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【専門家監修】新規事業のために助成金を申請!立ち上げや運営でつまずかない

新規事業向けの助成金には、どのようなものがあるかご存じですか。国だけでなく自治体が独自に行っているものもあり、調べておかないと申請を忘れ、損をするかもしれません。この記事では新規事業向けの助成金について、具体例や注意点を紹介していきます。


\この記事は、専門家監修のもと制作しています/


本記事の監修者
Seven Rich会計事務所/日野 陽一(ひの よういち)

2011年に青色申告会に入社。2015年に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ東京事務所に入所。金融機関の法定監査などに携わる。2018年からはSeven Rich会計事務所に勤務し、ベンチャーやスタートアップ企業を中心に資金調達やIPOの支援、税務申告のサポート等を行っている。

新規事業を立ち上げたいものの、十分な資金がなく困っていませんか。画期的なアイデアでも売上がすぐに入る保証はなく、資金に余裕がないと従業員への給与の支払いも危うくなります。

そこで活躍するのが、新規事業向けの助成金です。助成金を利用するためには審査がありますが、受け取った資金は返済の必要がないため、事業が軌道に乗るまでに金銭的な余裕が生まれます。

この記事では、新規事業を対象とした助成金について、具体的な制度内容や申請方法、利用する際の注意点などを紹介していきます。ぜひ参考にして、条件を満たせるものに申請してください。


国の新規事業向け助成金・補助金

国が行っている助成金・補助金であれば、事業を行っている地域はどこでも申請することが可能です。2022年3月時点で、厚生労働省や経済産業省が主体となっているものは、次の2つです。

  • 厚生労働省の中途採用等支援助成金

  • 経済産業省の事業再構築補助金

制度の中身を詳しく見ていきましょう。


中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)

中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、雇用管理制度を整備した上で、中途採用を拡大する法人事業主や個人事業主に対して助成されます。(中途採用拡大助成また、一定期間後に生産性が向上した場合には追加の助成もあります。(生産性向上助成)

中途採用拡大助成は、45歳以上の中高年者が新規事業で雇用を創出したときに、採用や教育にかかった費用の一部を助成してくれます。受給額は起業者の年齢で変わり、60歳以上の初採用であれば上限が70万円、45歳以上であれば60万円または70万円です。

生産性向上助成は、雇用創出措置助成を受けて生産性が向上した場合に、別途受けとれる助成金です。中途採用計画の計画期間初日が属している会計年度の前年度と、その3年度後の生産性を比較し、3年度後の生産性が6%以上向上していることなどが条件となります

この助成金は、全国の労働局やハローワークで申請が可能です。事前に詳細を確認してから申請にいくとスムーズに手続きができるでしょう。

引用:厚生労働省公式HP「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース


経済産業省の事業再構築補助金

事業再構築補助金は、コロナなどで売上が減少した事業者を対象に、新規分野への展開や業態の転換にかかる費用を補助してくれる制度です。通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠の3つがあり、それぞれの補助額は次のようになっています。(※事業再構築補助金第6回参照:公募期間令和4年3月28日〜令和4年6月30日)

通常枠

  • 従業員20人以下:100万~2,000万円

  • 従業員21~50人:100万~4,000万円

  • 従業員51人以上:100万~6,000万円

最低賃金枠・回復・再生応援枠(ともに中小企業者等)

  • 従業員5人以下:100万〜500万円

  • 従業員6〜20人:100万〜1,000万円

  • 従業員21人以上:100万〜1,500万円

グリーン成長枠

  • 中小企業者等:100万~1億円

  • 中堅企業等 :100万~1.5億円

中小企業は、中小企業基本法に規定された業態ごとの資本金や従業員数で判断され、中堅企業は資本金が10億円未満の会社が対象です。経済産業省がリリースした電子申請システム「jGrants」から申請可能なので、事前にIDを取得して事業計画書も策定しておきましょう。


自治体独自の新規事業向け助成金

新規事業向けの助成金や補助金は、全国の各自治体が独自に行っているものもあります。予算の都合上、国の制度より助成額の上限は下がってしまいます。しかし条件を満たしていて申請しないのはもったいないです。

