オフィスに訪れる変化を感じ、今後はどのようにオフィスを活用していくか検討する企業が増えています。この記事ではオフィスの現状を紹介しつつ、今後、自分や社員が今よりも働きやすい環境を目指すためのヒントとなる情報を解説します。
事業のためにオフィスを構えている方の中には「オフィスは今後どのように変わっていくのか知りたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
テレワークが増えてきたいま、出社する人数が減ったことでより面積の小さいオフィスへ移転したり、首都圏外への本社機能移転を実行したりする企業も増加しています。
本記事では、データをもとにオフィスの現状を紹介しつつ、今まで以上に自分や社員が働きやすい環境を検討するためのヒントとなる情報を解説します。
【2022年最新】オフィスの現状
ここでは2022年2月時点において、オフィスにかかる賃料や面積、出社率により、オフィスを取り巻く現状を解説します。
オフィスの賃料は下落傾向
日本不動産研究所が、2021年11月25日に発表した第26回「全国賃料統計」によると、全国平均を見ても、オフィス賃料は前年比で0.5%下落しています。
北海道地方や九州地方においては、前年比でそれぞれ3.2%、1.3%のオフィス賃料の上昇も報告されているものの、東京圏と大阪圏が下落に転じた影響を受けた形です。
“参考:一般財団法人日本不動産研究所「第26回「全国賃料統計」(2021年9月末現在)の調査結果」2021年11月25日”
オフィスの面積も縮小傾向
ザイマックス不動産総合研究所は全国主要都市にある企業に対し、2016年秋より実際に企業がどのようにオフィスを利用しているのか、働き方はどう変わっているのかアンケート調査を行っています。
この結果をまとめた「大都市圏オフィス需要調査2021秋」によると、過去1年間のオフィスの面積について「縮小した」と答えた企業は9.0%と過去最高でした。
またオフィス面積について「縮小を検討中」もしくは「縮小を検討したが中止/中断した」と回答した企業についても合わせて10.6%となり、2019年春の調査以降増加していることを報告しています。
「大都市圏オフィス需要調査2021秋」2021.12.22”
出社率は業種で大きな差
ザイマックス不動産総合研究所の「大都市圏オフィス需要調査2021秋」によると、出社率は業種によって大きく差が出ました。
出社率を「40%未満」に抑えている企業が最も多かったのは「情報通信業」で、半数の50.9%とテレワークの普及が進んでいます。
一方で「100%(完全出社)」の割合が30%を超える業種は「卸売業、小売業」や「建設業」「金融業、保険業」です。「情報通信業」において、完全出社を選択している企業が5.4%にとどまることを踏まえると、業種によって大きな差があるといえます。
“参考:株式会社ザイマックス不動産総合研究所「大都市圏オフィス需要調査2021秋」2021.12.22”
首都圏外への本社移転が増加
帝国データバンクの「首都圏・本社移転動向調査(2021年)」によると、2021年中に首都圏より地方へ本社または本社機能を移転した企業は351社です。前年度と比べると、2割以上増加しています。
これは本社や本社機能を、東京・神奈川・千葉・埼玉へ移転した企業の数です。移転した企業が300社を超えるのは2002年以来19年ぶりで、過去最多の数となっています。
“参考:帝国データバンク
「首都圏・本社移転動向調査(2021年)」2022/2/15”
今後コロナ沈静化までやるべきオフィスの予防策
新型コロナウイルスの感染が沈静化するまでの間、オフィスを維持していく場合にはどのような予防策が必要となるのでしょうか。
ここでは、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が提示する「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」をもとに3つのポイントを紹介します。
社員の健康は毎日確保
健康観察アプリなどを活用し、社員の健康状態を毎日把握することが大切です。社員の健康を守るとともに、同居する家族が感染源となる可能性を考慮しなければなりません。各自が自分の体調を把握しやすくすることで、感染拡大のリスク減につながります。
