オフィスを移転する際に、費用を節約するために国や自治体による補助金や厚生労働省の助成金の利用を検討している人も多いのではないでしょうか。この記事では、オフィス移転向けの補助金・助成金や申請の流れを解説し、移転費用の節約法なども紹介します。
オフィスを移転する際は、補助金や助成金を使って移転費用を削減できます。中小企業庁や厚生労働省だけではなく、各自治体独自の補助金・助成金もあります。
ただし、補助金や助成金には豊富な種類があるため、どれを選べばよいのか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、オフィス移転で活用できる補助金・助成金や申請の流れ、注意点を解説します。
オフィスを移転する際の節約方法も取り上げるので、オフィス移転を検討している人や、移転費用をできるだけ抑えたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
補助金はおもに国や地方自治体が実施している、会社や個人事業主をサポートする制度です。公募されるものが多く、交付金額が高いメリットはあるものの、交付条件が厳しい傾向にあります。
助成金は、おもに厚生労働省が実施し、通年で条件を満たしていれば交付されるケースが多い制度です。ただし、補助金に比べると交付金額が低いことも少なくありません。
補助金も助成金も適用できれば、移転費用の負担を軽減できるため、該当するものがないかオフィスの移転前に確認しておきましょう。
ここでは、オフィス移転で活用できる補助金・助成金をご紹介します。
中小企業庁「ものづくり補助金」
中小企業庁「事業承継・引継ぎ補助金」
中小企業庁「IT導入補助金」
商工会議所地区「小規模事業者持続化補助金」
厚生労働省「キャリアアップ助成金」
中小企業庁「事業再構築補助金」
それぞれの制度の概要や補助金・助成金の上限を見ていきましょう。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が経営革新のための設備投資などに利用できる補助金です。具体的には、以下のような経営革新に使えます。
新商品・サービス開発
新たな生産・提供方式の導入
補助が適用される経費は以下のとおりです。
機械装置・システム構築費
運搬費
技術導入費
知的財産権等関連経費
外注費
専門家経費
クラウドサービス利用費
原材料
海外旅費
通訳・翻訳費
広告宣伝・販売促進費
補助率は2分の1または3分の2、補助上限額750〜4,000万円と高めに設定されているのも特徴です。
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきっかけに経営革新などを行う事業者が使える補助金です。以下の3つの事業から選んで補助金を受けられます。
経営革新
専門家活用
廃業・再チャレンジ
補助の対象となるおもな経費は以下のとおりです。
設備費
外注費
委託費
廃業費
謝金
旅費 など
各事業によって補助率と補助上限額は異なり、経営革新は補助率2分の1または3分の2以内、補助上限額800万円です。
専門家活用は、補助率2分の1または3分の2以内、補助上限額750万円、廃業・再チャレンジは補助率3分の2以内、補助上限額は150万円です。
※参考:中小企業庁「事業承継・引継ぎ補助金」
IT導入補助金はITツールの導入で交付される補助金で、以下の4つの種類から選べます。
通常枠(A・B類型)
セキュリティ対策推進枠
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
補助の対象となるおもな経費は以下のとおりです。
ソフトウェア購入費
クラウド利用料
導入関連費
パソコン
タブレット など
ソフトウェアやクラウドなどを対象としている通常枠がもっとも高く、補助率2分の12、補助上限額は450万円です。
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化をサポートする補助金です。以下の5つの枠から選択できます。
通常枠
賃金引上げ枠
卒業枠
後継者支援枠
創業枠
対象となる経費は以下のとおりです。
機械装置等費
広報費
ウェブサイト関連費
展示会等出展費
旅費
開発費
資料購入費
雑役務費
借料
設備処分費
委託・外注費
補助率はすべて3分の2、補助上限金額は通常枠を除いて200万円です。ただし、インボイス特例によって上限額+50万円、賃金引上げ枠の赤字事業者は補助率4分の3に変更できます。
