オフィス移転でやることは、大きく分けると13項目あります。かかる費用や必要な期間、移転に伴う各種届出の種類などとあわせて確認しましょう。スムーズに進めるための流れや負担を減らす方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
オフィスを移転したいと思っても、やることが多すぎて何から手をつければよいかわからない人も多いのではないでしょうか。また、かかる費用が気になる人もいるでしょう。
そこでこの記事では、オフィス移転の流れや費用などの基礎知識に加え、やるべきことを移転前と移転後にわけ、リスト化して詳しく解説します。やることが多すぎるという負担を減らす方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
まずはオフィス移転の流れやメリット、デメリット、費用などの基礎知識を紹介します。
オフィス移転をする際の流れは次のとおりです。
移転目的の明確化
要件定義
移転計画立案
業者探し(移転業者、不動産会社など)と選定
現オフィスの解約予約
物件探し、契約
レイアウトの決定
内装工事の手配
備品の発注
引っ越し業者の選定
引っ越し作業
原状回復工事
各種届出、完了
長期間を要する項目が多いため、移転目的の明確化から移転完了までの期間は1年を目安に考えておきましょう。
オフィス移転の主なメリット、デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
・従業員のモチベーション向上 ・ブランディング強化 ・人材確保 ・定着率向上(離職率の低下) ・コストの最適化 | ・勤務先が遠くなる従業員もいる ・手間と時間、コストがかかる ・オフィス縮小の場合はストレス要因になり得る |
現オフィスよりもキレイな内装や適正な広さで、好立地のオフィスへ移転できればモチベーションの向上やブランディング強化、人材確保などに有用です。
また、現オフィスのフロアが分かれていた場合、広いワンフロアのオフィスに統合できれば重複していた機器や備品を削減できるため、維持コストの最適化にも役立ちます。
ただし、デメリットも無視できません。社内で反対の声が大きい場合には計画を見直す必要もあるでしょう。
オフィス移転にかかる費用の項目と相場を表で見てみましょう。
項目 | 相場 | 詳細 |
引っ越し | 従業員1人あたり30,000円 | 引っ越し業者に依頼する費用。 |
不用品の処分費用 | 1つあたり数百円~ | 粗大ごみとして出せるものは数百円。業者に頼む場合は数千円~。 |
敷金 | 家賃の1~12カ月分 (6カ月分とすることが多い) | 家賃滞納時の担保や原状回復に使われる。 |
礼金 | 家賃の1~2カ月分 | 入居のお礼。不要な場合もある。 |
前賃料・前共益費 | 2カ月分の家賃 | 入居月と翌月分の家賃。 |
仲介手数料 | 家賃の1カ月分+消費税が上限 | 不動産会社に支払う仲介手数料。 |
入居工事費用 | 数十万~数百万円 | 配線工事、内壁の設置など規模によって異なる。 |
家具・設備代金 | 数万~数十万円 | 新たに設置する家具や設備の購入と設置にかかる費用。 |
火災保険料 | 15,000円~15万円 | 補償範囲や規模によって異なる。 |
保証会社費用 | 数万~数十万円 | 賃貸オフィスオーナーの意向で保証会社の利用を求められた場合に必要。 |
原状回復費用 | 数十万円 | 旧オフィスの原状回復工事にかかる費用。入居時の契約内容によって金額に差が出る。 |
登記等手続きにかかる費用 | 30,000円~ | 住所変更にかかる会社登記簿の本店部分の変更(登録免許税)は30,000円~。士業に代理で手続きしてもらう場合は依頼費用もかかる。 |
新オフィスの家賃次第で大きく変動しますが、数百万円はかかるものと考えておきましょう。
ここでは、移転前に知っておきたいやることリストを13項目紹介します。
まずはオフィス移転の目的を考えましょう。目的なく物件を選ぶと、移転したことでよりストレスフルな職場になったり費用対効果が悪くなったりするからです。目的には次のようなものがあります。
テレワークメンバー増によるオフィスの縮小
メンバーが増えたことによるオフィスの拡大
従業員1人あたりの執務スペースの確保
カフェスペースなどリフレッシュできる空間の確保
従業員、顧客ともにアクセスしやすい好立地への移転
ブランディング強化のための好立地への移転
従業員にヒアリングし、オフィスが抱える課題や希望を吸い上げてから検討することをおすすめします。
リストアップした目的に応じて、コンセプトを決めましょう。ブランディング強化を目指す場合は好立地を選んだり、デザイン性の高い内装に予算を割り当てたりするなどの方向性が見えてきます。
生産性の向上であれば、従業員1人あたりの執務スペースや動線の確保を重視し、実現可能なオフィスを探しましょう。
このように、何を重視すべきかコンセプトを決めることで、物件やレイアウトを決めるときに最優先の課題を見失わなくなります。
