最近話題のフレキシブルオフィスとはどのようなものなのでしょう。利用時に注意すべきことはあるのでしょうか。この記事では、フレキシブルオフィスの特徴とメリット、利用の流れについて解説します。ぜひ自社に合ったオフィスを選ぶ参考にしてください。
最近では、フレキシブルオフィスと呼ばれるものが話題になっています。一体どのような特徴とメリットを有しているのでしょうか。フレキシブルオフィスとは、一般的な賃貸オフィスよりも柔軟(フレキシブル)に利用できるオフィスのことをいいます。例えば「コワーキングスペース」や「シェアオフィス」「サービスオフィス」などが該当します。
この記事では、フレキシブルオフィスの特徴とメリットを徹底的に解説します。ぜひ参考にしていただき、理解を深めたうえで自社に合ったオフィスを選択してください。
フレキシブルオフィスとは
まずは、フレキシブルオフィスとはどのようなものか、特徴を解説します。
コワーキングスペース、サービスオフィスなどの総称
拠点数の増加、リモートワークの場として需要が高まり市場は拡大
フレキシブルオフィスは、日本語にすると「柔軟なオフィス」という意味で、レンタルオフィスサービスを総称して呼ばれることが多いです。レンタルオフィスサービスとは、オフィス家具・通信設備・OA機器などが揃ったレンタル式のオフィスを指します。オフィス物件を借りて家賃を払う従来の形式よりもコストが安くすむため、近年人気が出ています。
「サービスオフィス」「コワーキングスペース」「シェアオフィス」といった、複数の企業や人とオフィスフロアを共有する形式です。短期間契約ができたり契約して支社として利用したり、ビジネスに必要なサービスが受けられたりと、種類によって柔軟に使えるのがフレキシブルオフィスです。
ザイマックス総研が実施した「フレキシブルオフィス市場調査2020」によると、東京23区内のフレキシブルオフィスの総数が、10年前の2010年時点は41件しかありませんでした。しかし2020年1月の調査時点で、同年内に開業予定のオフィスも含めて569件になることが分かりました。つまり、この10年で13倍以上も増えているのです。
その背景には、2019年から政府が働き方改革を推進しはじめたことがあります。それによりテレワークを導入する企業が増え、フレキシブルオフィスが注目されたのがきっかけになったと思われます。
テレワークやリモートワークは在宅で働くイメージが強いかもしれません。しかし家族や同居人に気を使ったり、業務に必要な機器を揃える手間がかかったりします。そのため、働きたいときだけ気軽に利用できるフレキシブルオフィスに通い、テレワークを行っている人も多いのです。
さらに、2020年の新型コロナウイルス感染症によってその需要はより高まり、オフィス分散化にも有効なため、今後も市場は拡大し続けると予測されています。
参考:ザイマックス総研「フレキシブルオフィス市場調査2020」
参考:株式会社日本能率協会総合研究所「MDB Digital Search」
ここでは、以下のさまざまなフレキシブルオフィスについて説明します。
サービスオフィス
コワーキングスペース
サテライトオフィス
バーチャルオフィス
シェアオフィス
どのような違いがあるのかを理解したうえで、それぞれを区別できるようにしましょう。
サービスオフィスは、「オフィス」に「サービス」機能が加えられたオフィス環境のことをいいます。サービスオフィスには、総合受付・ラウンジ・会議室・ミーティングルームなどが用意されており、常駐する受付スタッフが日常のオフィス運営を行っている場合が多いです。
例えば、物件から厳選してサービスオフィスを運営しているサーフィス株式会社では、執務スペース(賃貸部分)は各室個室となっています。セキュリティ性が高く、個別空調などを備えた個室空間が提供されます。デザイン性に優れたエントランスや会議室、共用部に加え、複合機などのビジネスに必要な機器なども備えられているため、自社で購入する必要はありません。受付スタッフによる来客対応や人材交流会など、コミュニケーションが生まれるサービスも備わったオフィス形態です。
コワーキングスペースは、違う企業が同じ空間で仕事できるように設計されたオフィスです。これは名称の「CoWorking」からもみて取れますが、「Co」(共同)+「Working」(働く)でコワーキング(共同で働く)という意味を成しています。