健康状態を把握するだけでなく、体調の悪い社員が無理に出社しないよう、適宜申し出て出社の可否を判断できるようにする必要もあります。正社員や派遣社員、請負労働者などの区分なく、誰でも同じように対策が取れることが重要です。
利用場所は消毒や換気を徹底
オフィス内で次の3つの基本的な予防が行えるように、環境を整えていきましょう。
会話時は間隔を2m(最低1m)あける
マスクを着用する(熱中症には注意)
手洗いや手の消毒を徹底する
社員が空間や物品を共有して利用するオフィスでは、会議やミーティング時の会話で、病原体が含まれる唾液が空気中に飛び出してしまうリスクがあります。
また、消毒や換気を徹底して行うことも重要です。消毒の対象となるのは、たとえば次のような物品があります。
ドアノブ
デスク(食堂の机など多くの人が使うもの)
共有で利用する電話機
複合機のタッチパネル
トイレ
手洗いが難しい環境であれば、消毒液の利用も有効です。
感染者が出たら早急に対処
オフィス内の感染対策を徹底しても、感染者が出てしまうことは十分に考えられます。社員に感染者が確認された場合は、保健所や医療機関の指示に従い、対応を進めましょう。
その際は、感染者の個人名が特定されないようにし、個人情報保護に配慮することも大切です。政府の個人情報保護委員会の「新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて」も参考にしつつ、感染が広がらないように情報共有を進めていきましょう。
テレワークの普及で変わるオフィスの今後
テレワークが普及していくことで、今後はどのようなオフィスが求められていくのでしょうか。
オフィスへの出社は企業の事情に合わせて施策
従業員に、これまで通りオフィスへの出社を求めるかどうかは、企業の事情や従業員の働き方に合わせて施策を打ち出す必要があります。テレワークによるメリット・デメリットが、必ずしも企業の事情に合うとは限らないためです。
主なテレワークのメリットとは、次のような内容です。
コミュニケーションを言語化して行うことで指示が通りやすい
従業員の通勤時間の削減やストレス緩和による業務効率化
自分が働きやすい環境を作るための自己投資が行える
しかし、テレワークには以下のようなデメリットもあります。
先方がテレワークによる対応が行えるか確認をとる必要がある
電話対応が難しくなる
突発的に相談したいときでも言語化が必要になる
把握している情報と現状が一致しているか分からない
製造業など現場勤務者への導入は限定的
こうしたデメリットから、完全にテレワークのみに移行してしまうと、業務が効率的に進まなくなる場合もあります。
たとえば、出社する日数と人数を限定し、その人数に応じたオフィスへ変更することで、テレワークによる効率化とオフィス費用削減を目指している企業もあります。
したがって、企業ごとにオフィスへの出社を求めるべきか、オフィスは今の位置や広さのままでもよいのか、検討することが大切です。
既存オフィスの空きスペースは有効活用
テレワークを実行できる企業では、既存オフィスにすでに空きスペースができている場合もあるのではないでしょうか。
こうした空きスペースを、従来通りのオフィスや会議室として使うのではなく、有効活用する動きが増えつつあります。たとえば次のような活用です。
社員が自由に使える少人数会議の場として開放
コワーキングスペースとして他社へ貸出
空いたスペースへ飲食店を入れ社員の福利厚生にする
オフィスを縮小するのも1つの手ですが、自社オフィスを資源として活用することも、これからのオフィスの使い方として検討する価値があるといえそうです。
フレキシブルオフィスを利用
オフィスの使い方が多様化していくなか、フレキシブルオフィスを活用する企業も増えており、それに伴いフレキシブルオフィスの市場も拡大しています。