現オフィスの状況と課題をリスト化したうえで、新オフィスに求める条件を決定します。賃料、広さ、立地、設備などの条件をもとに、各種費用の相場を確認して費用を試算しておきましょう。
取締役や株主がいる場合は移転計画の合意を得る手続きが必要です。取締役会や株主総会を開き、承諾を得ましょう。
なお、移転計画の作成は、実際に移転したい日の1年程度前に進めておきましょう。理由は後述します。
不動産ポータルサイトで検索するか不動産会社に相談し、移転計画で示した条件と合致する物件を厳選しましょう。物件探しには1~3カ月程度はかかると考え、早めに行動することをおすすめします。
ただし、すべての条件に合致する物件はなかなかありません。コンセプトに沿って条件に優先度をつけておけば、妥協点を間違える心配はないでしょう。
現オフィスの解約予告は6カ月前までにおこなうことが一般的です。6カ月以下になると希望通りの日程で解約できなくなるリスクがあります。
しかし、物件探しが難航しているなかで解約すると、物件が決まらなければオフィスを失うことになります。移転計画自体は1年前からおこない、物件探しに3カ月、解約予告に6カ月を確保できるよう努めましょう。
なお、解約予告をするときに原状回復の範囲や充当できる敷金の割合、定期借家契約の場合の解約料なども確認しておきましょう。
旧オフィスの原状回復工事は、新オフィスへの引っ越し作業後に荷物がなくなった空間でおこなわれます。また、旧オフィスの原状回復はそれまでの入居者がおこなうのが一般的で、契約期間中に完了させなければなりません。
原状回復にかかる期間は、100坪未満の場合で2週間~1カ月が目安です。契約期間内で完了できるよう、オーナーに原状回復工事が必要な範囲を確認し、業者を手配しましょう。なおオーナーが業者を指定するケースもあります。
以下のポイントに留意して移転先のオフィスのレイアウトを決めましょう。
各部署ごとのゾーニング
会議室や応接室エリアの確保、内壁の設置の有無
カフェスペースや資料室の確保
動線、補助動線
デスクやコピー機などの配置
従業員が実際に働く様子をイメージし、無駄のないレイアウトを組むことが大切です。悩んだときはオフィスレイアウトの専門業者に相談してみましょう。
旧オフィスから持っていくものと新規で購入するもの、廃棄するものの洗い出しをおこないましょう。具体的には次のようなものがあります。
デスク、椅子
本棚やカフェスペースのテーブルなどの家具
コピー機、FAXなどのOA機器
コーヒーメーカーなどの備品
観葉植物
なお、新規購入の必要があるものでも、リースや中古品を活用すればコストを削減できます。あるいはレイアウトから家具の手配までおこなってくれる専門業者に依頼すれば、リーズナブルな価格で購入できるかもしれません。
LAN・電気などの配線や内壁の設置などの各種工事と、引っ越しを依頼する業者を手配しましょう。ただし、オフィスのオーナーが業者を指定する場合もあるので、あらかじめ確認しておく必要があります。
オフィスの引っ越し作業はデータのバックアップや資料の整理、梱包だけでも1カ月以上かかることが少なくありません。業者には早めに相談し、段取りを確認しておくことが重要です。
移転日の2~3カ月前には関連会社や機関へオフィス移転の連絡をしましょう。顧客だけではなく、リース会社やセキュリティ会社、加入している団体など連絡先は多くあるはずです。
とくに、現在進行形で取り引きのある会社には、引っ越し作業で数日間業務が停止する可能性を含めて連絡しておくことをおすすめします。
また、重要な取引先にはメールだけでなく移転案内状を送付すると親切です。
電気、ガス、水道、インターネット、電話回線などがビルの契約ではなく企業ごとの契約だった場合には、旧オフィスで加入していた各種サービスへ移転または解約の連絡を入れましょう。これらは1カ月前におこなうのが目安です。
そのほか、郵便局と消防署には以下の届出が必要です。
届出の種類 | 提出時期 | 提出先 |
郵便物届出変更届 | 移転先・移転日が決まったとき | 移転先の最寄りの郵便局 |
防火対象物使用開始届 | 移転先の使用開始の7日前まで | 移転先を管轄する消防署 |
防火対象物工事等計画届出書 | 内装工事着工の7日前まで | 移転先を管轄する消防署 |
防火・防災管理者選任(解任)届出 | 移転の7日前まで | 移転先を管轄する消防署 |
消防計画作成(変更)届出 | 移転の7日前まで | 移転先を管轄する消防署 |
引っ越し前に、移転先のオフィスの内装工事が図面通りに完了しているか、現状を確認しましょう。問題なければ予定日に引っ越し作業ができますが、問題が生じた場合は施工のやり直しになる可能性があります。
引っ越し作業後のやり直しは困難になるため、このタイミングでしっかり最終確認することが大切です。なお、新規発注した家具やOA機器の設置が済んでいる場合には、動作確認しておくことをおすすめします。
オフィスの移転には従業員の協力が欠かせません。当日に口頭で説明するのは困難なので、事前にマニュアルを作成し、役割分担を明示して段取りを確認しておきましょう。
