデータや顧客のニーズ
売上や費用、収益の予測
現在の自社の財務状況と補助金による効果
リスク分析
特に補助金をどのように使うのか、どのように事業を進めていくのかについては、詳しく求められる傾向にあります。審査を行う担当者が必ずしも事業の分野に詳しいとは限らないため、専門的な内容については具体的な説明を盛り込みましょう。
企画書作成のため新規事業のネタを探す方法
どんなに良い企画書を考えようとしても、なかなか新規事業のネタが出てこないことがあります。そこで、新規事業のネタ探しの方法を3つ解説します。
既存のものの組み合わせを検討
ゼロの状態から新規事業の案を検討するのは、既存事業と並行して進められることも多く、とても困難な業務です。そこで現状を把握し、情報や改善点の整理や問題点を整理したうえで、今までにない組み合わせを検討する方法も有効でしょう。
既存のものを組み合わせる方法を検討する際は、今の事業を取り巻く営業先や自社内の人材に話を聞くのも手です。
新規事業を立ち上げる場合は、他企業との関係や人材との関係も重要な情報源となります。例えば、他の会社に勤務経験のある社員と話をすることで、既存のものの組み合わせを検討しやすくなるかもしれません。
他業種の成功例を参考
自社においては取り組んでおらず、他業種では成功しているビジネスモデルを参考にするのも、新規事業のネタ探しに結びつきます。
例えば、月額制でサービスを自由に利用できるサブスクリプションや、商品をネット上で販売できるオンラインショップは、ビジネスモデルとして成功を収めています。事業として立ち上げるまでのノウハウも蓄積されており、情報収集も行いやすいです。
しかし、成功したビジネスモデルであっても、業界が変われば新たな需要につながる可能性があります。自社の既存サービスに、新たな付加価値を見出せるかもしれません。
ただし、これまで同じ業界内で提供されていないビジネスモデルに挑戦する場合は、コストが掛かりすぎるなど何らかの落とし穴がある可能性が考えられます。よって仮説や下調べをじっくりと行うことが大切です。
最新の流行や不平不満を調査
自分が日常生活で悩んでいることや困っていることを、ジャンル別に書き出してみましょう。
自分が困っていること・悩んでいることを解決する商品を作り出すことで、同じ悩みを持つ人の助けになりたいというメッセージを、消費者へストーリーとともに訴えかけることができます。
また、作り出した商品が解決する悩みに共感する人が多ければ多いほど、その商品が売れる市場も広くなります。新規事業を成功に導くためには、市場価値の有無も重要です。同じようなサービスを元に、多くの人が不満に思ったり、悩んだりしていることを調べるのもよいでしょう。
ただし、昨日までSNSで大勢の人が話題にしていたことでも、新たな話題が出ればあっという間に下火になることもあります。最新の流行や世の中の不平不満は、必ずしも普遍的ではないということに注意しておきましょう。
新規事業の企画書をプレゼンで通すコツ
新規事業について念入りに企画書を作り上げたとしても、プレゼンがうまくいかないケースは少なくありません。ここでは企画書をプレゼンで通すための4つのコツを解説します。
論点をまとめたシンプルな内容
資料を配布する場合は、論点をまとめてシンプルな内容を作ることが重要です。複雑な資料にしてしまうと、言いたいことが伝わらないばかりか、資料が印象に残らない可能性があります。
また、新規事業のプレゼンを行う相手は経営者であることが大半です。多くの新規事業案に目を通すことが想定される場合は、短時間で情報を判断してもらえるように、重要なポイントをはっきり伝えることがより重要です。
論点をまとめつつ、シンプルな内容にするには、次のようなポイントがあげられます。
重要な論点を先に伝える
過剰に資料に文字を詰め込まない
1つの話題につき1スライドをあてる
パワーポイントなら1文字28~40ptくらいの大きな文字
パワーポイントを使う場合は、文字を大きくすることで提示したい情報を絞り込むことができ、視認性が高くなります。分かりやすいプレゼン資料のテンプレートを参考にするのもよいでしょう。
相手が理解できる用語・内容で話す
情報を伝える相手によっては、専門用語をあえて使わずに分かりやすさを重視することで、よりプレゼン内容が伝わりやすくなることがあります。
例えば、直属上司に対するプレゼンの場合は、専門用語を使っても問題ないことが多いです。しかし経営幹部に対するプレゼンの場合は、専門用語が理解されず、企画の根幹が伝わらない恐れがあります。経営幹部向けには、新規事業が会社にどれほど貢献でき、今の課題を解決できる内容なのかなど、分かりやすく情報を提示することが求められるでしょう。