ここでは全国8箇所の助成金を例として紹介していきます。その地域でしか使えませんが、事業を行っている地元でも何かないのか探してみてください。


東京都八王子市の空き店舗改修費補助金

八王子市空き店舗改修費補助金は、店舗を改修するための解体や外装・内装の工事費、DIYで行うときの資材購入費の一部を補助してくれます。上限は50万円で、小売業や飲食業、サービス業が対象です。

3年以上継続できる将来性や週の営業日数、1日の営業時間などに要件があり、フランチャイズでの新規事業も除外されます。

申請は八王子市役所の窓口ででき、次の4つの書類が必要です。

  • 八王子市空き店舗改修費補助金交付申請書

  • 事業計画書

  • 空き店舗確認書

  • 誓約書

申請すると書類審査が行われ、交付してもらえるかは1ヶ月程度で決定します。2022年度の情報については、4月1日以降の公開です。最新の要項に沿って申請してください。


愛知県豊橋市の起業支援事業費補助金

豊橋市の起業支援事業費補助金は、市税を納税している商工業者で起業から1年以内のものを対象に、設備の購入や広告、登記の経費を補助してくれます。補助金の額は経費の2分の1が対象で、上限は法人で30万円、個人事業者で20万円です。

申請に手数料はかかりませんが、次の書類を用意する必要があります。

  • 登記事項証明書(法人)or 開廃業等届出(個人事業者)

  • 従業員者数がわかる書類

  • 経費の証拠(領収書など)

  • 購入した備品を使用している写真や成果品

  • 特定創業支援等事業相談カルテ

  • とよはし創業プラットホーム参画機関で指導を受けて作成した、起業から3年以上の事業計画書

  • 給与所得の源泉徴収票の写しor所得証明書

  • 小規模事業者持続化補助金の申請書

  • 許認可証の写し

  • 債権者登録申請書

  • 通帳の写し

豊橋市役所の商工業振興課が受付場所で、窓口に直接提出するか郵送で申請してください。2週間程度で交付の決定通知が届きます。


大阪府の大阪起業家グローイングアップ補助金

大阪起業家グローイングアップ補助金は、有望な起業家の発掘を目的とし、ビジネスプランのコンテストを行って上位者に補助金を交付しています。上限は優勝者(1名)で100万円、準優勝者(2名以内)で50万円です。さらに中小企業診断士などによる3ヶ月のハンズオン支援が付きます。

補助金を受け取るまでには、次のステップを踏んで受賞を目指してください。

  1. 推薦機関が実施するプログラムに参加

  2. 推薦機関による選抜を通過

  3. 一次審査

  4. 年2回のビジネスプランコンテストで審査

  5. 受賞者の決定

推薦機関には大阪府内の商工会議所や商工会、各種企業や大学が登録されています。登録は随時更新されているため、オール大阪起業家支援プロジェクトの公式HPから、利用しやすい所を探してください。


兵庫県のミドル起業家支援事業

ミドル起業家支援事業は、兵庫県内の起業を目指すミドル層を対象に、立ち上げに必要な経費の一部を補助してくれます。上限は100万円で、空き家を使う場合は改修費で別途100万円追加されます。

対象者の枠は2種類用意されており、代表者が満35歳以上55歳未満の社会的事業枠と、高校や大学の卒業時期で決まる就職氷河期世代枠です。補助金の上限はどちらも変わらないため、兵庫県で起業するなら検討してみてください。

審査方法はシンプルで、応募書類とヒアリングによる審査だけです。同時申請が可能な無利子のひょうごチャレンジ起業支援貸付もあるため、もしもに備えて利用しましょう。


京都府の起業支援事業費補助金

起業支援事業費補助金は令和3年に行われた補助金制度です。京都府に居住中・居住予定で起業する人を対象に、人件費や事業費、設備日などの一部を補助しており、上限は200万円で2021年度の採択は15件程度でした。

地域の活性化を目的としているため、対象となる事業は地域資源を活かした飲食・サービスや、社会福祉・子育て関連のものでした。


広島県三次市の新規開業支援事業補助金

新規開業支援事業補助金は、三次市内で起業する人を対象に、チラシやホームページの作成など広告に関する経費の一部を補助してくれます。上限は20万円で、利用する印刷業者などは市内に本店があることが条件です。