マニュアルで記載しておくべき事項には次のようなものがあります。ぜひ参考にしてください。
引っ越しまでの梱包等のスケジュール
梱包、移転案内の発送等の役割分担
持っていくもの、廃棄するものなどのリスト
引っ越し当日のスケジュール
引っ越し当日の役割分担
オフィス移転後は、家具や備品の配置以外にもやることはたくさんあります。代表者は以下の2つをおこないましょう。
各種機関への届出の種類と期限は次のとおりです。
届出の種類 | 届出先 | 期限 |
本店移転登記申請書 | 法務局 | 移転日から2週間以内 |
・変更異動届出書 ・本店移転登記申請書 | 税務署 | 移転日から1カ月以内 |
事業開始等申告書 | 都道府県税事務所 | 移転日から1カ月以内 |
適用事業所所在地・名称変更(訂正)届 | 社会保険事務所 | 移転日から5日以内 |
・労働保険名称・所在地等変更届 ・労働保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
労働保険確定保険料申告書 | 労働基準監督署 | 保険関係が消滅した日の翌日から50日以内 |
労働保険概算保険申告書 | 労働基準監督署 | 保険関係が成立した日の翌日から50日以内 |
その他安全衛生法に関するもの、就業規則(変更)届など | 労働基準監督署 | 移転日から遅滞なく提出 |
事業主事業所各種変更届 | 公共職業安定所 | 変更のあった日から10日以内 |
期限に余裕のあるものもありますが、いずれもできるだけ早く提出しましょう。移転作業に追われて難しい場合には、行政書士や税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。
引っ越し作業完了後、空になった旧オフィスの原状回復工事がおこなわれます。オーナーと確認した回復内容どおりに施工がおこなわれることを確認し、引き渡し日までに完了させましょう。
オーナー立ち会いのもとで原状回復が完了したことを確認し、双方合意となれば引き渡しは完了です。
オフィス移転をする際は、さまざまな作業をおこなう必要があります。時間や手間がかかるため、負担を減らす方法も見ておきましょう。
オフィス移転のサービスをおこなう専門業者に依頼する方法があります。サービスを利用すると次のような工程を任せられます。
オフィスが抱える課題のヒアリング、コンセプトの提示
コンセプトに沿った物件探し
オフィスのレイアウトやアドバイス
予算の見積もり
家具や内装工事、原状回復工事の業者の手配
サービスによってどこまでサポートしてくれるかは異なり、見積もりにも差があります。複数社に相談し、内容と見積もりのバランスを見て選びましょう。
オフィス移転の必要性を判断するときにも重要なのが、デジタル化の推進です。これまで書類や口頭など、アナログな手法でおこなっていた業務をデジタルに移行することで、次のように課題が解決する可能性があります。
書類の保管に使用していたスペースを執務スペースへ転換
オンライン会議の活用による会議室の削減
資料をデータベース化したことにより動線がスムーズになる
テレワークの促進によりオフィスの縮小化に成功する
オフィスが狭いと思っていた場合でも、デジタル化によってスペースを確保できれば、現在のオフィスでも十分だと判断できる可能性があります。
また、デジタル化しておけば移転を決断した場合でも、引っ越しの荷物が減るのでおすすめです。
サービスオフィスは、什器・設備・セキュリティ・通信回線・会議室などが完備されたオフィスです。入居後すぐに始業できるほか、初期費用を抑えられます。
サービスによっては、コンシェルジュや受付、事務代行などのサポート機能が付帯している場合もあります。また、1つの空間を複数社で使用するタイプが多く、他社とのコミュニケーションの機会が生まれることも特徴です。
東京都内のサービスオフィスを探すなら、サービスオフィス.jpを活用しましょう。新宿や渋谷の中心をはじめ、人気エリアのサービスオフィスがそろっています。
デザイン性が高く設備やサポートが充実しているオフィスが多いため、従業員のモチベーションアップや起業のブランディング強化に役立つでしょう。
オフィス移転にともなう作業は、主な項目にまとめても13項目あります。それぞれの項目のなかでも細かな作業に分けられるため、しっかりと計画を立てたうえで従業員の協力を得なければ進められません。
まずは移転の目的やコンセプトを明らかにし、計画を立案して段取りを共有しましょう。各種届出や移転先のレイアウトなどをプロに任せ、負担を減らすことも1つの手段です。
移転を急ぎたい場合には、設備やインフラが完備されたサービスオフィスの活用もおすすめです。さまざまな選択肢を比較検討し、自社が抱える課題を解決するのに最適なオフィスを選びましょう。
サービスオフィスを複数棟、比較検討できます。
気になる物件を選び、条件や設備などの違いを確認してみましょう。一覧表で比較ができる便利な機能です。比較資料としてご利用ください。