新規の事業を立ち上げたばかりのベンチャー企業では、人脈などを持っていないことも珍しくありません。コワーキングスペースであれば、同じような企業同士でコミュニケーションをとることで、自然と関係が構築されます。
これによって一緒に仕事ができたり、新たな視点から物事を考えられたりするなど、シナジーを生む可能性もあります。
サテライトオフィスは、本拠地とは別に支店や支社として設けるオフィスのことです。都会に位置するメインオフィスからそれほど離れていない場所で、よく利用する機会が多い他の場所にオフィスを構えたり、あえて郊外や地方の田舎などに設置したりすることもあります。
特に近年は新型コロナウィルス感染症の流行により、出社の人数を絞る過程で利用されることも増えています。また自宅において「家族がいる中では仕事に集中できない」という問題を解決する手段としても注目されています。
サテライトオフィスは、地域活性にもつながっているため行政側も推進しており、今後もより広まっていくことが期待されています。
バーチャルオフィスは、法人登記の際に必要な住所を取得するためのオフィスです。名前のとおり仮想のオフィスであるため、形態としては出社せずに住所のみを利用します。なお、事業の展開に必要な電話番号の利用や郵便物の受け取り・転送などについては可能なので、安心して利用できます。
また、顧客との会議が必要になった場合には、バーチャルオフィスによっては会議室を利用することも可能です。ただし有料の可能性もあるので、バーチャルオフィスを借りる際にはそのあたりも比較しておいたほうがよいでしょう。
注意点として、バーチャルオフィスは過去の利用者がなんらかの問題を引き起こしていた場合に、こちらにも悪い影響が出ることが挙げられます。例えば、住所が犯罪に使われていた場合は、仕事の取引先などがなんらかの調査を行った際に、以前の利用者と勘違いされる恐れもあります。
それが原因で取引が白紙になってしまうといったトラブルにならないためにも、契約する際は、バーチャルオフィスの過去の利用者に問題がないか確認してください。
シェアオフィスは、サービスオフィスやコワーキングスペースの総称です。ただし、専用のスペースが用意されていないコワーキングスペースのことを、シェアオフィスとはあまり呼びません。基本的には、専用スペースを持っているほうをシェアオフィスと指すことが多いです。
なお、シェアオフィスの個室を借りて、レンタルオフィスやサテライトオフィスとして利用するケースもあります。あいまいな使い方をされていることがあるので、できればサービスオフィスやコワーキングスペースの名称を使うのがよいでしょう。
フレキシブルオフィスを使うことには以下の5つのメリットがあります。
賃料・初期費用が安い
低コストで複数のオフィスを構えられる
優秀な人材を採用しやすい
立地がよく移転もしやすい
他業種との交流が増える
それぞれのメリットを順に見ていきましょう。
フレキシブルオフィスは、通常のオフィスよりも賃料・初期費用が安いです。賃料に関しては、敷金などといった賃貸契約で必要になる費用はかかりません。例えば、通常であれば長期間制約される契約期間に関しても、一月ごとなど短期間での利用が可能です。したがって、費用面では通常のオフィスよりもお得に利用できます。
またオフィスを借りた場合は、仕事で利用するデスクやいす、FAXといった機材、Wi-Fiなどの通信インフラなどが必要になります。本来はすべて自社で揃える必要があり、これが初期費用として負担になりがちです。しかしフレキシブルオフィスであれば、物件によってはすでにオフィス内に完備されているため、これらの費用はかからないことが多いです。
起業の際にできるだけ賃料などのランニングコストを節約したければ、フレキシブルオフィスをおすすめします。
フレキシブルオフィスには、東京23区内に複数拠点があったり、全国各地に複数拠点を展開していたりするところもあります。そのため、出張が多い企業などは低コストで出張先に拠点を設けられるだけでなく、新規事業の開発拠点として複数構えることも可能です。
フレキシブルオフィスによっては、系列のオフィスであれば追加料金なく利用できることも。また地方に拠点がある企業では、東京在住でリモートワークで働く社員のために、東京の拠点として契約しているケースなどもあります。