風俗営業などの規制がある事業や市外に本店があるチェーン店・支店は除外されます。また同一事業で、すでに国や県などから助成を受けている場合も同様です。申請は次の書類をそろえ、三次市役所の商工観光課へ提出しましょう。

  • 交付申請書

  • 事業計画書

  • 収支予算書

  • 開業・廃業等届出書の写し

  • 新規開業する店舗の写真


福岡県の移動スーパー参入促進費補助金

移動スーパー参入促進費補助金は、移動式スーパーへの参入予定の中小企業者を対象に、車両の購入費や改造費、事業の広告費などの一部を補助してくれます。上限は基本150万円で、一定条件を満たすと187万5,000円まで引き上げられます。

事業形態は2パターンあり、自社商品を販売する直営型と、地元スーパーの商品の販売を引き受ける連係型があります。連携型であれば事業者が車両を購入し、移動販売したいものを各スーパーと交渉します。

申請は随時可能で、用意されている様式に従い、事業計画書や経費配分書、役員名簿などを作成しましょう。分からないことは福岡県庁の中小企業振興課に問い合わせてください。


北海道小樽市の創業支援補助金

創業支援補助金は、新規事業で事務所や店舗をかまえる人を対象に、家賃や内外装工事の費用の一部を補助してくれる制度です。補助金の上限は対象事業によって異なり、次の3パターンとなっています。

  • 事務所等家賃補助:限度額は月額5万円(支払いは6ヶ月分まで)

  • 内外装工事費補助:限度額は基本50万円(市の中心4商店街は150万円)

  • 商店街等店舗家賃補助:限度額は月額5万円(支払いは1年分まで)

公序良俗に問題のない事業でも、3親等以内の親族から事業引き継ぎの場合は、対象外になってしまうため注意してください。制度の詳細や申請方法は、小樽市役所の産業港湾部産業振興課に問い合わせましょう。


助成金の申請前に知っておくべき新規事業の基本

助成金を申請して資金を確保するのはよいですが、新規事業について基本的な知識がないと、立ち上げても運営に行き詰まる可能性があります。現実的な事業計画書を作成するために、次の3つを押さえておきましょう。

  • 新規事業の立ち上げに必要な資金

  • 新規事業が失敗する原因

  • 新規事業にかかる資金の節約方法


新規事業の立ち上げに必要な資金

新規事業の立ち上げには、必要なものを購入したり借り入れたりするための設備費用と、事業を継続するための運転資金を用意しなければなりません。1人で立ち上げる場合でも、店舗や事務所をかまえる事業では高額になりやすいです。

日本政策金融公庫総合研究所の新規事業実態調査では、立ち上げに必要な資金は1,000万円が平均となっています。しかし50万円未満で起業している人は4割を超えており、大金が用意できなくても新規事業の道はあります。


新規事業が失敗する原因

立ち上げた新規事業が予定通りに成果を出す保証はなく、初期投資さえ回収できないケースもあります。少しでもリスクを減らすためにも、どのような失敗原因があるのかを把握しておくことは重要です。

よくある新規事業の失敗原因

  • これまでの慣習から抜け出ていない

  • 目先の売上を優先

  • スピート感がなくタイミングを逃す

  • 企業内で失敗に対するサポートがない

  • 人材不足

  • 競合の分析不足

助成金で資金の不安がなくなっても、失敗の原因はさまざまな所にあります。リスクをゼロにするのは難しいですが、想定できることには対策をしておきましょう。


新規事業にかかる資金の節約方法

助成金で資金に余裕ができる可能性はあっても、想定外に備えるために節約は必要です。新規事業の設備費用や運営費用を節約する方法として、次のものがあります。

  • ネットショップやクラウドソーシングで設備資金がかからない方法で新規事業

  • 無料の事務系サービスで人件費の節約

  • 中古やリースの活用で設備費用の節約

  • フレキシブルオフィスを事務所にする

フレキシブルオフィスとは、シェアオフィスやサービスオフィスなどの、短期契約ができるワークスペースです。利用することで、まとまった入居費用や内装設備の節約になります。サービスオフィスでは、電話対応や一部の資料作成などのサービスがあり、人件費の節約にもつながります。


