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新規事業立案に最適なフレームワークは?フェーズごとおすすめを紹介

新規事業を成功に導くためには、アイデアや行動計画などさまざまな要因を検討する必要があります。そこで、時間を効率よく使って新規事業を作り出すために有効なフレームワークを、目標設定やアイデアの創出など新規事業計画のフェーズごとに解説します。

新規事業を立ち上げるためには、アイデア出しや現状把握、他社の分析、比較など、多くのことを考えたり検討したりしなくてはなりません。さらに現代は、数日で流行りが変わるなど需要が変化する速度も上がっています。新規事業の立ち上げに時間がかかると、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。

そこで活用されるのが、思考整理や分析を助けてくれるフレームワークです。利用する目的に合わせてさまざまな種類があるため、課題に適したフレームワークを選ぶことで、新規事業の計画づくりを効率よく進められるでしょう。

ここでは新規事業のフェーズごとに、おすすめのフレームワークを解説します。


フレームワークに関する基礎知識

便利なツールも、使い方が分からないと活用は難しくなります。ここでは、フレームワークに関する基礎知識を解説します。


フレームワークとは

新しいアイデアや決まり事を考える際に、一定の枠組みを設けることで効率よく進めやすくなります。フレームワークはこの一定の枠組みをパターン化し、精度の高い分析を行うことを目的とした手段です

目標設定やアイデアの創出など、目的ごとに選んで活用できます。よって今つまずいている課題に対し適切なフレームワークを選ぶことで、新規事業を含めたビジネスにおけるさまざまな計画を立てやすくなります。


フレームワークのメリット

フレームワークのメリットとして、次の3つが挙げられます。

  • 客観的に状況を分析してリスクを回避しやすくなる

  • 新規事業の決定事項をスピーディーに行いやすい

  • アイデアを可視化してプレゼンにつなげられる

新規事業を立ち上げるまでには、現在の顧客ニーズや問題点を洗い出す必要があります。また、いくら予算を割り当てるのか、誰に働きかけるべきなのかなど、さまざまな決定を行わなくてはなりません。この際にフレームワークを使うことで、リスクを分析しつつ素早く情報の取捨選択を行えます

また、アイデアの整理が進めば経営陣や上司、部下、同僚など、情報を伝える相手に合わせたプレゼンを行いやすくなるのもフレームワークのメリットです。ビジネスモデルキャンバスなど、図を作成しながら作るタイプなら、視覚的にも情報を把握しやすくなり、そのままプレゼンへ活用できます。


フレームワークのデメリット

スピーディーな新規事業の立ち上げに役立つフレームワークですが、次のようなデメリットも抱えています。

  • 考えられる情報の深さに限界がある

  • 情報伝達を阻害する可能性がある

  • フレームワークを完成させることが目的になりがち

フレームワークは情報・思考を整理し、アイデアをまとめやすくなるメリットがあります。しかしフレームワークに当てはまる情報しか扱わないことで、新規事業につながる可能性を見落とすかもしれません。このデメリットを克服するためには、複数のフレームワークを確認し、不足している情報・思考・アイデアの整理に使いやすいものを選ぶのがおすすめです。

また、フレームワークは便利なツールですが、何のために使うのか知らない人に説明するときには、かえって情報伝達を阻害してしまう可能性があります。アイデアを出し合う際や情報整理を行う前に、使用するフレームワークについて知らない人がチームにいないか確かめ、必要があれば学習してもらいましょう。

そして、あくまでも方法や手段の1つであることも忘れてはなりません。フレームワークの完成を目的にしてしまうとなぜ使うのか、その意味が薄れてしまいます。使用する理由や意味を見失わないように、使用後は何のためのフレームワークなのかに立ち返ってみることも一つです。たとえば目標設定のためなら、完成後に目標が言語化できたか振り返ってみましょう。


目標設定におすすめのフレームワーク

新規事業を創成していく過程では目標設定が重要です。ここでは目標設定を行う際に、情報整理や企業としての意義、顧客のニーズの洗い出しなどに活用できる4つのフレームワークについて解説します。


MVV

新規事業において最終的に何を目標とすべきかは、たとえ同じような事業であっても、企業によってゴールは異なります。そこで企業自身の意義や役割を定義し、チーム内で共有しやすくするためのフレームワークとして「MVV(Mission Vision Value)」が挙げられます。