柔軟なオフィスというだけあり、働き方や利用の仕方も柔軟に選べるのもフレキシブルオフィスの魅力の1つです。
低コストで複数の拠点を構えることも可能なため、居住地の関係で採用できない優秀な人材も、採用できる可能性が高まります。
また、自社で賃貸契約する従来の形式では、従業員の数とオフィス面積は原則として比例していました。しかしフレキシブルオフィスを活用すれば、必ずしも「社員増員=オフィス面積拡大」とはなりません。オフィス面積や場所を考慮せず、戦力になる優秀な人材を採用できるのは、企業にとっても大きなメリットといえるでしょう。
フレキシブルオフィスは、通常のオフィスよりも好立地の場所にあることが多いです。都市部の一等地や駅前に近い場所に位置しているため、非常に利便性が高いです。快適に通勤できるだけでなく、営業などの仕事もやりやすくなるでしょう。
また、立地のよさは取引相手にも好印象を与えるため、ビジネスにプラスに働きます。通常のオフィスで同じ金額を出したとしても、このような立地条件のよい物件を契約することは難しいので、興味があればサービスオフィスを検討すべきです。
さらに、フレキシブルオフィスは従来のオフィスよりも移転しやすいのも特徴です。利用する従業員が増えた場合など、もし同じオフィス内で広いスペースが空いていれば、移るだけで簡単に転居できますし、住所は変わらないため手続きが省けます。
また、別のフレキシブルオフィスに移転する場合でも、契約が短期間の数カ月単位であることがほとんどであり、長期間拘束されないため移転自体がしやすいです。景気の動向などの変化に素早く対応したい企業にも向いているでしょう。
フレキシブルオフィスは他の企業も利用しているため、多業種の人と交流を図れるメリットがあります。コワーキングスペースなどが特に交流しやすいですが、他の企業や業界の人と会話をすることには、ビジネス上でも意外な相乗効果が生まれることも。例えば、同じような業務をしている企業と交流を持てば、共同で大きな仕事をすることや新たなアイデアを得られることもあり得るでしょう。
また、フレキシブルオフィスによってはイベントを開催して、交流を促進しているところもあります。もし自社のメリットになると感じられる場合には、そのようなオフィスを探してみるのもおすすめです。
フレキシブルオフィスは、コワーキングスペースやシェアオフィスの総称なので、オフィスによって利用の流れは異なります。基本的な利用までの流れは以下のとおりです。
問い合わせと内覧
申し込みをして入会審査
契約して引越し
以上の一連の流れはそれほど複雑ではないので、事前に利用したいオフィスの公式HPで確認し、必要な書類などを揃えておきましょう。
まずは気になるオフィスを見つけて問い合わせと内覧を行いましょう。フレキシブルオフィスの情報については、検索エンジンなどで「フレキシブルオフィス 地名」などと検索すれば、簡単に物件を探せます。他にも賃貸情報サイトを利用する方法もありますが、契約時に手数料が発生する可能性があるので、基本的には自身で調べましょう。
気になるオフィスが見つかったら、メールや電話で問い合わせて内覧日を予約してください。この際に従業員はどれくらいいるのかなど、必要な情報を聞かれるので質問にはしっかり答えましょう。期日が決まれば内覧を行ってオフィス内の様子をチェックし、契約条件の確認を行ってください。
条件などに納得がいったら次のステップに進みましょう。
契約したいフレキシブルオフィスが決定したら、必要書類を揃えてから申し込みをして入会審査をすませましょう。物件によって異なりますが、その際に必要な書類で多いものは以下のとおりです。
会社概要書
会社登記謄本
印鑑証明書
代表者か保証人の印鑑証明書
代表者か保証人の住民票
代表者か保証人の顔写真付き身分証明書
なお、入会審査のないオフィスもありますが、基本的には審査があったほうがトラブルなどに巻き込まれにくいです。審査に通ることができたら最後のステップに進んでください。
審査に通れば契約書を交わし、契約金を支払って手続きは完了します。契約金の入金が確認でき次第鍵を渡してもらえるので、あとは借りたフレキシブルオフィスに引越すだけです。なお、引越しの荷物については連絡しておけば、スペースに運ぶなど対応してくれるので相談してみましょう。