フレキシブルオフィスとは、さまざまな企業の社員やフリーランスが共同で活用できる「コワーキングスペース」や「レンタルオフィス」の総称です。一般的なオフィスと異なり、契約期間や契約人数などを柔軟に変更できます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、オフィスに集まって働けなくなった結果、「○○さんと直接会って話したい」「この業務は現物を見たほうが効率的」など、オフィスに行く理由をより具体的に考える機会が増えつつあります。
変化していく状況に柔軟に対応できるオフィスを求める場合は、フレキシブルオフィスを選ぶことでリスク対策にもつながります。
たとえば本社を首都圏に持ちつつ、一時的に別の地域でフレキシブルオフィスを借りて事業を継続することも一つです。そうすることで、社員が落ち着いて働けるように環境を整えることもできます。
フレキシブルオフィスの種類と特徴
フレキシブルオフィスは使い方によって5つの種類に分かれます。ここではその特徴を解説します。
事業のため住所を用意するバーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、簡単に言えば事業を行うための「仮想のオフィス住所」を貸し出すサービスで、物理的にオフィスを借りるわけではありません。
メリットは3つあります。
初期費用を抑えつつ事業用の住所を利用できる
固定電話やFaxの導入もしやすい
通販で必要な特定商取引法に基づく表記への記載ができるようになる
テレワークのみになった場合でも、郵便物の受け取りや銀行口座の開設などに、住所や事業所の所在地は必須です。バーチャルオフィスは物理的にオフィスを用意しないため、必要になったときにすぐに借りられます。
一方、物理的な実体がないことがデメリットです。たとえば融資や業種による固有の条件に対し、物理的に専用スペースの確保が必要となる場合があります。また、バーチャルオフィスが犯罪に利用されてしまうケースがあることから、顧客から悪いイメージを抱かれるリスクもあります。
専用スペースを確保するレンタルオフィス
複数の事業者に提供されているスペースの1つを契約することで、専用のスペースが確保できるのがレンタルオフィスです。賃貸オフィスと異なり、会議室などは他の契約する事業者と共有になります。
メリットは、専用スペースを確保できるため「事業所」として認められることです。バーチャルオフィスと比較すると信用度が高く、月々のランニングコストを抑えつつ、プライバシーや社内情報の保護についても安心といえます。
デメリットは、会議室の利用など、一部は他事業者と共有する必要がある点です。業種や業務内容によっては、利用を希望する時間帯が重なってしまうリスクがあります。
会社の所属を超えるコワーキングスペース
コワーキングスペースは、利用者同士のコミュニケーションが取りやすいオープンスペースで仕事を行う設計となっているオフィスのことです。
利用者の職種が幅広く、フリーランスや起業家などさまざまな人物が訪れるため、情報交換の場としても活躍できる点がメリットとして挙げられます。テレワークがメインとなった会社であれば、オフィス代わりに活用するのも手です。
デメリットは、オープンスペースであるため、情報漏洩が起きる可能性があることです。中には、専用スペースを契約できるコワーキングスペースもあるため、利用前にセキュリティ面についてはよく確認しておく必要があります。
部屋の区切りがないシェアオフィス
シェアオフィスとは、大きな空間を複数の事業者や個人が共有し、それぞれ仕事を行うフレキシブルオフィスの1つです。
使い方は、コワーキングスペースやレンタルオフィスに似ていますが、専用スペースはありません。働く場所そのものも、他の事業者やフリーランスと共有して使うのが特徴です。
メリットとして、最初は必要なスペースだけを利用しつつ、状況に合わせてより広いスペースを借りられる点です。また法人登記や宅配物の受け取りも行えます。他の企業の働き方から、問題の解決策のヒントが見つかるかもしれません。
一方、空間を共有するゆえのデメリットもあります。他事業者の印刷物を誤って持ってきてしまったり、パソコン画面の盗み見による情報漏洩が発生したりするなど、セキュリティ面には注意が必要です。
節約しながら質を高めるサービスオフィス
サービスオフィスとは、仕事に必要な家具や通信環境など、すでに設備が整っているオフィスを貸し出すサービスです。