作成する視点

ミッション

ビジョン

バリュー

作成する内容

企業が存在する理由、どのような悩みを解決したいのか、役割を定義する

新規事業を通じて、企業が行動する際の指針や戦略

プロジェクトメンバーで共有したい新規事業を達成するための価値観

これらを策定することで、新規事業を立ち上げる際の目標が定まり、同じ事業へ携わる社員との連携に活用できます。他社との差別化を目指す際も、MVVに基づいた説明を顧客に行うことで、どのような違いがあるのかアピールしやすくなるでしょう。


5W1H分析

5W1H分析とは、次の6つの疑問詞をもとに情報を分けることで、具体性を持っていないアイデアや抽象的なテーマを深堀りしていくフレームワークです。

  • When(いつ)

  • Where(どこで)

  • Who(誰が)

  • What(なにを)

  • Why(なぜ)

  • How(どのように)

今あるデータや具体性を持っていないアイデアに、上記の6つを繰り返し問いかけることで、たとえば「ターゲットとするぺルソナのこだわりを見落とした」など、情報の抜けを防ぎます。

また、5W1H分析で情報を整理しておくとプレゼンに役立てることも可能です。プレゼンする際に、Why(なぜ)から始め、How(どのように)What(なにを)と情報を組み立てたうえで、When(いつ)Where(どこで)、Who(誰が)と情報を補足していくことにより、相手の共感を得られやすくなります。


MVP

本格的な事業内容を考える前に、その事業にとって最低限必要な機能やサービスを持つ試作品を設定するフレームワークです。Minimum Viable Productの頭文字をとって、MVPと呼ばれます。MVPを行う場合は、次のように進めます。

  1. 仮説をもとに最低限必要な機能やサービスを策定

  2. 実際に作る

  3. ユーザーに利用してもらうなどテストを実施する

  4. フィードバックをもらう

  5. 評価を行う

ポイントは、課題の洗い出しなどを目的とするプロトタイプと異なり、目的を達成できることが前提にある内容を検討する点です。必要最小限の機能が分からない場合は、他のフレームワークを組み合わせて活用する必要があります。


PEST分析

自社を取り巻く業界がどのような状況にあるのか、3〜5年後の未来をPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つの面から分析するフレームワークです。PEST分析はマクロ分析の1つであり、今後の社会的な要素が自社に与える影響を洗い出すことが重要です。


事業の方向性を決めるのにおすすめのフレームワーク

新規事業のビジョンや達成したい目的が定まったら、誰を焦点に事業を展開するのか、方向性を定めることが必要です。ここでは、新規事業の方向性を定めるために使える4つのフレームワークを解説します。


ペルソナ分析

消費者が何を求めているのか、ニーズを分析して事業の方向性を決めるフレームワークがペルソナ分析です。ペルソナとは、ターゲットとなる顧客の中でも特に代表的な人物を想定し、年齢や性別、居住地、職業、価値観などを具体的に展開させた人物像のことです。

ペルソナ分析を行うことで、消費者の中でもサービスや商品を購入してくれるターゲットを深く理解し、事業の方向性を定めやすくなります。


STP分析

STP分析は新規事業が他社と比較して、顧客にとってどのくらい魅力的なのかを分析することで、効果的なマーケティングを行うためのフレームワークです。マーケティングの分析の枠組みとして、広く活用されています。

顧客をグループや性別、年代などで分けるセグメンテーションを行い、セグメントごとの事業への評価を把握します。そのうえでターゲットとなる顧客をフィルタリングすることにより、自社がどこへ注力すべきか分析することが可能です。

たとえば同じ飲食店に来る顧客の中でも、女性・男性、単身者・カップル、友人・家族など、さまざまなグループに分けられます。そのうえで、特に多く来る人物や人気度の高いサービスでフィルタリングし、ターゲットを絞り込むことで他店との差別化を図りやすくなるでしょう。


3C分析

自社ではコントロールできないような市場環境や競合環境、自社内でコントロールできる内部環境という3つの観点からそれぞれ分析し、自社の立ち位置を明確にするためのフレームワークを3C分析といいます。分析するポイントは、次のような内容です。