フレキシブルオフィスはメリットだけでなく、注意が必要なポイントもあります。
設備や内装の自由度が低い
プライバシーやセキュリティに懸念が残る
業種が限られている
オプションの使い方次第で高くつくことも
オフィス経営者の都合で使えなくなることも
以上を理解して納得したうえで契約を行いましょう。
基本的に、フレキシブルオフィスは契約したスペースをそのまま利用するので、設備や内装の変更が難しく自由度が低いです。そのため、企業の特徴を内装や設備に反映したい場合は、コンセプトに合致するオフィスと契約するか、多少の変更が可能なオフィスを見つけて契約しましょう。
また、社内で保管しないといけない在庫や大量の資料、大型のサーバーなどがある場合は持ち込めないケースもあります。事前に持ち込みたい荷物の量なども相談しておくと安心です。
自社だけでなく複数の企業が同居するフレキシブルオフィスは、プライバシーやセキュリティーにどうしても懸念が残ります。例えば、専用スペースで会話をしているときに、隣のスペースの企業に内容が漏れてしまったり、オフィスのWi-Fiから重要な情報が流出したりする可能性は、決してゼロではありません。高いセキュリティー基準が必要とされる業務の場合は、施設に相談して個別の回線が引き込み可能か相談してみましょう。
他にも、フレキシブルオフィスは複数の人が行き来するため、ものなどを放置してしまうと盗難に遭うかもしれません。この場合は、ロッカーに保管するなどして対処すれば解決しますが、通常のオフィスを借りたほうがこれらのリスクを軽減できます。
フレキシブルオフィスは利用できる業種に実質的な制限があり、大きな音が出るような作業を伴う業種には不向きです。複数の企業が同居している関係上、他に迷惑をかけないように利用する必要があるからです。
また、大量に在庫を抱えるような業種にも向いていません。オフィス内のスペースが限られているため、契約したとしても、ものが置けない場合が多く非効率です。しかし、フロア貸しを行っているフレキシブルオフィスもあるので、自社の業種が合っているかを考慮しながら探してみるといいでしょう。
フレキシブルオフィスによっては、業務をサポートしてくれる便利なオプションが用意されている施設もあります。ただし有料のオプションを使いすぎると、想定以上にコストがかさむ可能性も。場合によっては、普通のオフィスを借りたほうが安上がりになることもあるかもしれません。月々の契約料と、これから利用するオプションの金額をしっかりと計算して、予算の範囲に収まるようにしてください。
また、そもそも契約の前に何が無料で、どれが有料か確認したうえで、本当にそのオフィスでよいのか検討することも大切です。低コストとはいえ大切な経費なので、フレキシブルオフィス選びは後悔しないように慎重に進めてください。
リスクヘッジとして、契約を検討しているフレキシブルオフィスの経営状態を確認しておきましょう。オフィスの経営がうまくいかず、撤退や廃業によって利用を続けることが困難になるケースがあるからです。その場合は、予期しないタイミングで転居せざるを得なくなるため、対処に追われて事業にも影響が出る可能性があります。
そういった事態が起こらないとはいえないので、十分に注意しておきましょう。
フレキシブルオフィスとは「サービスオフィス」や「コワーキングスペース」「シェアオフィス」といったレンタルオフィスサービスを総称した柔軟な使い方ができるオフィスです。
オフィスによっては別の企業と交流できたり、郊外・地方に拠点を置くサテライトオフィスとして利用できたり、業務に必要なサービスが受けられたりするなど、特徴もそれぞれ異なります。
共通しているのは短期間契約が可能なのと、賃料・初期費用が安いこと、Wi-Fiやコピー機などオフィス機器が備わっている物件が多いことです。
手続きについては申し込みをして入会審査を行い、問題なく受かれば契約を交わし、引越しできれば完了です。フレキシブルオフィスを契約する際は、設備や内装の自由度が低い点や、プライバシーやセキュリティーに懸念が残る点など、注意点があることも理解したうえで検討しましょう。
サービスオフィスを複数棟、比較検討できます。
気になる物件を選び、条件や設備などの違いを確認してみましょう。一覧表で比較ができる便利な機能です。比較資料としてご利用ください。