メリットとして、設備導入に必要な初期費用を抑えられることが挙げられます。受付や秘書業務に携わるスタッフが常駐していることも多く、きめ細やかな対応により業務の効率化も可能です。
ただし設備がすでに導入されているため、自身で必要な機材などを持ち込むにはスペースが小さすぎる場合があります。そのため、テレワークが可能な業種であっても、サービスオフィスには合わない可能性もあるため、自社に合うかどうか検討することが重要です。
今後オフィスを移転するときの選び方
働き方の見直しや業務の効率化に伴い、今後オフィスを移転する可能性も十分考えられます。ここでは、オフィスを移転するときに後悔しないための選び方のポイントを4つ解説します。
事業に支障がでないオフィスタイプ
新しくオフィスを借りたり移転したりした結果、事業に支障が出てしまっては元も子もありません。事業に支障が出ないよう、オフィスのタイプをよく検討することが大切です。
オフィスタイプ | おすすめの会社 |
---|---|
バーチャルオフィス | ・完全にテレワークのみで在宅勤務を目指したい会社 ・従業員が数人しかおらず郵便物や荷物の受け取りが不要 |
レンタルオフィス | ・従業員が10名以上いて従来に近い働き方も取り入れたい会社 ・移転時の費用を抑えたい会社 |
コワーキングスペース | ・社員が自宅以外で作業に集中できる環境を持ちたい会社 ・社員がテレワークに必要な環境を自宅に設置しにくい会社 |
シェアオフィス | ・さまざまな業種の人との交流を持ちたい会社 ・10人前後の小規模な企業で、社員同士の共同作業を進めやすい環境も必要な会社 |
サービスオフィス | ・費用を抑えつつビジネスの質を高めたい会社 ・高度なセキュリティを確保しつつ、事業内容に応じて空いているスペースも借りたい会社 |
社員や取引先のアクセスの良さ
オフィスを移転するにあたり、アクセスの良さも重要です。
電車やバスなど交通機関が近くにある
幹線道路や高速道路のインターチェンジが近い
顧客・取引先に訪問しやすい
また、自社と同じ業種が集まるエリアを選ぶことで、相乗効果やイメージアップを図るのも手です。
しかし立地が良くても、賃料が高すぎたり、業務内容に合っていなかったりする可能性があります。アクセスの良さも条件の1つとして考えつつ、検討していきましょう。
イニシャルコストとランニングコスト
オフィスを移転したり、より小さなオフィスに縮小したりする際に発生する費用を、イニシャルコスト(初期費用)と呼びます。新たなオフィスを維持する際にかかる費用はランニングコスト(維持費用)です。
以下は、それぞれに含まれる費用の一例です。
イニシャルコスト | 月額料金、家具・設備購入費、事務手数料、保証会社委託料など |
ランニングコスト | 月額料金、光熱費・水道代、清掃費用、機器やアメニティ費用など |
たとえば賃貸オフィスからシェアオフィスに移転した場合は、個別に対応していた水道代や電気代などが月額料金に一本化されるため、コストダウンと経理作業の削減につながる可能性があります。
現在のランニングコストと、移転後のランニングコスト、移転時のイニシャルコストを比較しつつ、検討していきましょう。
複数のフレキシブルオフィスを比較
同じタイプのフレキシブルオフィスであっても、そのサービス内容は提供する会社によって異なります。複数社を総合的に比較することで、最終的により良いオフィスを選ぶことができるでしょう。
たとえば利用人数が10人、面積が40平方メートル以上で条件を絞った場合でも、コワーキングスペースがあるオフィスもあれば、専用スペースプランを持つオフィスもあります。
自社にとってより良いフレキシブルオフィスとは何か、移転前に必要な環境や設備をリストアップするのも手です。
オフィスの変化に対応し、無駄なく働きやすい職場を維持
今後、オフィスの使い方やオフィスへ向かう目的は、より変化していくでしょう。今までとは異なる使い方をする企業や、オフィスの縮小・移転を実行する企業も増えています。
オフィスの変化に対応するということは、自分や社員にとってより働きやすい職場を模索し、維持することにもつながります。
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