※参考:全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金」
キャリアアップ助成金は、非正規雇用のキャリアアップのために、正社員化や処遇改善を実施した事業主に交付する助成金です。全部で以下の7つのコースが用意されています。
正社員化
障害者正社員化
賃金規定等改定
賃金規定等共通化
賞与・退職金制度導入
短時間労働者労働時間延長コース
障害者正社員化は支給額が最大で120万円です。正社員化コースは1人当たり42万7,500~57万円、賃金等改定コースは1人当たり3万3,000~65,000円、賃金規定等共通化コースは1事業所当たり45~60万円、賞与・退職金制度導入コースは1事業所当たり30万~56万8,000円、短時間労働者労働時間延長コースは1人当たり17万8,000~23万7,000円です。
※参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金」
事業再構築補助金は、新分野への展開や事業転換などを行う中小企業などに支給される補助金です。以下の6つの枠から選べます。
通常枠
大規模賃金引上枠
回復・再生応援枠
最低賃金枠
グリーン成長枠
緊急対策枠
補助対象となる経費の一部は以下のとおりです。
建物費
機械装置・システム構築費
技術導入費
専門家経費
運搬費
クラウドサービス利用費
外注費
知的財産権等関連経費
広告宣伝・販売促進費 など
補助率は2分の1〜4分の3、補助上限額は100万〜1.5億円です。ただし、枠によって補助率も補助額も異なります。
自治体独自で展開している補助金や助成金もあります。
東京都中小企業振興公社「創業助成金」
大阪市「大阪市本社機能立地促進助成金」
札幌市「本社機能移転促進補助金」
名古屋市「本社機能等立地促進補助金」
福岡市「本社機能」
ここでは、それぞれの概要や補助金・助成金の上限をご紹介します。
創業助成金は、都内で創業予定、もしくは創業してから5年未満の中小企業に支給される助成金です。
ただし、以下に該当しない場合は対象外となります。
TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者
東京都制度融資(創業)利用者
都内の公的創業支援施設入居者 など
助成率は3分の2、助成金額の上限は300万円です。
※参考:東京都中小企業振興公社「創業助成金」
大阪市本社機能立地促進助成金は、大阪市内に本社機能を設置する事業者を対象とした助成金です。
賃借料が助成対象経費となり、助成率は2分の1、助成金額の上限は1ヶ月あたり100万円です。
※参考:大阪市「大阪市本社機能立地促進助成金」
本社機能移転促進補助金は、札幌市内に本社もしくは本社機能の一部を移転することで支給される補助金です。20人以上の正社員も要件に含まれています。
補助金の限度額は、人件費で1ヶ年度5,000万円です。開設費の補助金限度額は本社移転6,000万円、本社機能移転3,000万円です。
また、限度額1,000万円の北海道の補助金も併用できます。
※参考:札幌市「本社機能移転促進補助金」
本社機能等立地促進補助金は、名古屋市に本社機能を移転、もしくは新規開設する会社を対象とした補助金です。
補助率は以下のように項目によって異なります。
建物賃借料36ヶ月分:補助率1/2
機械設備・什器備品購入費:補助率1/2
移転に係る運搬費:補助率1/2
その他移転に係る事務経費:補助率1/2
建物建設工事費もしくは建物取得費:補助率12%
補助上限額は賃借型で1億円、所有型は10億円です。ほかにも、従業員の移住に1人あたり100万円加算される制度もあります。
※参考:名古屋市「本社機能等立地促進補助金」
本社機能は、福岡市内に本社機能の拠点進出によって交付される制度です。賃料もしくは土地・建物取得額と雇用に対して助成金が支給されます。
制度の対象となる部門は、以下のように幅広くあります。
調査・企画部門
情報処理部門
研究開発部門
国際事業部門
情報サービス事業部門
その他管理部門
助成金の上限額は最大で2億円です。日本に初めて進出する外資系企業の場合は、補助率が2分の1に設定されています。
補助金・助成金の一般的な申請の流れは、以下のとおりです。
行政のホームページで補助金・助成金を探す
必要書類を作成し提出する
補助金・助成金が支給される
実施報告や実績報告を行う
補助金・助成金の種類によって、適用条件や必要書類が異なります。また、実施報告や実績報告を行うことが定められている補助金・助成金もあります。
手続きの不備などがあった場合は取り消しになる可能性もあるため、事前に必ず確認しておきましょう。