分析する環境

分析するポイント

市場環境・顧客

  • 政治や経済、社会、技術といったPEST分析による市場把握

  • 新規参入や業界内の力関係

競合環境

  • 競合企業の売上や利益率

  • 社員の顧客単価

  • 結果を出した競合の事業における成功要因

  • どのような部分が自社と違うのか

自社環境

  • 自社が持つ強みと弱み

  • 自社のリソース

  • 強みを活かすための仕組み

  • 弱みを克服するための仕組み

簡単にいえば、自社と自社を取り巻く外部の状況を整理することで、事業の方向性を決定するために活用できます。


ポジショニングマップ

新たな業界へ新規参入する事業を展開する際に、市場を分析したうえで2つの軸を決め、自社の商品・サービスをどのように展開すれば、他の商品と差別化できるのかを明らかにするために行うフレームワークです。STP分析や3C分析と組み合わせ、競合他社と比較したうえで自社の差別化が図れるポイントや、顧客への訴求ポイントを明確にしていきます。

ポジショニングマップの作り方は、次の5ステップです。

  1. 競合他社を決めて3C分析を行う

  2. 購買決定要因を洗い出す

  3. 縦軸と横軸の2軸を決める

  4. 4つの領域に他社の製品・サービスをマッピングする

  5. 自社をマッピングする

ポジショニングマップを作る際に重要なのが、軸となる要素の決め方です。軸となる要素を決める際には「この軸は顧客にとって大切な軸だろうか?」ということを検討しましょう。自社にとって有利となる軸を選ぶと、顧客に寄り添ったポジショニングマップにならず、新規参入に失敗するリスクが高まるからです。


アイデアを考えるのにおすすめのフレームワーク

新規事業を考えようとしても取っ掛かりが見つからない。そんなときには、アイデアを考えることに特化したフレームワークを活用してみましょう。ここでは1つのアイデアから発想を広げていく、アイデアを出すための下準備に特化した4つのフレームワークを紹介します。


マンダラート

1つのテーマから発想を広げていく手助けをし、抽象的なアイデアを少しずつ具体化するために活用するフレームワークです。具体的には、次の手順で行います。

  1. 3×3のマスを作る

  2. 中央にメインテーマを書き込む

  3. 周りのマスにテーマに関わりのあるワードを書き込む

  4. 8つのワードを中央にした3×3のマスを作る

  5. 再びワードを書き込む

  6. 重要なワードや関連性のあるワードをまとめる

マンダラートはセオリーとして、アイデアを広げるために合計81マス以上埋めることを目指します。現実味に乏しい語句であったとしても、マスに書き込むことがルールです。


SCAMPER

アイデアを他の角度から考えたい、より良いものにしたいという場合に、既存のアイデアをもとに深堀り・発展させるために活用されるのがSCAMPERです。1つのアイデアに対し、次の7つの切り口に対応できるか回答することで発想を促していきます。

  • Substitute(代える)

  • Combine(組み合わせる)

  • Adapt(適応させる)

  • Modify(修正する)

  • Put to other uses(他の使い道)

  • Eliminate(削減する)

  • Reverse・Rearrange(逆転・再編成)

7つの切り口に対し、それぞれ質問事項を用意したチェックリストを作っておくと、最終的に情報をまとめる際に役立ちます。たとえば「Substitute(代える) 」という切り口なら「代用できる材料はあるのか」「今の顧客以外に考えられる商品の利用者はいるのか」「置き換えられる自社の他の商品はあるのか」といった質問です。

SCAMPERはマンダラートと同じように、回答することが重要です。思いついた回答やアイデアは、すぐに反映していくようにしましょう。


ビジネスモデルキャンバス

9つの要素に自社のビジネスをあてはめ、その構造を可視化するために活用されるフレームワークです。新規事業の分析のほか、現状の事業に対する分析にも活用できます。ビジネスモデルキャンバスの9つの要素は、次の通りです。

  • 顧客セグメント

  • 価値提案

  • チャネル(どのように売るのか、販売経路)

  • 顧客との関係

  • 収益の流れ

  • リソース

  • 主要活動

  • パートナー

  • コスト構造

9つの要素を1カ所へまとめて表示することで、新規事業を協議する社内チームでの情報共有がしやすくなります。また、複数の新規事業にそれぞれビジネスモデルキャンバスを用意すれば、全体的な要素を直感的に理解してもらいつつ、足りない要素を比較しながら思案することも可能です。可能性と現実性の両面から新規事業を検討できるでしょう。


マインドマップ

マインドマップは1つのテーマを中央に置き、その周りに関連するテーマを広げ、さらにサブテーマを描いていく情報同士のつながりを可視化する方法です。文章で情報をまとめるよりもストレスが少なく、手書きでもパソコンでも対応できます。