新規事業で助成金を申請する注意点

新規事業を立ち上げる地域で利用したい助成金があり、実際に申請書類を作成する際は、次の2つの注意点があります。

  • 助成金の申請期間は決まっている

  • 助成金の振り込み前に新規事業の支払い

なぜこれらに注意しなければならないのか、詳しく見ていきましょう。


助成金の申請期間は決まっている

助成金の多くは申請期間が決まっており、短いと1ヶ月程度のケースもあります。漠然とした新規事業のアイデアはあっても、事業計画書の作成には時間がかかってしまうでしょう。募集に気づいてからでは間に合わないかもしれません。

助成金によっては2次募集が実施されるケースもありますが、年1回と考えていたほうが無難です。また申請期間が長いものでは、募集が多いと早期に予算がなくなり、途中で締め切られることがあります。翌年は助成金がなくなるケースもあるため、事前に情報を収集し、事業計画書はある程度形にしておきましょう。


助成金の振り込み前に新規事業の支払い

助成金の審査に通っても、実際に振り込まれるのは新規事業を立ち上げたあとです。支払った経費の領収書などを元に助成額が計算されるため、手持ちの資金がないと設備を用意することが困難になります。

既存事業で資金不足が起こっており、新規事業で立て直すために助成金を検討しているならば、それは間違いです。その場合は、経営継続や経営危機突破向けの助成金や補助金を探してください。国や最寄りの自治体で、今からでも利用できる制度があるかもしれません。


助成金以外で新規事業の資金を調達する方法

新規事業向けの資金を調達する方法は、助成金以外にも次の3つがあります。

  • 個人や企業に出資を募る

  • 銀行や信用金庫に融資の申し込み

  • 友人知人や金融機関から借り入れる

いずれも事業を始める前に資金を確保できるため、1つずつ見ていきましょう。


個人や企業に出資を募る

個人や企業からの出資であれば、将来現金を直接返済する必要はなく、株式の発行や商品・サービスの提供で資金を調達できます。出資先の人脈で、新規事業をスムーズに軌道に乗せられるかもしれません。

出資を募るためには、新規事業のアピール力が求められます。クラウドファンディングなど募集しやすいプラットフォームはありますが、魅力がないと予定金額を集められません。また株式を発行した場合は、新規事業の所有権を出資先も持つことになるため、経営の自由度が下がる可能性もあります。


銀行や信用金庫に融資の申し込み

新規事業の資金を堅実に確保したいなら、銀行や信用金庫の融資は欠かせません。助成金のように申請に期限はなく、担当者に事業内容をじっくりと説明できるでしょう。銀行や信用金庫が抱える顧客やビジネスパートナーから、新規事業に向いた所を紹介してもらえるケースもあります。

融資を受けると金利分を追加して返済する必要があり、経営は黒字でも手元にお金がなければ、滞納になってしまいます。金利の負担は増えても、運営資金に余裕を持った額で融資を受けてください。


友人知人や金融機関から借り入れる

借入は融資のように使用用途を制限されず、事業以外でも使うことができます。審査は個人の信用が重視され、既存の事業が上手くいっていなくても、資金を調達できる可能性はあります。

金融機関からの借入であれば、融資より金利は高く新規事業の経営アドバイスは期待できません。また友人や知人からの借入であれば、滞納すると人間関係にヒビが入りやすいです。このようなデメリットに納得してから利用しましょう。


まとめ

新規事業向けの助成金は、国や各自治体がさまざまな条件で受付をしています。事業計画書などで審査があり、通過すると数十万~数百万円を受け取れます。基本的に、かかった経費の一部が支払われる仕組みで、立ち上げ時は自前の資金が必要です。

助成金の申し込み期間は限定的で、どれだけ優れた事業計画書でも審査に通る保証はありません。新規事業を立ち上げるならば、融資や出資でも資金調達を検討し、助成金は手段の1つとして活用しましょう。


本記事の監修者
Seven Rich会計事務所/日野 陽一(ひの よういち)

2011年に青色申告会に入社。2015年に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ東京事務所に入所。金融機関の法定監査などに携わる。2018年からはSeven Rich会計事務所に勤務し、ベンチャーやスタートアップ企業を中心に資金調達やIPOの支援、税務申告のサポート等を行っている。

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