補助金・助成金を確実に受け取るために、以下の点に注意しましょう。
支給は基本的に後払い
受け取る補助金・助成金は課税対象
利用する手続きが煩雑
補助金・助成金制度の詳細は変わる
支給後に返還を求められる可能性
補助金・助成金が交付されるのは、オフィス移転の前ではありません。実際にオフィス移転で費用を支払ったあとに、かかった費用の一部を支払ってくれる仕組みです。
そのため、オフィス移転ができる費用がない場合は補助金・助成金は利用できません。資金的に余裕がなければ、いつまでに支給されるのか事前に確認しておくことが大切です。
補助金・助成金には法人税や所得税が課税されることも注意点です。ただし、消費税に関しては課税されません。
会計の処理では、申請年度と支給年度が異なる場合に注意しましょう。
補助金・助成金の申請には、さまざまな証明書が必要です。申請通過後も報告書の作成が求められる補助金・助成金もあります。
提出書類も申請後の対応も手続きが複雑なので、申請にかかる時間や工数を考えてから、補助金や助成金を利用すべきなのか検討しましょう。
補助金や助成金の適用条件や支給額の上限は、その都度変わる可能性があります。新年度になり、制度そのものがなくなるケースも珍しくありません。
補助金や助成金を利用するときは、日ごろから最新情報をチェックすることが大切です。
また、補助金や助成金の種類によって申請期間も異なるため、素早く情報を収集して申請しましょう。
補助金や助成金は、支給後に一部または全額を返還しなければならないケースもあります。
申請事業で成果が出ない場合や申請内容通りの取り組みをしていない場合、早期撤退などは返還の対象です。
返還を防ぐためには、撤退する場合でも理由を明確にして、申請窓口に伝えておきましょう。
補助金・助成金以外でも、以下の方法で移転費用を節約することが可能です。
オフィス移転の専門業者を活用
備品の新規購入は最低限
移転先にフレキシブルオフィス
オフィス移転費用をより節約したい人は、ぜひ参考にしてください。
オフィス移転の専門業者に依頼すれば、移転費用を節約できるかもしれません。
自社だけでオフィス移転を手探りで進めるよりも、スムーズに進められるだけではなく、人的コストを削減できる可能性があるためです。
また、業者からオフィス移転についてアドバイスももらえるため、作業が滞らずに済むでしょう。
オフィス移転の専門業者を選ぶ際は、複数社に見積もりを依頼し、料金やサービス内容を比較検討することをおすすめします。
備品や家具の購入を最低限にとどめることも重要です。
まだ使える備品まで廃棄してしまうと、購入費用だけでなく廃棄費用もかかってしまいます。本当に不要なものだけを選別し、購入や廃棄を検討しましょう。
新しく備品を購入する際は、レンタルや中古品の購入もおすすめです。どちらも新品より安いコストで入手できます。
また、不要になった備品は廃棄するのではなく、中古買取業者に売却することで手元の資金を増やすことが可能です。
フレキシブルオフィスを移転先として選ぶのも節約につながります。
フレキシブルは「柔軟な」を意味する言葉であり、フレキシブルオフィスはレンタルオフィスを総称して呼ばれることが少なくありません。
レンタルオフィスは家具や通信設備、OA機器などが揃ったレンタル式オフィスのことです。
フレキシブルオフィスのなかでもおすすめなのは、サービスオフィスです。サービスオフィスには、総合受付や会議室などが用意されています。
サービスオフィスを運営しているサーフィスでは、ビジネスに必要な機器なども備えられているため、自社で購入する必要はありません。仲介手数料も無料なので、オフィス移転に関する費用を節約できます。
オフィス移転に使える補助金や助成金はたくさんあります。なかには数千万〜数億円の補助金・助成金もあるため、利用しない手はありません。
ただし、補助金・助成金支給は基本的に後払いのため、移転費用は必要です。また、利用する手続きが煩雑であり、制度の詳細がよく変わるため、日ごろから最新情報をチェックしておきましょう。
補助金・助成金以外で移転費用を節約するためには、サービスオフィスの利用がおすすめです。サーフィスのサービスオフィスは、受付や会議室などがすでに設置されているので内装コストを抑えられるだけでなく、仲介手数料もかかりません。ぜひ利用を検討してみてください。
サービスオフィスを複数棟、比較検討できます。
気になる物件を選び、条件や設備などの違いを確認してみましょう。一覧表で比較ができる便利な機能です。比較資料としてご利用ください。