思考整理のほかにも、業務の整理や優先度の確認、アイデアを出すなど、さまざまな用途に使われます。


行動計画の策定におすすめのフレームワーク

新規事業を具体的に実施するためには、どのように動けば新規事業の立ち上げと運営につなげられるのか、具体的な行動計画が必要です。そこで行動計画におすすめのフレームワーク4つを解説します。


SWOT分析

自社内外の現状における強みと弱みを洗い出し、リソースの最適化や現在の計画におけるリスク回避を検討したり、新規事業の行動指針や目標設定を行ったりするなど、マーケティング戦略を決める際に活用できるフレームワークです。

注意点として、SWOT分析を行う前に目標設定がすでに完了していることが重要です。目標設定ができているのであれば、以下の4つのマトリクスに情報を入れ、それぞれの要素を整理していきましょう。


内部環境要因

外部環境要因

プラスの要因

強み(目標達成にプラスとなる自社の長所など)

機会(自社にとってプラスとなる政治や市場の変化)

マイナスの要因

弱み(目標達成のために改善しなくてはならない弱点や競合と比べ足りない能力)

脅威(自社の売上を下げる要因となる需要の変化など)

情報を整理したら分析を行います。たとえば弱みと脅威を組み合わせて分析し、自社の弱点に対し脅威となる要因を把握することで、新規事業のリスクに備える計画を考えることができるでしょう。


ビジネスロードマップ

事業を進めていくと、いつまでにどのような目標を達成すればよいのか、解決策はあるのかといった壁に直面します。この壁を時系列に書き出すフレームワークが、ビジネスロードマップです。ビジネス構造が把握でき、解決策のために用意すべきことを具体的に捉えられるため、行動が明確になります。

またビジネスロードマップがあれば、自分以外のチームメンバーに新規事業の壁を共有しやすくなるのもメリットです。不足している技術があれば、達成するために必要な技術を細分化して目標にするなど、具体的なプランも立てやすくなります。


PDCAサイクル

さまざまなシーンで仮説と検証、改善を繰り返すために使えるフレームワークがPDCAサイクルです。計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)という4つの段階を繰り返します。ビジネスにおいて広く使われ、新規事業でも戦略やアイデアをより良いものにするのに活用される方法です。

計画を実行したあとで、効果が出なかった要因を詳しく分析して改善策を講じる流れで活用するため、評価の基準となる目標を決めておくことが重要です。


バリューチェーン分析

新規事業で新たな業界に進出する場合は、自社の基準ではどんなに良い商品でも業界内で競争優位性がなければ、成果にはつながりません。そこで自社の競争優位性を判断するために活用されるフレームワークが、バリューチェーン分析です。

バリューチェーン分析では主活動と呼ばれる原材料の調達や製造、出荷、マーケティング、サービスという5つの活動と、主活動を支える支援活動の2つの側面から分析します。リソースを明確にする側面も持っているため、自社の強みや弱みのほか、効果的なリソースの分配を検討することも可能です。

またバリューチェーン分析では、VRIO(ブリオ)分析と呼ばれる4項目への質問にYESかNOで答える分析が併用されます。VRIOとは、次の4つの観点の頭文字をとった言葉です。

  • Value(経済的価値)

  • Rarity(希少性)

  • Imitability(模倣可能性)

  • Organization(組織)

たとえば製造において、他社にはない熟練の技術をもつ職人が所属している場合は、自社の技術には希少性があり、模倣の可能性も低いものの属人的という分析が行えます。自社の弱みと強みを明らかにして、実際のサービスへ生かしていくために役立てていくとよいでしょう。


新規事業の立ち上げにフレームワークを活用しよう

分析や思考の整理など、目的に合わせたフレームワークを活用することで、新規事業の立ち上げを効率よく進められます。使用することで、そのまま図の作成にもつなげられるフレームワークも多いため、情報の視認性を高めつつ、新規事業の立ち上げに関わるメンバーへの情報共有も簡単に行えるようになるでしょう。

しかし扱いやすい半面、フレームワークに当てはまる情報しか扱わないことで、新規事業につながる可能性を見落とす可能性もあります。選んだフレームワークを知らない社員がいれば、まずは情報共有が必要となる点にも注意が必要です。

新規事業の立ち上げフェーズに合わせてフレームワークを活用し、スムーズなスタートを目指していきましょう。


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