またプレゼンを行う際は、あくまでも話している内容の補足として資料を活用することが大切です。なぜなら、資料の内容を話すだけでは、聴いている側は担当者の意見や補足説明が得られず、印象が悪くなってしまいます。
プレゼンの時間は短くまとめる
プレゼンの内容は、長くとも10分程度で説明することを目指しましょう。経営幹部にプレゼンする場合は時間的な猶予がなく、自分に近しい上司やマネージャーほど時間をかけて説明を行えない可能性が高いです。
また、プレゼンの時間が長くなってしまうほど、伝えたい事業の核から話がそれる可能性もあります。新規事業の実現により、どのような課題が解決されるのか、そのためには何をしてほしいのかといった内容を優先して伝えるとよいでしょう。
事前に関係者へ根回し
新規事業を始める前に、関係部門の担当者・経営陣などの関係者や、利害と行動に直接関係するステークホルダーへの根回しも重要といえます。
関係部門へ優先的に根回しを進めていくことで、実際に事業を行う際に関係者の意向が反映された内容になりやすいです。さらに会議も「○○の解決に使うツールは候補のうちどれを選ぶか?」など、具体的な詰めを行えるようになります。
ただし、新規事業の場合は既存事業に比べて、誰が関係者に当たるのかが明確に分からないこともあります。そこで検討する事業を円滑に進めるためには、どの部門の誰に関わってもらうべきかについても検討しておきましょう。
例えば、新規事業の決裁や資金提供については、経営幹部が関係者に該当します。また各部門の長だけでなく、長く現場に携わっているベテランや、長期的に提携しているサプライヤーといった人たちが、関係者候補にあがる場合もあります。
新規事業の企画書を作る注意点
企画書を作り上げ、新規事業へ取り組むメリットを伝えるには、社内で行う既存事業の企画書とは異なる3つの注意点があります。
社内の事業企画書とは別物
新規事業の企画書と、社内の既存事業の事業企画書の違いとして、信憑性を問われる点があげられます。
既存事業の場合は実績や売上など、客観的に内容を示せるデータがすでにあります。企画書の段階でも実績を踏まえた提案が可能なため、事業を行うことで得られる利益や事業を行う根拠を、より具体的に提示できます。
一方、新規事業の場合は、これまでの事業で得た経験は活用できないか、ごく一部しか活用できないことも珍しくありません。したがって既存事業の企画書と異なり、信憑性が薄くなりがちです。そのため既存のデータをもとにした仮説やリソースの設定などを具体的に盛り込み、確実性をアピールできているか注意しながら進めることが大切です。
企画書を作るのに時間をかけすぎない
新規事業の企画書に時間をかけすぎた結果、他の企業に先を越されてしまったり、助成金申請に間に合わなくなることもあり得ます。
例えば、新規事業が夏向けの新商品である場合は、製品の需要が高まる時期に売り出すことが重要です。しかし企画書作りに時間をかけてしまうと、それだけ準備へ取り組む時期が遅くなり、夏に向けて売り出せなくなります。
新規事業の場合は、さまざまな課題や問題を分析する過程に時間がかかりがちです。問題解決のためのツール(フレームワーク)を活用して、情報整理を効率よく行いつつ、準備を進めていくとよいでしょう。
企画書通りに物事は進まない
企画書をいくら練り上げたとしても、実際に新規事業に取り組むとさまざまな困難がつきまとい、次のような原因で失敗に終わることもあります。
当事者がモチベーションを保てない
関連者が多くなりすぎて情報共有が進まない
タイミングを逃してしまった
新規事業チームに権限が与えられない
市場や顧客ニーズの調査不足
専門分野への知識不足
目標を現実的に設定できていない
失敗してしまう原因は企業の規模に限らず、どこでも発生しうるものばかりです。例えば新規事業の担当者が2人しかおらず、経営陣の権限が強くて自由に動けない場合は、関係者へ根回しを行おうとしても限界があります。
担当者が自由に動くことができ、さらに市場の状況や顧客へのニーズを把握しながら、新規事業の失敗原因になるような事態が起きていないか、確認することも重要です。
誰もが納得できる新規事業の企画書を作ろう
新規事業の立ち上げには、企画書の存在は欠かせません。どうしてこの事業を始めるべきなのかアピールすることで、適切に予算を充ててもらい、形にできるからです。
ただし、完璧な企画書を目指すと時間がかかりすぎてしまい、新規事業そのものが失敗する場合もあります。既存の事業や成功しているビジネスモデル、最新の流行や自分の困りごとなど、新規事業を考えるネタを活用してヒントを見つけてください。
今回紹介した企画書のポイントや注意点、テンプレートを活用しながら、誰もが納得できる新規事業の企画書作りに取り組んでいきましょう。
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